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その勇者、神海翔冴に付き注意!

「彼について、どう対処すべきか・・・それを話し合うべきだ」


 日本の会社、株式会社HITAGI(ヒタギ)の会議室では、現在とある男が議題に上がり物議を(カモ)している。


「彼の能力はこの会社の技術でも抑えられない。しかるべき処置をとるべきと思うがね」

「しかし、彼のこの会社に対する貢献度は無視できないのでは?」


 株式会社HITAGI(ヒタギ)の主な産業は、電子関係と【異世界】である。

 【異世界】とは、所謂(イワユル)この世界とは別の世界であり、知る人ぞ知る‘アノ’【異世界】である。


「確かに。彼がいなければ、この世界は例の事件で終わっていたかもしれないしな・・・」

「ですが。彼の現状はこの世界を危うくさせるのも事実」


 異世界にどうやって行くのかというと、HITAGI(ヒタギ)の研究者である神海(コウミ)博士により発見された異世界へと繋がる門、[異世界門(クロスオーバーゲート)(cross over gate)]通称【COG:コーグ 】を通ることで行ける。


「被害者も少なからずいる訳だけど。彼もわざとではないと反省している。なのに、自宅で軟禁状態とは・・・あまりに」

「彼女ら被害者は本当の気持も解らない状況。しかも、彼から離れてる時間が長いと彼に会おうとし。

 それを阻まれると、彼女らは親しい人でも止められないほどの意志を表し彼のもとへ向かう。

 既婚者の方でも、相手を嫌悪(ケンオ)するように突き放すと聞いています」


 帰還に関しては、[異世界帰還クロスオーバーリターンシステム(cross over return system)]通称【CORS:コーズ】を使用することで可能とする。

 

「とりあえず。結論から言うと」


 彼、―――神海(コウミ)翔冴(ショウゴ)はその称号【魔王】により――――


 ――――――――――処罰する。





「これで終わりです!」


 高速で突き出された双子槍の、【フェリエル(天使)()ハーデス(堕天使)】は魔王の背中を貫いた。


「がぁ!ばかな!俺様が!」


 異世界(クロスオーバー) 番号(ナンバー)624、この世界にはとても凶悪な魔王が君臨していた。狂魔王グランネイル。

 先んじて戦いを挑んだ勇者たちを倒し捕らえ操った。この魔王討伐には女性の勇者でないと不幸が起こる、そういった異世界特有の伝承の所為で凄腕女勇者が次々と挑んでは返り討ちに遭った。

 そこで、勇者管理会社HITAGIは優れた男の勇者を仕方なく送ることになる。その勇者は異世界救済数十三回で称号には、勇者、聖騎士、英雄、賢者、強戦士、聖人、ソードマスターといった、ありとあらゆるものを備えていた。

 彼の名前は、神海(コウミ)翔冴(ショウゴ)16歳。現在高校一年生である―――



 大きく穿たれた傷口から止め処なく流れる血。狂魔王グランネイルはもうすぐ消滅するであろう。そう考えた彼は双子槍を粒子レベルで分解すると左右の腕にしまった。

「制服が少し汚れました。あなたはかなり強かったですグランネイル・・・でも、私の敵じゃない」

 倒れる魔王にそう言うと、彼は右手を上げ結界を解いた。

「言い伝えが気になるので、私は退散するとしましょう」


「待て―――。勇者よ。貴様に贈り物をやろう―――」

 荒く息をする魔王は左手を帰ろうとする彼に向ける。


 すぐさま防御の加護、結界、障壁を展開する。

 それを見た魔王は苦しいであろう状態で声を出して笑った。

「すばらしい。・・・だが、言ったはずだ。これは贈り物であると」

 さらに、大きな白い盾を出現させて万全に構える。


「これにより!貴様に大きな苦しみが訪れん事を!」

 血を吹きながら言い放つ魔王の手から黒い何かが放たれると、それは全ての壁をすり抜け彼の身に入った。

 そのまま、転送が始まるが消え行く魔王に問う。

「空間を割断するとは!今のは何ですか!?」

 胸元まで消えた魔王は小さな声で答える。

「私からの最後の贈り物だ・・・」


 ――――【呪い】――――という名の―――――――――――





 帰還してすぐ、彼は体を調べるが異常はない。スキルによる悪影響(アンチステータス)も確認するがこれにも変化はなかった。

 ホッと胸をなでおろすと、女性の声でアナウンスが流れる。

{お帰りなさい。勇者翔冴}

「と言っても、ほんの数時間だけですけどね」


{この度の騒動の解決にご協力いただいたこと、スタッフ一同および関係各所からお礼申し上げます}

 形式じみたお礼に対し、彼はいつもの様に返す。


「いやいや、これも勇者の(タシナ)み。しかし、報酬は弾んで貰えると嬉しいかな」

{報酬に関しては、受け付けの2番窓口でどうぞ}

 フーとため息を吐くと『冗談が通じない所は、やはりAIですね』と呟いて(リターン)ルームへと繋がる転送ポートに入る。


{オープンリンク――クリア―――転送が始まります。眼を閉じコールして下さい}

転送開始(ジャンプスタート)

