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夢にまで見たあの世界へ   作者: ゆめびと
第0章~転生、そして長い旅路~
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66話「野営の準備と、一つの失敗と」

昼食をするため、川の辺で馬を休めながら昼食の支度をしたニケ、ミーチェ。

昼食を摂りおえ、再び馬車の馬を走らせるのであった。


 馬車の中で、シロを枕にして昼寝をするニケ。

 その傍で背をもたれながら、目を瞑って動かないアシュリー。

 そんなまったりとした空間のなか、ミーチェだけが起きていた。


「私が、馬を走らせていると言うのに……私も寝たい……」


 横目で後ろを確認すると、ミーチェははぁっとため息をついた。

 馬車は、道なりに進んで行くのであった。

 日が傾き始めて、どれくらいの時間が経っただろうか。

 もうすぐ山の向こうに日が、沈み始めようとしている。

 あくびをしながら、ミーチェは野営ができる場所を探し馬を走らせていた。

 森の中へと入る入り口の手前に、開けた場所を見つけた。

 馬車を止めると、杭と木槌を御者席においてあった布袋から取り出す。

 杭を打ちつけ、馬を馬車から離す。杭に手綱を巻きつかせ、焚き火の準備を始めた。

 焚き火に火を焚く為、火打石を叩くがなかなか火がつかない。

 ミーチェは、背後に人の気配を感じ振り返った。

 ニケが、目を擦りながら馬車から降りてきた。


「お主達は、寝てばっかだな」


 ミーチェは、少しご機嫌斜めに鼻で笑うと火打石を叩き始めた。

 湿気ているのか、なかなか火がつかない。


「火打石つかないの?」


「どうやら、お昼に濡れてしまったのかもしれん」


「そうなの?んー、魔法で火熾そうか?」

 

 ニケは、あくびをしながら右手を構えた。

 魔線を引きながらニケは、詠唱を始めた。


「綴ろう、 ″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール」


 右手に魔方陣が展開された。

 ミーチェは、焚き火の薪から離れた。

 魔方陣から魔法が展開され、火の玉が出現する。

 ニケは、火の玉を飛ばさないように魔法で制止しながら、焚き火の薪に当てる。

 パチパチと薪が燃える音を確認すると、ニケは空に向けて火の玉を放った。

 空高く昇ると、火の玉は少しずつ小さくなりやがて消えた。

 焚き火により、周囲が少し明るく見えた。

 太陽が沈んだら辺り一面が、闇に覆われるだろう。


「野営の準備ですか?」


 アシュリーが、馬車から降りてきた。 

 その後ろを、シロが眠そうに半目を開けてついてきている。


「アシュリー、夜目は利くのか?」


「あ、はい。昼間と、ほとんど同じに見えてます」


 アンデットの身体は夜行向きなため、夜目が利くとミーチェはわかっていたようだ。

 

「ニケを連れて、薪を集めてきてくれないか?」


「わかりました。ニケさんいきましょ」


 そういうと、アシュリーは先に歩いて行ってしまった。

 

「また森か……夜の森はいい思い出がないぜ」


 文句を言いながら、ニケはその後に続いた。

 シロも、ニケの傍へと走っていった。

 夕方の森は、昼間と違い薄暗く不気味な雰囲気を醸しだしていた。

 

「綴ろう、″光よ我に灯りを″ライト」


 双線を引き、二つの魔方陣を展開。

 魔法を発動すると、辺りを照らす光の球体が浮遊し始めた。

 

