69話「昼下がりのナイル村と怒涛の君と」
元気のないニケを連れ、昼食を摂ることになった一同。
昼食を摂りながら、冒険者ギルドに行く話しをミーチェが持ち出した。
その話を聞き、ニケの元気が少しだが戻った様子。
急いで昼食を口に詰め込むニケを眺めながら、ミーチェは微笑むのだった。
昼下がりの広場は、人が少なく感じた。
冒険者ギルドに行けば、ガオックの事を助けるヒントがあるとニケは考えていた。
広場を抜け、村の北側の通りを行くと冒険者ギルドが右手に見えた。
ユッケルとは違い、ナイル村の冒険者ギルドは大きかった。
入り口は両開きの大きな扉だった。ミーチェは、扉を開けて入って行った。
ニケとアシュリーも、ミーチェの後に続き中へと入っていく。
内装は木造の居酒屋のような感じの内装だった。
左奥にカウンターがあり、席がいくつかある。右奥には掲示板だろうか、張り紙がたくさん見える。
入ってすぐ左には、机がいくつかあり立ちながら飲食をする机のようだ。
そこで酒だろうか、ビールのようにも見えるものを飲んでいた二人組みの冒険者の片方の男が、ミーチェに声を掛けた。
「ここは、譲ちゃんがくるところじゃないぜぇ?」
酒臭い顔をミーチェに近づけながら、男はミーチェを子ども扱いした。
それに対して、ミーチェは怒りを我慢できなかったらいしく怒鳴り返していた。
「私は、子供じゃない!これでも160歳だ!」
ミーチェの言葉に、男は冗談だろっと真顔になりながら答えた。
ミーチェは、懐からユッケルの村長からもらった手紙を男に見せた。
「これはユッケルの村長からの手紙だ、ギルド長にこれを渡したい」
男は、まじまじと手紙を見ると掲示板の手前を指差した。
「あそこが受付だ、受付譲に言ってギルド長の面会許可をもらうんだな」
男はそういうと、机に戻りもう一人の男と酒を飲み始めた。
「私が、受付に行くからその間、掲示板でガオックの情報を探してくれ」
「わかった」
ニケが返事をすると、ミーチェは受付へと歩いていった。
アシュリーは、何をすればいいのかわからず周りを見渡していた。
「アシュリーいくよ」
ニケは、掲示板を見ながらアシュリーに声を掛けた。
アシュリーが返事をすると、ニケは歩き出した。
掲示板は思っていたより大きく、見上げれるほどだった。
ニケは、アシュリーと分かれて張り紙を探した。
いろんな張り紙があり、ニケの夢に見ていた冒険者への討伐依頼から、採集依頼、護衛依頼、配達依頼、さまざまな依頼があった。
その中で、討伐依頼に分類された張り紙の中にガオックについての張り紙を見つけた。
討伐依頼――ユッケル、ナイルの間に位置する森に生息するオーク、ガオックの討伐。
内容――村の子供の殺害、遺体の抹消。
報酬――35ゴールド。
期限――なし。
張り紙に書かれていることは、本当なのかとニケは目を疑った。
優しい印象のガオックが、村の子供の殺害、遺体の抹消をするのだろうかとニケは頭の中で考えた。
だが、ニケの頭の中にあるのは楽しく話をした記憶しかない。
ニケは、ガオックの討伐依頼の張り紙を剥がすと、入り口にいた先ほどの冒険者たちの下へと歩いていった。
アシュリーは、掲示板に目を向けたまま気がついていない様子だ。
楽しく雑談をしている机に近づくと、ニケは張り紙を机の上においた。
「この、ガオックってオークの話を聞きたいんだけど」
魔編みの鞄から、ニケは10シルバーを取り出すと二人組みの男の前に置いた。
「情報を買うのか、いいだろう」
先ほどの男とは別の、青年が10シルバーを受け取ると話しはじめた。
「ガオックはな――」
青年の話によると、ガオックは今から60年も前に近くの森に住み着いたオークだそうだ。
当時、冒険者ギルドがない村には自警団体による村周辺の魔物退治が行なわれていた。
ガオックが住み着いたことにより、魔物は村に近づくことが減ったそうだ。
そんなある日、ガオックが鹿を片手に村に現れた。村人は、自警団と共にガオックを森へ追い返そうとした。
だが、ガオックは何もせずその場に座り込んだと言う。村長が、ガオックの持ってきた鹿を受け取る代わりに野菜を差し出したのが、ガオックと村の関係の始まりだそうだ。
それからガオックは、人の言葉を覚え、人と共に生活をするようになった。ガオックから狩りの仕方、武器の手入れ、さまざまなことを村人は学んだ。
しばらくしてから、村に冒険者ギルドが設立された。帝国が協会の侵攻を阻止するため、村々に設立するようにしたからだ。
ガオックが、村と繋がりを持ってから50年ほど経った頃、冒険者達もガオックと共に森に入ることが多かった。それから数年、王都から一人の男が村にやってきた。
その男の名は、デオドラ。彼は、そう名乗ったそうだ。
デオドラは、言動が悪く村の子供に手を上げるなどして、村人から嫌われていた。
