49話「新たな能力」
右手が使えないアシュリー、属性不利でうかつに魔法が使えないミーチェ。
アシュリーが、時間を稼ぐからニケと逃げろと言い出した。
それをとめるミーチェ。
トレントを前にして言い争う二人に、ニケが声をかけた。
ニケは、ミーチェ、アシュリーを見ながらつぶやいた。
「俺がやる」
その言葉に、ミーチェが反論した。
「その身体で何ができる!まだ、回復もろくにしてないのだぞ!」
自分の身体を見ながら、ニケは答えた。
「傷ならもう治ってるよ?」
そういいながら服をめくる。
さきほどえぐられたはずの傷口が、なにもなかったかのようになくなっていた。
「私が、回復魔法をかけたからだ。まだ内側の怪我は治ってないはずだ」
そう言いながら、ミーチェは歯を食いしばっていた。
「ミ、ミーチェさん……。ニケさん、無茶はダメですよ!」
「無茶してないんだけどなぁ」
言い合っている間に、トレントが近くまで寄ってきていた。
「話は後で聞くよ」
そういうと、ニケは駆け出した。
駆けながら『右手』から双線を引いていた。
「あやつ、いつの間に……」
驚くミーチェ。
「ニケさんって、直筆魔法しか使えないんですか?」
驚くミーチェを横目に、アシュリーはミーチェに問いかけた。
「直筆魔法しか、まだ教えておらぬ」
「直筆魔法は、詠唱が遅いことが欠点ですが……ニケさん、大丈夫でしょうか」
「なにかしら策でもあるのだろう」
トレント目掛けて駆けるニケの背中を、寂しそうに見つめるミーチェ。
「もしもの場合は、私が囮になりますから」
そういいながら、動かない右手を見つめるアシュリー。
「そうならないことを祈ろう」
二人は、ニケの背中を見ていることしかできなかった。
トレントは、それなりの人数がいないと討伐できない魔物。
足手まといになってしまっては、逆に仲間に迷惑をかけてしまう。
そのため、負傷したアシュリーと対人魔法に特化したミーチェは、ただただ見ていることしかできなかった。
――ニケは、駆けながら詠唱、練成を成した。
左手に魔力を送り込み、大剣を練成。
右手の双線で、魔法の詠唱に入る。
「頭の中に、数字が見えるんだよなぁ……」
そうつぶやきながら、双線を引いた。
「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の咆哮!」
右手に、魔方陣が展開された。
トレントの懐に近づくと、枝による連撃が繰り出された。
「またそれかよッ!」
ニケは、目に意識を集める。
周囲の速度が遅くなり始める。
どうやら任意での発動が、可能になったようだ。
トレントの枝が、ゆっくりと更にゆっくりとなっていく。
ゆっくりと動く枝をかわしながら、トレントの正面へと突っ込む。
トレントの顔に右手を当てる。
「さっきはどうもッ!」
魔法が発動、二発の電撃を宿した衝撃波がゆっくりと放たれる。
「綴る!″雷電よ、我に力を、衝撃と共に敵を弾け″雷電の大咆哮!」
即座に双線を引き始める、右手に大きな魔方陣が展開された。
「これでどうだッ!!!」
右手を再度顔に当てると同時に、魔法が発動した。
時間が速度を戻し始めた。
どうやら時間制限があるようだ。
速度が戻り始めると同時に、衝撃波の反動により弾き飛ばされる。
「っく……!!!」
後方に飛ばされながら、視線にトレントを捉える。
先ほどまでニケがいたところに、無数の枝が降り注いだ。
トレントは、顔面に亀裂が入っていた。先ほどの魔法が、ダメージを与えたらしい。
「まだまだぁ!」
再度、駆け出したときだった。
カチンッ!
時計の動く音が、聞こえた。
「な、なんだ!?」
周りを見渡すが、トレント、ミーチェ、アシュリー、シロ以外なにもない。
時計などつけていないため、その音はおかしい。
ふと、脳裏に浮かぶ数字が横切った。
目を瞑るニケ、瞼の裏には『2』の数字が刻まれてた。
「数字の2?」
疑問に思いながらも、再度駆け出した。
先ほどよりも、速い速度で駆け出したことにニケは気がついた。
「足が速くなってる……!!」
そのまま足を止めることなく、再度トレントに接近する。
無数の枝が降り注ぐのをニケは、裸眼で捉えていた。
大剣を思い切り振り回し、その枝ひとつひとつを叩き切っていく。
懐に近づくと、トレントは幹を振り回した。
残り1本の太い幹。それすらも、ニケは叩き切った。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁッッ!!!」
幹を切り落としたときに振り下ろした大剣を、身体を時計回りに捻りながら振り回す。
まず一発、トレントの顔面に斬撃を食らわした。
そのままもう一回転。
下から上に振り上げるように、トレントの顔面に目掛け大剣を切りつけた。
トレントの顔には、クロス状に斬撃が入っていた。トレントの顔が砕け始めると同時に、その大きな身体が重心を失ったかのように揺れ始めた。
「ニケ!逃げろ!」
後ろから、ミーチェの声が聞こえた。
すぐさま踵を返すと、ニケは駆け出した。
ミーチェのもとへの短距離全力疾走。
距離にして40mほどを、ニケは2、3秒で駆け抜けた。
「な……」
その速さに、ミーチェは声を失った。
アシュリーは、何が起きたかわからずにただ呆然としていた。
「ん?どうかしたの?」
自分が、何をしたのかもわかっていないニケ。
ミーチェは、呆れた顔をしながら言った。
「やはり、お主と一緒におると退屈しなさそうだな」
そう言うと、ミーチェは小さく笑った。
遠くで見ていたシロが、こちらへと駆け寄ってきた。
それを撫でるニケをみながら、ミーチェはアシュリーに声をかけた。
「さて、安全を確保したことだ。馬車に戻ろうか」
「そ、そうですね!」
話しかけられて、意識が戻ったアシュリーだった。
ミーチェが歩き出すと、アシュリーとニケ、シロがその後に続いた。
太陽が、もうすぐ真上に来そうな時間に、馬車へと戻り始める一同……。
なんかもうよくわからなくなってきましたw
書いていてなんだこれぇ!?ってなってますね
読者より先に作者が話しを理解できない現象勃発。
まぁなるようになるでしょう!
では次回もお楽しみに!!!




