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夢にまで見たあの世界へ   作者: ゆめびと
第0章~転生、そして長い旅路~
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68話「落ち込むその背中に、一筋の光を」

冒険者がガオックを狩ろうと、早朝に押しかけてきた。

雨の降る中、ニケはガオックと冒険者の間に割り込む。

だが、ガオックはそれを払いのけ逃げろと言った。

どうすればわからないニケは、悔しそうに馬車に乗り込んだ。

馬車の中で落ち込むニケを、ミーチェ、アシュリーは慰めるがニケは、なんで助けれなかったのかと自分を責めるのみだった。

そんな一同を乗せた馬車は、ナイル村に到着するのだった。



 ナイル村、3箇所の出入り口と農業が盛んな村。

 ニケたちは、西側の入り口から入ると、すぐに誘導され入ってすぐの馬繋所に来た。

 ミーチェが、御者席から降りると受付をしに小屋へと入っていく。

 従業員だろうか、馬車と馬を離すと手綱を引いて馬小屋の中に消えていった。

 

「ニケさん、降りますよ」


 アシュリーは、立ち上がるとニケの肩を揺らした。

 ニケは、膝を抱えたまま顔を横にずらした。

 

「降りたくない……」


 アシュリーの顔を見ないまま、ニケは呟いた。

 

「駄々をこねてないで降りるぞ」


 ミーチェが、戻ってきたようでニケに声を掛けた。

 半分拗ねた顔をしながら、ニケは渋々馬車を降りた。

 来た道を戻っていく一同。

 村の塀と住居の間の道を、無言のまま進む。

 

「ニケ、お腹は空いてないのか?」


 ミーチェが、横目にニケを見ながら問いかけた。

 うつむいたままのニケの顔を、アシュリーは心配そうに覗き込んだ。

 ニケは、何かを失った喪失感からくるのだろうか、虚ろな目をしたまま歩いていた。

 

「ニケさん……」


 心配そうに声を漏らすアシュリーと、心配してにふりをするミーチェ。

 そんな一同は、西の入り口に着くと右側に見える村の中央を目指して歩き出した。中央に行くにつれ、活気が盛んになってきた。中央の噴水の周りに、露天を出す人々がいる。

 行きかう人たちは、少し見て立ち去る者から、手に取り品定めをする者。

 そんな人だかりを、縫う様にすり抜けていくニケ、アシュリー、ミーチェ。 

 だが、下を向いてばかりのニケが、肩をぶつけたりしてたまに怒鳴られていた。

 心配したアシュリーが、ニケの手を引きながら先導しはじめた。

 広場を南側に向けて歩き出す、南側は飲食店などが多くならぶ通りのようだ。


「昼食でも摂るか、ニケ。大丈夫か?」


 アシュリーに手を引かれながら、死んだ魚のような目にまで悪化したいるニケの目をミーチェは、覗き込むと頬を優しく叩いた。

 叩かれても、ニケの目に正気の色が見えない。

 しばらくは、このままにしたほうがいいと判断したミーチェは、アシュリーを先導しながら店へと入って行った。

 『グルッフの店』と書かれた店には、人の入りが少ないようで机の席が開いていた。

 ミーチェが、先に座るとアシュリーが、ニケを椅子に座らせた。

 机1つに対し、椅子4つずつの机が、広々とした店内に5つ。

 カウンター席が、10席くらいある店だった。

 店主のような人が、紙と羽筆を手にカウンターから出てきた。

 献立表を眺めていたミーチェが、何かを注文している。

 そんななか、ニケは机に突っ伏した。

 心配した店主が、ミーチェに問いかけるがミーチェは、何もないと言った。

 ニケの背中を撫でるアシュリー。しばらくすると、料理が運ばれていた。

 ジャガイモの煮付けに、野菜炒め、きのこのスープ、切り分けられたパン。

 食べ物のにおいに、ニケが顔を上げた。きのこのスープを受け取ると。

 スプーンで少しずつ飲みはじめた。そんな姿を見ながら、ミーチェも食事を始めた。

 ゆっくりと進む時計の音を聞きながら、食事をしているとニケが、喋り始めた。


「俺、ガオックさん助けに行く」


 そんなこと言い出すニケ。

 ミーチェは、何も言わずにパンを口に運んでいた。

 ミーチェが、何も言わないことに戸惑いながらもアシュリーが、ニケを止めようとした。


「ニケさん、それはガオックさんの意思ではないと思いますよ……」


 上手く言葉にできないのか、アシュリーはおどおどとしながらの物言いだった。

 

「ガオックさんは、あの森で一人なんだ。村の子供は近づかないって、悲しそうに言ってたんだ」


 机におかれた拳を、力いっぱい握るニケにミーチェが口を開いた。

 

「助けに行ってどうする、あの冒険者たちを殺すのか?」


「そ、それは……」


 ミーチェの回答に、ニケは再びうつむいてしまった。

 

「筋の通ってないことはやるな、これは師匠としてではなく私ひとりの意見だ。わかったな」


「で、でも……ガオックさん、悪いオークじゃないじゃないか」


 顔を上げ、ミーチェの顔を見ながらニケが小さな声で呟いた。

 

「なんで……ガオックさん、賞金首なんかに」

 

「賞金首?それなら、冒険者ギルドに行けば情報が手に入るんじゃないか?」


 スープをすすりながら、ミーチェはふと思い出したように呟いた。


「そういえば、ユッケルの村長からここの冒険者ギルドにって、手紙もらったんだった」


 魔編みの鞄紙を取り出すと、ニケはミーチェに手紙を渡した。


「ふむ。たぶん冒険者の派遣依頼だろう。ユッケル防衛の為に、人手が欲しいのだろう」


 手紙を分析すると、ミーチェは席を立った。

 カウンターに行き、店主に会計を済ますと席に戻ってきた。


「食べ終わったら、冒険者ギルドに顔をだすぞ」


 ミーチェは席に座ると、足を組みながらニケに声を掛けた。


「本当!?すぐ食べ終わらせるよ」


 ニケは、目を輝かせながらご飯を口に詰め込み始めた。

 急いで食べるニケを、ミーチェは肘を着きながら嬉しそうに眺めていた。

 そんなやりとりを、アシュリーはただただ和ましそうに眺めるのだった……。

地の文が長すぎて自分でも驚きました。

今後もこんな書き方でやっていこうと思います。

では、次回もお楽しみに!

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