その3
■残されたもの
出国の自由を認めよ、という世論が高まってきている。
王様が腹心の大臣に言った。
「もし出国を自由にしたら、みんなこの国から出て行ってしまって、われわれ二人しかいなくなってしまうな」
すると怪訝な顔をして大臣が言った。
「われわれ二人とおっしゃられましたが、王様のほかのあと一人というのは一体誰なんです?」
■兄弟
様々な種族の人たちが集まって言った。
「人間たちはわれわれを兄弟というが、なぜだろう」
ドワーフが答えた。
「もちろん仲がいいからさ」
エルフがすかさず反論した。
「それは違うね。友達は自由に好きな奴を選べるが兄弟は選ぶことができないからね」
■いつになったら
ホビット・ドワーフ・ゴブリンの族長三人が神の前に集まり、
それぞれの将来について質問することになった。
ホビット「いつになったら、ホビットは皆金持ちになれるでしょうか?」
神様「10年後だね」
ホビット「そうですか。私の任期は終わっているな。残念だ」
ドワーフ「いつになったらドワーフは皆幸せになれるでしょうか?」
神様「50年はかかる」
ドワーフ「そうですか。もう私の時代じゃないな」
ゴブリン「いつになったら、ゴブリンは頭がよくなるでしょうか?」
神様「おお、残念だが、その頃には私の任期は過ぎておる」
■幻想
吟遊詩人の物語は「むかし、むかし、あるところに・・・」で始まる。
革命家の演説は「やがて、いつかは・・・」で始まる。
■商人魂
まぬけな商人が都の祝祭に屋台を出した。
知り合いが注意して言う。
「このような人ごみでは、スリがいて売物や金を盗み、また、飲み食いしても金を払わずに逃げていくゴロツキたちもいるから用心しなされよ」
「分かりました」
そうして荷をおろして、酒や食べ物を並べていたところ、パレードの馬が暴れて大騒ぎ。
逃げ惑う人が押し寄せ屋台は滅茶苦茶。
商人、これぞ忠告を活かすときと売物を抱え込み、
「抜かりはしないぞ。人に食い逃げされるくらいなら俺が全部食ってやる」
と言って片っ端から食った。