その7
■ありえないこと
商人と盗賊が酔っ払って大騒ぎをしたとのことで騎士団に捕まり裁判に引っ立てられた。
裁判長が質問する。
「ところで、騎士団長、どうして二人が酔っ払っていたと判断したのかね?」
「それはです、商人が金をばら撒いておりました」
「なるほど分かった。それでもう一人は?」
「盗賊はその金を商人に投げ返しておりました」
■鉄砲
貴族が召使を連れて狩りに出かけた。
水辺に鳥が沢山いるのを見つけ、鉄砲の狙いをすまして、ダダーン!
ところが、鳥は一羽残らず飛び去り、お供は目を回して倒れてしまった。
お供がようやく目を覚ますと貴族は怒って
「狩りの従者が鉄砲の音に驚いて倒れるとはなんだ、臆病者め」
と言えば
「鉄砲のせいではございません。あれだけ沢山いる鳥に当たらなかったご主人様が気の毒で目眩がしました」
■戸締り
ある寂れた町は日暮れになると門を閉める。
ある人、夜に門を叩き
「通りがかりの者ですが、開けて通してください」
すると門番が聞きつけ
「いや、長老様からの言いつけで、盗賊の用心のために開けることはならん。横町へ回り道しなさい」
「はて、おかしなことを言う。このような貧乏町へ、盗賊が入るもんですか」
「盗賊が入るんじゃない。ここの連中が他のところへ盗みに行くのを防ぐんだ」
■組み合わせ
美人だが尻軽な踊り子が皮肉屋の賢者にラブレターを書いた。
――私の肉体とあなたの頭脳を持った子供のことを考えてごらんなさい――
賢者はすぐに返事を出した。
――しかし、もし不幸にして、私の肉体ときみの頭脳を持ったらどうなるね――
■世界観
賢者と隠者の違いは何か?
賢者はまるで世界は自分のものだとばかりの顔つきをしている。
隠者は世界が誰のものでも少しも構わぬといった顔つきをしている。