「結構、明るいんだなこれ」


「光魔法ですからね、あまり私に近づけないでくださいね……」


 やはり、光魔法はアンデットになにかしら影響があるようだ。

 ニケは、無言で頷くとアシュリーと少し距離を置いて歩いた。

 しばらくして、少し開けた場所に出た。

 森に囲まれた、静かな場所。その中央には、木の実がなっている大きな木があった。


「アシュリー、あの木の実って食べれるの?」


 ニケは、空腹を感じ食べれるのかとアシュリーに問いかけた。


「えーっと、木の実とかはわからないんです。すいません……」


 アシュリーは、振り向くと申し訳なさそうに頭を下げた。


「そうだったのか……2、3個採って、師匠に聞いてみるか」


 そう言うと、ニケは中央にそびえ立つ木へと足を進めた。

 木の根元に行き、上を見上げた。

 一番下に実っている実まで、そこそこの高さだ。

 どうしようかと、悩んでいるときだった。

 木の後ろから物音がし、こちらを覗き込む顔があった。


「……ッ!?」


 反射的に、後ろへと跳び距離を置く。

 左手に魔力を送り込み、戦闘態勢にはいった。


「ここに、人の子がくるとはな」


「どういうことだ?」


「この森には、化け物が出ると近辺の村の子供は入らないのだよ」


 木の陰から、声の主が姿を現した。

 緑色の皮膚、でかい図体。オークだ。


「しゃ、喋るオークなんているんですね」


「関心してる場合じゃないだろ」


 少し後ろから、アシュリーが呟いていた。

 その背中には、大剣を背負っていなかった。

 ニケが、武器を練成すれば戦闘に参加できるだろうが、相手との間合い的に危険が伴う。


「まてまて、オラにたたかう気はねぇだよ」


 オークは、両手を前にだすとクロスするように左右に振った。

 どうやら、たたかう意思がないのは本当のようだ。

 ニケが、錬金術の発動を止めるとオークは木を背に座り込んだ。


「あんた、なんで人の言葉が喋れるんだ?」


「んー?オークだって、人と交流しれりゃぁ言葉くり覚えるだよ」


「あ、あの。ここから近くに村があるんですか?」


 ニケから離れながら、アシュリーがオークの近くへとやってきた。

 そろそろ避けられているようで嫌になったニケは、ライトの魔法を払いのけた。

 光が消え、夕焼けが影を伸ばした。

 

「オラは、ガオックって言うんだよ」


「ガオック……どこかで見た気が……」


 ガオックが名乗ると、アシュリーはどこか悩んだ様子で考え込んでしまった。


「俺は、ニケ。こっちはアシュリー」


「聞き覚えがない名前だよ。ここら辺も人間でねぇだな」


「俺達、旅の途中なんだ。それで、焚き火の薪を集めにこの森に」


 アシュリーが、黙り込んでいるので。ニケが、変わりに説明をした。


「薪なら、入り口付近で探せば早いだよ」


 そういうとガオックは、高らかに笑った。

 

「んで、ガオックさん。その木に実ってる実は、食べれるのか?」


「んー、オラの身長じゃ届かねぇから食べたことないだよ」


 どうやら、ガオックの身長でも届かないらしい。

 考え事をしていたアシュリーは、思い出せないらしく諦めたようだ。


「届かないのか……あ、ガリィなら届くかな」


 そういうと、ニケは木の根元へと歩み寄った。

 なにをするのかわからないガオックは、首を傾げながらニケを見ていた。


「おいで、ガリィ」


 ネックレスから魔方陣が展開され、地面に広がる。

 広がった魔方陣から、ガリィが姿を現した。


「オ、オーガ・リックだぁ」


 慌てた様子で、ガオックはアシュリーがいる所まで逃げていった。


「そんな怖がらなくていいのに」


 ニケは、笑いながらガオックに言った。

 ガリィは、触手を震わせるとニケを突いていた。


「あははははは、ちょっと、ガリィ。ふふふふ、やめて、くすぐったい……あははは」

 

 突かれた横腹がくすぐったいのか、ニケは身をよじらせながら笑っていた。

 その光景を不思議をうに、ガオックは見ていた。


「あ、あいつは、敵でねぇだか?」


「はい。ニケさんの召喚獣の、ガリィさんですよ」


「召喚術が使えるだか、こいつはたまげただ」


 頭を掻きながら、ガオックは驚いていた。

 ニケへの愛情表現を終えたガリィは、触手をおろすと花弁を開いていた。


「ガリィ。触手で、俺を持ち上げてくれないか?」


 ガリィの触手は、ガリィの花弁よりも高い位置まで届く。

 ニケは、それを思いついたらしくガリィを召喚したようだ。

 ガリィは、ニケを持ち上げ始めると、木の実の実る幹までニケを持ち上げて見せた。

 ニケは、幹に飛び移ると木の実を探した。

 幹と幹を昇りながらニケは、木の実を見つけた。

 思っていたより大きく、ニケの拳を二つ並べて直径とし、それを球体にしたほどの大きさだ。

 バレーボールよりは小さく、重さはあまりなかった。

 ニケは、木の実を2、3個魔編みの鞄の中に入れると、昇ってきた幹を降り始めた。

 ゆっくりと、慎重に降りていく。

 ピキっと嫌な音がした。音がしただけならまだ良かった。次の瞬間、幹が折れニケは高さ5m以上の場所から落ちた。

 

