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夢にまで見たあの世界へ   作者: ゆめびと
第0章~転生、そして長い旅路~
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63話「防衛戦 誤解から始まった戦闘に終止符を」

キメラとの戦闘は、想像以上に手強いものだった。

なんども攻撃を仕掛けても、まるでダメージが入っていない。

案を考え出し、ニケは綴るのだった。


 両手から双線を引きながら、ニケは駆け出した。


「 ″我、火を志すもの、汝、その火の力を敵にぶつけよ″ファイヤーボール!」


 文字の精霊達が、綴られた呪文に重なり始めた。

 だが、先ほどより数が少ない。呪文は6層ではなく、4層だった。

 それでも、気にしている暇はなかった。すぐさまキメラが、こちらへと駆け出した。

 正面衝突は避けれないようだ。


「くらえぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」


 魔方陣を展開、左右に2つずつ魔方陣が展開された。

 1つの魔方陣に対して、3つ追加の魔方陣が重なった。

 右手を前に、右側の2つを同時に放つ。

 キメラは、放たれた火の玉を左右に避けながら迫ってきた。

 ニケとの距離が縮まる。

 

「っく!」


 ニケは、急いで右側へと跳んだ。

 左肩から着地し、転がりながら態勢を直しキメラを視界に捉える。だが遅かった。

 キメラは、獲物を追い詰めると同時に右前足にを振りかぶった。

 

「……ッ!?」


 ニケの頭の中に、緊張と別にひとつの文字が浮かんだ。

 『死』、その文字が頭に浮かぶと、身体は言う事を聞かなかった。

 ただただ、振り下ろされる手を見ていることしかできなかった。

 ニケは、身を守るように両手を頭につけた。

 だが、正面からくるはずだった衝撃は来なかった。

 変わりに、横から何か太いものに押された。

 押された瞬間、視線を横に向ける。そこに居たのはガリィだった。


「ガリィッ!」

 

 ニケを押した触手が、キメラの爪によって裂かれた。

 緑色の体液を垂らしながら、裂かれた触手の先端が宙を舞う。

 ニケは、身体を捻り背中で受身を取りながら、地面に叩きつけられた。

 すぐに起き上がらないとと思いニケは、上半身を起こした。

 見えるのはキメラ……ではなく、シロの尻尾だった。


「ニケ、無事か!」


 ミーチェが、ガリィの上から飛び降りるとニケのもとへと駆けてくる。


「師匠!今きたらだめだ!」


 ニケは、急いで立ち上がりミーチェを静止しようとした。

 だがミーチェは、それを無視してこちらへと駆けてくる。

 冷や汗が、ニケの額に流れた。このままでは、キメラの攻撃範囲内にミーチェが来てしまう。

 そんな焦りと、危機感を抱きながらニケは、キメラに目線をやった。

 キメラは、動かずにシロと睨み合っていた。

 

「……っえ?」


 何が起きているのか、ニケには把握できなかった。

 シロとキメラが、ガウガウワンワンと咆え始めた。


「大丈夫か?」


 そんな光景を呆然と眺めていると、ミーチェが覗き込むように声を掛けてきた。

 

「あ、あぁ。大丈夫だけど……どうなってるの、これ」


 ニケは、指を指しながら隣に来たミーチェに答えた。

 シロがワンと咆えるたびに、キメラがガウっと答える。


「どうやら、キメラは死霊術とは関係ない様子でな」


 困った顔をしながら、ミーチェは右手で頭を掻いていた。

 ニケは、周りを見渡した。

 ルト含む、冒険者たちはアンデットを倒し終えたようで、負傷した者に肩を貸しながら村へと引き返していた。


『なるほどぉ~』


 ニケが、村へ引き返すルトを眺めていると、ニケの目線上に文字が綴られた。


『なんか、キメラ君はオークたちに寝床を荒らされちゃったみたい』


「は?どういうこと?」


 シロと咆え合うキメラに、ニケは目線を移しながらリーディアに問いかけた。

 ミーチェにもリーディアの綴る文字は見えているようだ。

 

「ほう、この文字を綴っているのが文字の神とな」


 文字を眺めながら、ミーチェが呟いた。


『そうだよ~。っと、今は向こうの話をしよっか』


 シロが大きく咆えだした、するとキメラは腰を下ろした。

 どうやら、たたかう意思はないようだ。

 腰を下ろしたキメラに、シロが近づいていく。


「シロ大丈夫なのか?」


 そういうと、ニケは構えた。

 すぐに魔法を放てるように、左手をキメラに向ける。

 すると、シロがこちらを向いて咆えた。

 攻撃をするなとでも言いたいのだろうか。

 シロに咆えられたニケは、困惑した結果左手を下ろした。

 下ろすと同時に、手を払い魔方陣を消し去った。


『んー、氷帝様には頭が上がらないみたいだねぇ』


「氷帝?それってシロのことか?」


『うん、ニケちゃんすごいよねぇ。氷帝と契約して、私と契約するんだもん』


 リーディアの綴る文字に、ニケが訳もわからない様子だった。

 そのやりとりを見ながら、ミーチェが話し出した。


「ニケ。お前が、今まで契約した召喚獣と精霊は、最も危険な植物と神話上でしか存在しないとされる神獣、あと神の類なのだぞ?」


 馬鹿を見る目でミーチェは、ニケに言った。

 それを聞くなりニケは、なるほどっと左手を右手の拳で叩いた。

 頭を抱えながら、ミーチェはやっぱ馬鹿だっと呟いていた。

 

『話終わったみたいだよ?』

 

 その文字を読み終えると、シロがこちらへと駆けて来た。

 キメラは、背を向けると森へと戻っていった。

 尻尾をぶんぶんと大振りに振りながら、ニケの足元に擦り寄ってくる。


「んで、一体どういうことなんだ?誰か説明してくれ……」


 そう言いながらしゃがみこむと、シロを撫でるニケ。

 

『んー、今の話を整理すると。寝床を荒らされて、アンデットを呼び出した元凶がいると思って、キメラ君はついてきたみたい』


「確かに。アンデットが、森から出てきて森の入り口からキメラが来たな」


『それで、人間とアンデットがたたかってたから困惑しちゃって、立ち止まってたところにニケちゃんが襲い掛かってきたと』


「原因、俺みたいじゃんそれ!」


 ニケは、シロを撫でるのをやめ勢いよく立ち上がった。


「ま、まぁ。私が、ニケに行けと言ったんだがな……」


 引きつった苦笑いを浮かべながら、ミーチェは目を背けた。


「し、師匠……?」


 ニケは、ミーチェに手を向けると怒りに肩を震わせた。


「頑張った俺の努力は、なんだったんだぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」


 両手で拳を作ると、ニケは日が昇り始めた空へと叫ぶのだった。

 無事に、アンデットから村を守りきったニケ、ミーチェ、シロ、ガリィ、そして新しく契約したリーディア。ニケは、ガリィをネックレスに戻すと村へと歩き出した。

 その横をシロが尻尾を振りながら、ご機嫌に歩いていた。

 そんなニケの背中を見ながら、ミーチェは呟くのだ。

 

「ここ数日で、成長したな」

 

なんとか終わりましたね。

いやぁ長い戦闘でした、読んで下さった方々ありがとうございます。

では、次回から旅の再開になると思いますので、お楽しみに!

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