その6
■対称的
ひょろりと痩せたエルフと、小山のように太ったドワーフ、二人はお互いに悪口を言い合った。
ドワーフ「まったく、お前を見ていると、この国に飢饉があったとしか思えんな」
エルフ「そこでだ、きみがその原因じゃないかと誰もが考えるだろうさ」
■不運と災難
あるとき、賢者が“不運”と“災難”の違いについて尋ねられた。
賢者は即座に答えていった。
「さて、王様が荒れ狂う川に落ちたとすれば、それは不運である。しかし王様がそこから助かったとすれば、それは災難となる」
■あるのなら
ライバル同士の劇作家がいた。
一人が相手に送った手紙。
――私はあなたのために、私の劇の初日の切符を二枚用意してあります。お友達と……もしいるのでしたら……ご一緒にどうぞ。
相手の返事。
――残念ながら、初日には出席できません。二日目が……もしあるのでしたら……伺いましょう。
■寝言
あるところへ夜中に盗賊たちが忍び込んで品物を漁るとき
「ぶてぶて」
という声がした。
盗賊たちはぎょっとして
「君の悪いことを言う、誰だ」
ときょろきょろすれば家の亭主がいびきをかいている。
「さては寝言らしい」
と布で口を塞いで仕事にかかる。
さてずらかろうというところで、ケチな盗賊、もったいないからと口から布を外して持っていこうとしたところ、口の中にたまった寝言が一度に出てきて
「ぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶてぶて」
■猫
ある召使、夜毎に酒場に行っては飲んだくれて帰ってくる。
主人が説教しても聞き入れず、とうとう出られないように鍵をかけられてしまった。
仕方なく窓から外へ抜け出そうと、窓から屋根へ這い上がったところ、主人が聞きつけて
「屋根からがたごと音がするのは何だ」
と言えば、奥方が
「あれは猫じゃないかしら」
と言う。
これに召使は喜んで
「はい猫です」
と返事をした。