王都ミリカデアに向かう
出発の日、フレンは約束の時間より早く集合場所に立つ。それにしても自分はなんて運が良いのだろうとつくづく思う。偶然立ち寄った町で盗賊を捕らえその腕を見込まれ騎士学校に推薦状を書いてもらえるなんてそうある話ではない。不幸の後は幸運が来ると言うがまさにこの状況の事だろう。フレンは服越しにペンダントを握りしめ故郷…友を思い出す。
「セレス…俺はちゃんと前に進めているだろうか…」
俺はお前たちの死を利用して自分の都合の良いように生きようとしていないだろうか?俺がもっと強ければ犠牲を出さずに済んだかもしれない。
セレスが亡くなってまだ日が浅い、家族同然のように育った友の死、まだ心の整理が上手く出来ない16才の青年には辛すぎる現実。それでも立ち止まってはいられない騎士になると誓ったのだから。約束の時間となりラルフが現れる。
「おはようフレン君、待たせてしまったかな?」
「おはようございます!いえ時間前に行動するのは基本ですので」
「そうだね、時間を守るのはとても大切だ人として騎士としてもね。では出発しよう」
「はい。」
キヤエへを出ての近くにあるマーリン港へ、で船を使いミリカデアへ行けるのだかラルフは
「本来ならこのままミリカデアまで行くのだか今回はフレン君の腕をもう少し見たいから途中のエルナで降りて陸路を進もう。」
「分かりました。」
二人は船に乗り、エルナに着くまで話をした。フレンは自分の身の上を話せる限りラルフに話をした。自分の住んでいた村が襲われ多大な被害を受けたこと、親友の死、女騎士との出会いを
「なるほどそんなことが…大変だったろう。リリーナ・アストン、フレン君はまた彼女に会いたいと」
「はい、ミリカデアの騎士と言っていたのでタリスに行けば会えるのではないかと…確証はないですけど」
「いやその選択は間違いではないね、彼女は訓練のためタリスに訪れることがあるから近いうちに会えると思うよ。」
「本当ですか!」
「ああ、それと…この部屋には私しかいないから泣きたかったら泣いてもいいんだよ。」
ラルフの言葉にはっとする。悲しい出来事があったにも関わらず前を進もうと決めた心は悲しむ時間を作らず心の整理もしないまま今に至る。心が不安定な時期だからこそ彼やラルフは心配していた。しかし村の中には愛する家族を失った者がたくさんいた。
「俺の家族は無事でした…皆の方が辛い思いをしているのに俺が泣くとこは出来ません。俺がもっと強ければ…救える命があったのに!」
「自惚れるなよ若造が」
優しい雰囲気から張り詰めた空気へ
「君は村の中では一番強かったでも1人で救える命などたかが知れてる。失った者は還ってこないが思い出すことは出来る。君に必要なのは心を休めることだ。村の皆は家族同然だろう?家族を失って悲しまない人はいない、心に嘘をついてはいけないよ」
『全くだな…』
瞳から一筋の雫がこぼれる。手で拭うと自分が泣いていることに気づいた。涙は止まらすポロポロと落ちていく。