「ニ、ニケさんッ!?」


 落ちてくるニケを、アシュリーは目を大きく見開きながら見た。

 ニケは、頭から落ちたようで気を失ってしまったようだ。

 そんなニケを、寂しそうに触手で撫でるガリィ。

 ニケが、気を失ったことにより魔力の配給が途切れ、ガリィは光と共に消え始めた。

 

「お、おいおい。ニケ、大丈夫だか?」


 ガオックが、ニケの肩を抱き上げるが気を失っているので何の反応もなかった。


「と、とりあえず、馬車に運ばないと」


 慌てながら、アシュリーは状況を整理するが、ニケを担いで森を歩くのは危険だ。

 いくらアンデットだからと言っても、ニケは生身。魔物たちに襲われたら、ニケの安全は保障できない。


「オラが運ぶだよ。道案内頼むだ」


 ガオックが、運ぶのを手伝ってくれるようだ。


「は、はい、お願いします。あの、こっちです」

 

 アシュリーは、来た道を戻り始めた。

 夜目が利くアシュリーを先頭に、ガオックと担がれているニケは森を抜けた。


「遅かったな。シロが、消えたから何かあったのかと……――ッ!?」


 アシュリーに、声を掛けたミーチェが固まった。

 それもそうだろう、薪ではなくオークを拾ってきたのだから。


「ア、アシュリー?そちら様はどちら様だ?」


「森の奥でいろいろとありまして……こちら、オークのガオックさんです」


 アシュリーは、森の中での出来事をミーチェに話した。

 ガオックは、焚き火の傍にニケを寝かせると、怪我がないか確かめていた。


「なるほど、また馬鹿弟子がやらかした訳か……」


 ため息をつきながら、焚き火の傍にミーチェが歩いてきた。


「私の弟子が、世話になったな」


 ミーチェは、ガオックの顔を見上げながら謝罪をしていた。


「いや、オラはただ運んできただけだよ」


 ガオックは、がっはっはと笑うと腰を降ろした。


「礼とは程遠いが。どうだ、一緒に食べていかないか?」


 昼間に作ったスープを鍋に移し、暖めたものを指差しながらミーチェは、ガオックを食事に誘った。


「おぉ、美味そうなスープだな。お言葉に甘えさせて貰うだよ」


 ガオックは、ご機嫌の様子だった。

 ニケは、少し唸ると目を覚ました。


「あれ、俺木から落ちて……いったぁ、頭打ったのか?」


「やっと目を覚ましたか、この馬鹿者」


「ひどい言われよう、この声は師匠……となると、馬車に戻ってきたのか?」


 ニケは、重たい身体を起き上がらせると辺りを見渡した。

 日は沈み、辺りは暗闇に覆われていた。

 馬車の付近の焚き火を囲うようにミーチェ、アシュリー、ガオックと並んで座っていた。


「ガオックさんが、運んでくれたんですよ」


 アシュリーが、振り向きながらニケに言った。

 そうなのかっとニケは、立ち上がると焚き火にの傍へと移動した。


「ありがとう、ガオックさん」


 ニケは、小さく頭を下げると腰を降ろした。


「いやぁ、何事もなくて良かっただよ」


 ガオックは、目を瞑り頷いた。

 ミーチェが、木のスープ皿にスープを注ぐとニケに渡した。

 パンは無いようで、スープだけの晩御飯となった。

 晩御飯を終えると、ガオックが興味深そうにニケたちの旅路の話を聞いていた。

 ニケは、ミーチェと出合った西の森の話から、ユッケルでの戦闘などを楽しそうに語った。

 楽しそうに語るニケの話に、ミーチェは耳を傾けながら寝てしまったようだ。

 ミーチェを抱き上げるとアシュリーは、馬車の中へと消えていった。

 ガオックと共に、星を眺めながら話をし夜は更けていくのだった……。

のんびりまったり、一期一会の出会いが多くなってる気が……

これが、旅なのかな?ってなってます。

これからいろんな人が出てくることでしょう、名前を考えるのが手間ですけど頑張ります。

では、次回もお楽しみに!

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