デオドラが、村に来てから少し経ってから村の子供が、行方不明になった。
村人とガオックは、村の周辺から森の奥まで探したそうだ。
だが、子供は見つからなかった。心配になったガオックは、遠くの森を探すとしばらく村に顔をださなかった。
ガオックが、村に戻ってくると村にはひとつの噂が流れていた。
子供を殺したのは、ガオックだ……っと言う噂が村中に駆け巡っていた。
村人は、まるで手のひらを返したかのようにガオックに冷たく当たった。
口も聞いてもらえず、村に顔を出さなくなったガオック。
そんななか、村の冒険者ギルドにひとつの討伐依頼が来た。
その依頼こそ、ガオックの討伐依頼だった。冒険者達は、ガオックの事を信じ依頼を無視したそうだ。
だた一人、デオドラを除いて。彼は、大金だと大声を張り上げ一目散に依頼を受付に持っていったそうだ。
「これが、ここ1年前の話さ」
青年は、10シルバーを懐にしまうと酒を仰いだ。
どうやら話は終わりらしい。ニケは、無言のまま張り紙を手に取ると掲示板へと戻っていった。
掲示板に張り紙を戻すと、冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。
大きな音に、ニケ、アシュリー、他の冒険者達が振り返った。
そこには、ガオックに襲い掛かった冒険者の男が足を上げて立っていた。
勢いよく扉が開いたのは、蹴り開けたからだろう。上げている足が、何よりの証拠だ。
冒険者の男は、冒険者ギルドの中に入ると辺りを見回した。
その男を見ていた冒険者たちは、一斉に目を背けた。
それほど関わりたくないのだろう。
男と、ニケの目が合った。男は睨み返すと、大きな足音と共にニケのもとへと歩いてきた。
「おいクソガキ、てめぇのせいでガオックを逃がしただろうがッ!」
ニケの胸ぐらを掴み、男は怒鳴りつけた。
「ガオックさん生きてるの!?」
ニケの声は、ギルド内に響き渡るほどの大声だった。
「そうだッ!なにもかも、てめぇのせいでなッ!」
胸ぐらを掴む腕が力を増し、同時にニケの身体が浮き始めた。
「どうしてくれるんだッ!あぁッ!?」
ニケを睨みつけながら、男は怒鳴る一方だった。
ニケも、男を睨みつけた。
「なんだぁクソガキのくせに、俺とやろうってかッ!?」
そういうと、男はニケを横に投げ飛ばした。
地面に叩きつけられ、ニケは反射的に転がりすぐに体勢を整える。
戦闘を幾度と繰り返した経験だろうか、ニケの身体は俊敏に対応できるようになっていた。
男が剣を抜き、ニケに外に出ろと言った。
アシュリーは、ミーチェのもとへと報告しに走っていった。
受付にいたはずのミーチェがいない、どうやら移動してしまったようだ。
受付譲に、ミーチェの居場所を聞くとアシュリーは、階段を上っていった。
ギルドの扉から、ニケと男が出てきた。
外に出ると、剣を持っている男を見て村人たちが逃げていった。
ニケが左に歩き、男が右に歩いていく。
一定の距離まで歩くと、両者は向かい睨み合った。
「あんた、名前なんて言うんだ?」
「俺は、デオドラ。黒髪のガキ、お前は?」
「俺は、ニケだ」
先ほど話を聞いた時に出てきたデオドラ。ガオックの討伐依頼を真っ先に受けた男だ。
「これは決闘だ、死んでも文句言うんじゃねぇぞッ!!!」
デオドラが、剣を構え直しニケに向かって駆け出した。
「死ねぇぇぇぇぇクソガキィィィィィィッッ!!!!」
デオドラが、大声と共に大振りに剣を振り下ろす。
ニケは、剣を見切り右足を引き半身の構えに入ながら交わす。
大振りの剣が地面に当たり、デオドラは振り返りながら剣を構え直した。
「避けてんじゃねぇぞッ!!!」
大声と共に、デオドラが剣を切りつける。
ニケは、後ろに身体を滑らせるようにして剣を回避する。
そんなニケに、血眼になって剣を振るうデオドラ。
魔物の攻撃などに比べたら殺気のみの剣は、遅く見えるようだ。
幾度と魔物の攻撃をかわし、懐に駆け込んだニケにとって視界を遅くする意味も感じていなかった。
「くっそ、舐めやがってッ!!」
更にデオドラの剣は、勢いを増す。
勢いが増しただけであって、ニケにとって避けるのは造作もなかった。
「なぜ攻撃をしないッ!」
剣を振り回しながら、デオドラが叫ぶ。
ニケは、後ろに跳ぶと距離を置いた。
「なら、遠慮なく行かせてもらうよ」
ニケの目は、殺気に満ち溢れていた。
左手に魔力を送り込む、左手が光出したと同時に刀を練成。
練成の速度が、前よりも早く感じた。
刀を練成するニケを見ながら、デオドラは異能者が……っと呟いていた。
「……行くぞ」
ニケは、深く深呼吸するとデオドラの懐目掛けて駆け出した……。
地の文を増やす、それが今週いっぱいの練習課題であり自分の小説を向上させるためでありと……。
練習になっちゃってますが、内容は濃くしたいと思ってます。
では、次回もお楽しみに!




