59話「防衛戦 更なる敵の出現」
あまりの数に、魔法を使い始めたニケ。
魔法の連続詠唱、多重詠唱のせいで魔力が底を尽きようとしていた。
そんななか、シロがニケの傍に駆け寄ってきた。
「シロ、アシュリーは大丈夫そうなのか……?」
立ち上がりながら、ニケはアシュリーを見た。
アシュリーは、大剣をぶん回しながらアンデットを切り裂きながら、ニケに微笑みかけた。
「こ、こえぇ……」
行なっている行動と表情が違いすぎた。
ニケのもとに、すぐさま冒険者たちがやってきた。
「大丈夫か?俺達が、引きとめるから少し休んでろ」
先ほどの青年のようだ、今度は仲間と行動しているようでニケは、そっと胸をなでおろした。
「ありがとう、ここは任せるよ」
そういうと、シロと一緒にニケは中衛のガリィのもとまで戻っていった。
ガリィのところまで、アンデットは来てないようだ。
「ガリィ、少し休ませてもらうよ」
ニケは、座るとガリィの花弁に背を預けて瞑想を行ない始めた。
目を閉じて背中に意識を集中させはじめると、脳裏の数字が『2』から『1』に戻った。
魔法による爆音と、冒険者達の掛け声から叫び声、雄叫びなどが飛び交っているのが聞こえる。
音に意識を集中させると、後方から複数の足音が聞こえニケは目を開けた。
後方で待機していた、魔法使いたちが前線へと出てきたのだ。
遠距離による攻撃ができないものや、回復魔法を得意とする者たちだろうか。
その先頭には、ミーチェがいた。
「中衛と連携して、前衛の援護を!」
指示を出しながら、前衛の方へと歩いてくる。
ニケが、ガリィのと隣で休んでるのを知らなかったようで、目が合うとミーチェがニケのもとに歩み寄ってきた。
「魔力切れか?」
「あぁ、全部なくなる前に瞑想しにここに」
ニケは、ガリィの花弁を2、3回叩いた。
ミーチェは、それを見ると無理はするなよっと言い残すと前衛のいる最前線へと歩いていった。
「それは、師匠もだろ」
ニケは、再度目を閉じた。
背中に魔力が集まり始める、膨らみ始めると同時に違和感を覚えた。
魔力の増幅量が、いつもより多い気がしたのだ。
「魔力が増えたのかな?ゲームでも、レベル上がると上がるからなぁ」
それから、しばらく瞑想を続けた。
遠くから聞こえる爆発音が、ミーチェの魔法だとわかるとニケは笑っていた。
「また、派手に吹っ飛ばしてるのかな」
目をあけると、戦況はかなり変わっていた。
中衛が前にでて、前衛の隙間から漏れたアンデットを処理していた。
前衛の数が少ない……嫌な予感がニケの中に渦巻いた。
魔法使い達によるライトの魔法により、現状が把握しやすくなった。
前衛が3人で固まりながら、大きな『なにか』とたたかっている。
大きさで言うと3mほどだろう、ガリィほどの高さだ。
筋肉質で緑の皮膚、アシュリーの大剣と同じくらいの大きさの剣を振るっている。
森の木々が押し倒され、地響きが聞こえる。
小さな地震ともいえよう地響きが、徐々に近くなってくる。
森の入り口に、大きな虎のようなものが姿を現した。
毛並みは黒、足は……ヤギ……?尻尾は先端に顔があり、尻尾だけ皮膚が違った。
そこらへんから声があがる。
「オークのアンデットは無視だ!キメラだ!キメラがでたぞぉぉぉ!!!」
「退け!退くんだ!」
混乱のなか、ルトが退却の合図を出した。
懐から紙に包まれた、野球ボールくらいの大きさの球をルトは地面にたたきつけた。
叩きつけられた球は、光を帯び始めやがて赤い光を出すと消えていった。
きっと退却の合図用に作られた、即席魔法による第一位階光魔法のフラッシュだろう。
冒険者達が、一斉に村目掛けて走り出す。
その後ろをアンデット、オーク、キメラが追いかけ始める。
「このままだと村に連れ帰るんじゃ……!?」
ニケは、即座に左手に魔力を流しこんだ。
大剣を練成、片手で持つと脳裏に意識を向ける。
カチン。脳裏の数字が『1』から『2』に上がる。
「まだだ、もう一回……もう一回上がってくれ……ッ!!!」
意識を向けながら、歯を食いしばる。
全身の魔力が、すごい勢いで身体中を駆け巡るのを感じる。
……カチン。
「きた……っ!」
脳裏の数字が『2』から『3』へと上がる。
同時に、呪文だろうか文字が脳裏に綴られ始める。
『汝、文字の神との契約を求めるか……?』
「文字の神……?」
冒険者達が、応戦をしながら避難をしているなかで。
ニケは、一人その場に立っていた。
「ニケ。一回体制を立て直すぞ!」
ミーチェが駆け寄ってきた。
だが、ニケにその声は届いていないようだ。
「おい!反応しろ、どうしたのだ!」
肩を揺するが、ニケは目を開けない。
シロが吠え出す、同時にガリィがニケを守るために移動を始める。
ニケの正面に、ガリィは移動するとその大きな花弁を開いた。
超音波にもよくにた咆哮をあげる。
……………ッッッ!!!!!!!
聞き取ることは不可能であろう咆哮。
そんなことがおきているとも知らず、ニケはいまだ脳裏の文字と会話をしていた。
『文字の神、リーディア様が、汝と契約をしたいと申しておる』
「それはどういうことだ」
『そのままの意味だ』
ニケは、考え込んだ。
「力を貸してくれるってことか?」
『そういうことだ』
「わかった、契約をしよう」
その言葉に、ニケの足元に大規模な魔方陣が展開された。
ミーチェは驚き、腰を抜かしていた。
逃げ行く冒険者達は、立ち止まり囲まれているニケたちの方向を見た。
「お、おい、あれって……?」
「わからん、何かが起きてるみたいだ」
「誰かー!西の魔女様を知らないかー!」
唖然と見つめる冒険者達に、ミーチェの居場所を聞くルト。
「どこにもいない?……っま、まさか、あの光の中心に……ッ!?」
「私、行ってきます!」
一緒になって避難したアシュリーが、大剣を片手に駆け出した。
「お、おい譲ちゃん!」
ルトが停めに入るが、間に合わなかった。
ものすごい勢いで、アシュリーは駆けていった……。
面白くなってきましたねぇ。
自分自身、読んでいて楽しい小説を書くのが夢だったので、今が一番楽しめてます。
では、次回もお楽しみに!