 コールと同時に軽快なファンファーレが流れ、上下から消えるようにいなくなると、次に瞬間にはRルームの転送ポートに移っていた。


 Rルームの構造は、中央がOパーツによるエレベーターで八角形(オクタゴナル)の部屋には、辺の一つ一つにボックス状の転送ポートが設置されてる。

 受付は、中央と壁の中間位置に設置された空間グラフィック、空中に映像を展開させる機器で行える。


 ボックスに移ると拍手と歓声が彼を迎えた。この光景は普段のRルームの光景ではなく特別なもの。

 なぜかというと、今倒したばかりの狂魔王グランネイルは多くの女勇者とその仲間を操っていた。

 戦闘の最中その操られた人たちを呪縛から解放し、緊急脱出させて無事に開放したことに対して彼に拍手が送られ。そして、その迅速さに歓声が湧き上がっているのだ。


「これは、大袈裟過ぎでは・・・」

 少し照れ気味に言うと、知った顔の方に向かっていく。しかし、ボックスから出る時に通る何かの探知機を過ぎた途端に状況は一変する。


 警報が鳴り響き、赤いライトが点滅しアナウンスが流れる。

{警告、スキルを発動しています。速やかに解除してください。警告、スキルを発動しています。速やかに解除してください}

「なに!スキル?そんなもの使ってなど―――」

 慌てる彼は叫ぶ。

「警報を止めて下さい!」

{この警告が速やかに聞き入れない場合、違法行為に対し罰則もしくは強行手段を行えることを通告します}

「冗談ではない!」

 彼の周りに警備・鎮圧の為の小型浮遊ロボットが集まる。


{攻撃を開始します}

 アナウンス後、一斉にビーム兵器が彼へ放たれた。


「翔にぃ!」

 警報と声が響く中、彼は煙に包まれる――――。







「翔にぃ、ね~買い物行こ~?」

 警備・鎮圧の為の小型浮遊ロボットが一斉に彼にビーム兵器を放てから六日が過ぎた。


 私、神海翔冴は現在とても困っている。というのもここ数日、歩くと床を砕き手をつくと物を砕きそして、人に触れると殺してしまうかもしれない状況にある。


 それなのに――――


「それが嫌なら。エッチしよう?翔にぃ」

「沙千、私たちは兄妹(ケイマイ)なんですよ?そう言うのは無しでいきましょう。後、服を着ましょう。いや、着て下さい」

 神海沙千は私の妹なのだが、あの日以来こうなってしまった。というよりすぐ服を脱ぐ。


 HITAGIのスタッフが言うに、私の戦闘用サポートスキルが暴走している為に、その一つの魅惑(チャーム)があの時あの場所にいた複数の女性に発動した。

 その結果、魅惑(チャーム)の効果[異性と目を合わせると強制的に惚れさせる]が妹にも効いているのだということだ。

 詳しいことはよく分かっていないのが現状である。


 あの狂魔王グランネイルが死に際に言った言葉。

 ――――【呪い】――――という名の―――――

「贈り物ですか・・・」


「贈り物って?」

 うわの空で言った言葉に沙千が問いかけた。

「いいや、別になんでもないです」



「ね、覚えてる?翔にぃ―――」

「なんです、唐突に?」

 産まれたままの姿で彼の膝に座る沙千に、頬を赤らめ外方(ソッポ)向く。


「二年前こと。あの|ランダムダイブ《random dive》の異世界で、沙千たちの所為で沢山人が死んだ。あの時の事・・・まだ怒ってる?」


「何故私が怒る道理があると?説得できなかった私の所為でもあるというのに―――」

 無意識に拳を握るとサポートスキル【アレスの鉄拳】の効果で、無機物を砕く衝撃波が放たれ床を穿った。


 沙千はギュッと彼を抱きしめながら『違う。違うよ!』とその言葉を否定した。

「あの日、邪神に戦いを挑んだ私たちを翔にぃが助けてくれなかったら、全員助からなかった。それに、翔にぃの忠告を聞いていればあの子も死ななかった」


「それこそ私がもっと早く駆けつけていれば、どうにか出来たかもしれない。彼等も彼女も死なずに誰も傷つかない方法もあったはずなんです。私が決断していれば!」


 不毛な会話でしかない。それを分かっている彼はそっと沙千を抱きしめると、『やめましょう』と言ってそれ以上は話をしなかった。


「うん分かった。じゃ、お風呂入ろう?翔にぃ」




 


 おかしい―――。今さっきまでシリアスな展開を繰り広げていたのに、どうして妹と湯ぶねに入っているのだろう―――。


 ()(ガタ)い妹に頭を抱える彼は、それと同時に流されやすい自分に呆れた。


「昔はよく一緒に入ってたよね。沙千と翔にぃと―――後、美麗姉さんとで・・・」

「そんなこともありましたね」


 私にとって沙千は妹でしかないので、こうして同じ湯ぶねに入るのも特に意識しない。


「私・・・今Eカップあるんだよ。美麗姉さんのHカップにはまだ勝てないけど。揉むにはちょうどいいと思うの」

 背を向けている沙千が彼に(モタ)れ掛かって、彼の手を自らの胸にあてがい言う。



 特に!意識!していない!断じて――――オパーイに触れようとも!私は!・・・問題ない―――!


 彼の意志力が試される試練は、かつて無いものだったであろう。だが、(沙千)は更なる試練を与えるのだった。


「下は滑々(スベスベ)してるの。手入れとか大変なんだけど」



 下!―――滑々?―――いけない!意識するな!私は!貝になるのだ―――!


「翔にぃのが、今大きく(・・・)なると私の中に(・・)入っちゃうね」



 彼の体の一部を左手で持つと自分の大事な部分(・・・・・)に当てて沙千は言う。


 私は!貝だ!―――何も考えない!そこにただただいるだけ!そう!――――何にも流されない――――!



「ア!今、少し大きくなったよ。翔にぃ」



 変わらぬ味を―――お届けする!昔ながらのカップ焼きそば!


「アン―――また~」



 否!断じて――否!―――



 数分間続いた苦行の体験は、沙千の『のぼせたから、先出るね』の言葉により終止符を打った。


 彼は自らの意志の強さに喜び、高らかに拳を握るとサポートスキル【アレスの鉄拳】の衝撃波で天井を穿った。



「・・・あ――――」






 続く。

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