その4
■占い師
占い師が道に迷って困っていた。
ちょうどそこに村人が通りかかったので
「向こうの村まではどう行けばいいのでしょうか」
と尋ねたところ
「あんたは何でも分かる占い師なんだから、村への行き方も自分で占ったらどうなんだ」
と村人は馬鹿にして言った。
占い師は穏やかにこう返した。
「占ってみたところ、あなたに道を尋ねよとお告げがありました」
■無茶な注文
あの雷の鳴るときの光を、地震の先に付けたいものだ。
その理由はといえば、地震はいつ揺れるか分からないから、いざ地震となれば皆騒ぎ、棚にあるものなども落ちて失うことも多い。
光が先にあれば『さあ地震が来るぞ。棚にあるものをおろせ』と言って、準備することが出来る。
しかし、一番いいのは地震を空で揺らして、雷を地面の下で鳴らすようにすることだ。
■召使の夢
召使たちが寄り合ってそれぞれの願いを言う。
一人が言うには
「おいらはいつもこき使われて腹ペコで眠たいから、金持ちになったら、食っては寝て、食っては寝ていたいね」
隣の召使がそれを聞いて
「馬鹿なこと言うなよ。金持ちになったら美味いご馳走が沢山出てくるんだぞ。食っては食って、食っては食って、寝る暇なんてあるもんか」
■腕の取り違え
ある信心深い騎士が教会へ行った帰りに、人ごみの中で財布を盗まれた。
すぐにその盗賊を見つけて掴みかかろうとしたところ、盗賊はナイフを抜いて切りかかる。
これに怒った騎士も剣を抜き、互いに切り結んだところ、二人とも片腕を切り落とされてしまった。
これは大変と医者が呼ばれてすぐに腕をつなぎ合わせたから助かったものの、慌てていたので騎士と盗賊の腕を逆につないでしまった。
以来、騎士のほうは手が十字架を持っても放り出し、金を見れば奪い取ろうとする始末。
盗賊のほうは悪いことをしようとするたびに自分の手に殴られるようになったという。
■律義者
夜更けに盗賊がこそこそと屋敷の鍵を開けようとする。
館の主は慈悲深さで有名な人、怒りもせずに忍び出て、盗賊の手を握って金貨を渡し
「こんな寒い夜にご苦労なことじゃ。少しばかりじゃがお受け取りなされ」
と言えば、この盗賊も変わり者。
「これは恐縮でございます。このように丁重にもてなされては重ねてお尋ねしにくい。どうかお気遣いなく」
と遠慮をするので
「ははあ、感心なことよ。その方は盗賊の中でも律義者じゃ」