その2
■亡命
悪名高い暴君の王様が死んで神の審判を 受けることになった。
王様は傲慢な調子で、天国に行かせろ、 と言い放った。
神は激怒して、貴様は生前の罪で地獄送りだ、と言った。
彼が地獄に送られてしばらくして、天国の扉を叩くものがあった。
天 使が扉を開けてみると、なんと扉を叩いたのは地獄の鬼だった。
彼らは哀れな調子で言った。
「われわれが亡命者の第一陣です」
■同じ気持ち
街角で二人の市民が話をしていた。
「なぁフランツ、君は今の王様をどう思う?」
「しっ!エーリヒ、いきなり何をいいだすんだ?」
「ああ、悪い。」
「騎士団の連中の耳にでも入ったらどうするんだ。
ここじゃなんだし、場所変えよう」
「ところでフランツ、王様をどう思う?」
「そりゃあもちろん、君と同じさ。わかるだろエーリヒ」
「そうか、フランツ。よくわかったよ。
それでは君の心情を騎士団に報告せねばなるまいな」
■人望
ハーレム勇者は疲れた。
これまで優柔不断にすごし領民や仲間たちを欺いてきたことを申し訳なく思った。
そこで、人々にリンチされて死のうと決意した。
勇者は信頼する副官と相談し、領民を召集して、ことさら挑発的な演説をぶって、彼らを怒らせることにした。
「諸君!私は諸君のあらゆる財物を略奪することにした!」
眼を閉じる勇者。激怒した聴衆が、演壇に押し掛けてくるに違いない。
しかし、巻き起こったのは、割れるような拍手と歓声だった。
「万歳!我が敬愛する指導者、勇者万歳!!」
気を取り直して、勇者は続けた。
「諸君!私は諸君を一人残らず奴隷にすることにした!!」
眼を閉じる勇者。今度こそ彼らは演壇に殺到し、自分を引き裂くであろう。
そして再び、熱狂的な大歓声。
「万歳!!勇者万歳!!」
遂に勇者は我慢できなくなり、大声で聴衆に怒鳴った。
「きさまら、俺のケツでも舐めやがれ!!!!」
さあ、今度こそ、彼らは自分をリンチするに違いない。 勇者は眼を閉じて待つ。
あたふたと駆け寄る副官の 足音。うろたえた声。さあ、きたぞ!
「勇者様、ご用意を!大勢の人々が押し掛けてきました!!早くズボンを脱いで下さい!!」
■ほら吹き
エルフとドワーフとゴブリンが、ほら吹き競争をした。
エルフ「1人のエルフの勇者が千羽の鳥を弓矢で一羽残さず打ち落としたんだ」
ドワーフ「1人のドワーフの勇者がドラゴンに丸呑みされたが、腹の中を探検して尻から出てきたぞ」
ゴブリン「1人のゴブリンの勇者が……」
エルフ&ドワーフ「お前の勝ちだ!」
■まだマシ
街は最近吸血鬼が現れるという噂に震え上がっていた。
とある民家で夜更けにドアが激しくたたかれた。
住人は息を潜め、 誰も出ようとしなかった。
しかしドアはたたかれ続けた。ついにあきらめた一人がドアを開けた。
次の瞬間、彼は喜びの表情をいっぱいにして振り返り大声で叫んだ。
「みんな喜べ。隣の建物が火事だそうだ」