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夢にまで見たあの世界へ   作者: ゆめびと
第0章~転生、そして長い旅路~
33/93

32話「旅立ち」

身支度を終え、村に戻ってきた一同。

レッドキャップたちを倒し、昼食を取ることにした。


 やっと昼食だ、そう言ったのはニケだった。

 ミーチェが、厨房で飯を作る間、ニケはシロをわしゃわしゃして遊んでいた。


「なぁシロ。なんでお前は、小さいんだ?」


 シロは、首を傾げた。


「いや、師匠がさ。シロは、もともと大きいって言うからさ」


 そういいながら、あごなどをいじって遊ぶニケ。

 しばらくしてからミーチェが、料理を持ってきた。


「家のなかまでは、荒らされてなくてよかった。食材は無事だったから、たくさん食べるがいい」


 そういいながら、料理を机の上に並べるミーチェ。

 大きい皿には野菜が盛りつけられており、横の皿には野菜炒めが盛り付けられていた。

 1cmほどに切り分けられた、食パンのようなパンに野菜炒めを盛り付け食べるニケ。


「今日は味が薄くないだろう?」


 ひじを着きながら、感想を聞いてくるミーチェ。


「確かに、美味しい」


 野菜炒めをパンに挟むとはっと、ニケは言いながらも食べていた。

 異世界の飯は、これが普通なのだろうか。


「食べ終わったら、ギルドあたりから資金を調達しよう」


「それって泥棒じゃ?」


「だれも使わないのだ、いただいても構わないだろう。それに、村人がいなくなったとわかると盗賊の類が漁りに来る。それでなくとも、森からゴブリンなどが来て、住まう可能性もあるからな」


「なるほど」

 

 早めに食べ終わったミーチェは、先に席を立った。


「食器はそのままでもよいからな」


 そういい残すとミーチェは、外へ出て行った。

 ひとり、野菜を食べるニケ。


「シロも食べるか?野菜」


 シロは、興味がなさそうに頭を掻いている。

 相変わらず、なにも興味を示さないようだ。


「さてと、お腹もいっぱいだ。師匠のところにいくかシロ」


 そういいながらニケは、家を出た。

 シロは、背伸びをしてからニケの後を追った。


「そういえば、ギルドに行くって言ってたな」


 ギルドに向けて足を進める。

 ギルドの扉が開いており、中にいるのだろうとニケも中に入る。

 だが、ミーチェの姿はなかった。

 かわりに、ゴブリンが中を漁っていた。


「あ、お邪魔しました」


 ニケは、そういい残すとギルドを出た。

 バン!と扉を強くあける音と共にゴブリンが襲い掛かってきた。


「え、そこ追いかけてくるの!」


 魔物にツッコミをしながらも、刀を練成するニケ。

 ゴブリンは、素手でニケに襲い掛かってきたため、ニケの刀を防ぐ術がない。


「見逃してくれよなッ!!!」


 掴みかかってくるゴブリンの、腕をかわしそのまま腹部へ刀を刺し込む。

 急所に入ったのか、ゴブリンは動かなくなった。


「お、重い……」


 ゴブリンの身体を、放り投げるニケ。

 刀は、ゴブリンの身体が地面に転がると同時に光となり消えていった。


「もう入り込んできたのか」


 布袋を背負いながら、こちらに歩いてきた。

 ニケは、ゴブリンをしばらく見てから、ミーチェの方へと向いた。


「なんか、ギルドの中にいたのが出てきたんだよ」


 やれやれと手を上げるニケ。


「そうなのか。あとは、ギルドの資金をいただくだけだ」


「その布袋に、何入れてきたの?」


 ギルドの扉を開けながらニケは、ミーチェの背負う布袋の中身を聞いた。


「ん?隣の家から、パンなどを頂戴してきたのだ」


「食料か、旅には大事だもんな」


 ギルドの中央までくると、ミーチェがカウンターのほうへと向かった。

 ガチャガチャと金属音がする。


「師匠。なにしてるの」


「ここに鍵の掛かった木箱があってな、この中に、店の売り上げなどを入れているのだ」


「鍵、開かないの?」


「うむ、これは開けれそうにないな」


「師匠。ちょっとどいて」


 ニケは、歩きながらハンマーを練成した。

 おぉっとミーチェは、歓声をあげながら横に避けた。


「よいしょっとッッ!!!」


 思い切り、ハンマーを振り下ろす。

 バァンっと木箱は見事に粉砕された。

 ニケがよけると、ミーチェが中身を確認した。


「そこそこ入っておるな」


 小さな布袋を持ち上げると、中を覗き込むミーチェ。

 

「11ゴールドと、20シルバーだ。2週間は大丈夫だな」


 日本円で11万2000円だ。

 まだ買い物をしていない、ニケにとってはどれぐらいなのか検討もつかない。

 異世界の時点で金銭感覚が違うので、どう反応すればいいのかわからないのだ。


「さて、参るか」


 ミーチェは、扉へと歩き始めた。

 ニケも扉へと向かった。

 外に出ると、シロが暇そうにあくびをしていた。


「お主の召還獣は本当に神獣なのか?」


 ミーチェは笑いながら、ニケに話かけた。


「強者の余裕ってやつだろ」


「ただ、暇なだけじゃないのか?」


 ふふっと笑うと、ミーチェは広場の反対側へと歩き始めた。


「暇なのか?シロ」


 シロに質問を投げかけるが、シロは首を傾げるだけだった。

 

「まぁいっか。行くよ、シロ」


 シロは、小さく咆えるとニケの後に続いた。

 少し歩いてから、小さな小屋と馬車がいくつか並んでいるところに出た。

 小屋の中からミーチェが出てきた。


「馬は無事だったようだ。ここにある馬車で、旅にでるとしようか」


「俺、馬の扱いとかわからないぜ?」


「馬車は私が転がそう」


 そういいながら、ミーチェは小屋に入り馬を連れてきた。

 馬車に馬を繋ぐと、小屋の隣にあった布袋を馬車に載せる。


「ニケ。早く馬車に乗れ、参るぞ」


「わかった!シロ、馬車に乗って」


 シロは、馬車に飛び乗るとすぐに転がって眠そうにあくびをした。


「ほんと、神獣なのか?シロ……」


 呑気に寝転がるシロを見ながら、ニケも馬車に乗り込んだ。


「乗ったな。さぁ、旅の始まりだ」


 ミーチェは、そう言うと馬を歩かせた。

やっと旅立ちましたね。

ここにくるまで31話……

先が思いやられますが、楽しいのでなんやかんや続きそうです。

ご愛読、ブクマ等ありがとうございます。

では、次回もお楽しみに!

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