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Sweet voice  作者: 雛苺
9/25

9話

ノエルさんが夕飯を作ってくれる間、あたしは窓の外を眺めていた。


少し遠くに見える観覧車。その周りにある大型ショッピングモールや、埠頭の灯りがきらきら光ってキレイ。


ちょっと、外に出て見てみようかな…。


キッチンに目を向けると、ノエルさんは何か味見をしていた。何を作ってくれてるんだろう?


それにしても…手際がいいなぁ。


「ん?どうしたの、穂乃花ちゃん。オレが料理してる姿に見惚れちゃった?」


「あ、その…、手際がいいなって」


料理中のノエルさんと目が合ってびっくりした。エプロン姿が様になってかっこいい。


ドキドキして、顔が火照る。


「ふふっ。褒めてくれて有難う」


ノエルさんの笑顔、好き。


「外、出てみてもいいですか?」


「いいよ。そこからバルコニーに出られるから」




バルコニーに出ると、ちょっと肌寒かった。日中は暑かったのに。


秋が近いのかな…。


顔が火照っていたから、冷やすのには丁度いいかもしれない。


ノエルさんと、キス、しちゃった…。


それに、話をする為とはいえ、お家にまで来ちゃったし。


……でも、後悔してない。



あたしは、ノエルさんが呼びに来るまで、顔の火照りを冷ましていた。




◆◇◆◇◆◇




「外は肌寒いね。穂乃花ちゃん、身体冷えちゃうし、夕飯もできたから、部屋に入りな」


「はい、ノエルさん」


ノエルさんが呼びにきたので部屋に戻ると、夕飯のいい匂いがした。


あ、そういえば。


「ノエルさんごめんなさい。あたし、マグカップそのままにしちゃって…」


「大丈夫だよ。片付けておいたから」


申し訳ないなぁ…。


そう思っていたのが顔に出ていたのか、


「気にしなくていいよ」


と言って、また、優しく頭をぽんぽんした。


ノエルさんの手、大きいな。


夕飯の用意されたテーブルを見ると、美味しそうなハッシュドビーフとポタージュ、サラダが用意されていた。


「さ、座って」


促され、椅子に座る。


「冷めないうちに召し上がれ」




◆◇◆◇◆◇




食べ始めてから暫くして、ノエルさんが話し出した。


「Honey sweetのホームページ、見たって言ってたよね。社長兼デザイナーの名前が、オレと同じだったって」


「はい…」


「それで、穂乃花ちゃんは、それはオレかもしれないって思ったんだよね」


そう、思った。


最初は、同じ名前なだけで、女の人かもって思ったけど、里絵は珍しい名前だから本人じゃないの?って言ってた。


だからあたしも、ノエルさん本人なのかもって思うようになって。


あたしが彼女でいいのか、不安だった。


「確かに、Honey sweetの社長兼デザイナーは、オレ、神崎ノエルだよ」


あたしは、食べるのを止め、ノエルさんを見た。


……やっぱり、そうだったんだ。


「黙っててごめんね」


「どうして、教えてくれなかったんですか…」


「仲良くなってからっていうのもあったし、穂乃花ちゃん、オレが社長って知ったら身を引いちゃうかもって思ったから」


仲良くなってからっていうのは、来るとき聞いたけど…。


「身を引くんじゃなくて、逆に社長であるノエルさんと付き合うのをの自慢するとか思わなかったんですか?」


「……その考えはなかったよ。だって、穂乃花ちゃんはそんなコトするような子じゃないでしょ?」


「しませんけど…」


確かに、ノエルさんがHoney sweetの社長さんって最初に知ったら、間違いなくその場で身を引いてたかも。


実際、そうじゃないかって考えただけで気後れしちゃってたし。


「自分の店の様子をたまに見に行くんだけど、あの店舗に来る穂乃花ちゃんのこと、時々見かけてたんだよ」


「えっ?そうなんですか??」


知らなかった。ノエルさんに見られてたなんて恥ずかしい…。


「そうだよ?最初見かけたとき一目惚れして、気になって何回か店に行ったんだ。スタッフからは“ストーカー”ってからかわれたけど。穂乃香ちゃんを見てて思ったんだ、真面目ないい子なんだろうなぁって」


「最初って、パンケーキ食べに来た帰りって言ってましたよね?あの時、Honey sweetのお店ですれ違ったんですか?」


「そうそう。パンケーキ食べた後店に行ったんだけど、ちょうど穂乃花ちゃんが店から出て来たところだったんだ」


思い出そうとしたけど、やっぱり覚えてない。あのときの自分が恨めしい。


「でも、初対面のノエルさんについてっちゃいましたよ?」


声掛けられてラッキー♪とか思ってたし。


それに、ちょっと、見惚れてたし。そんなに真面目じゃないと思うけど…。


「それは、オレが勝手に連れて行っちゃったから…」


それはそうだけど…。その後は自分の意思だった。


「あたしは、連れて行ってもらって嬉しかったです。……その、ノエルさんのこと、好きなタイプだったし…。好きって言ってもらえたから」


言ってて恥ずかしくなってきちゃった。


「穂乃花ちゃん…」


「あたしは、ノエルさんが社長さんかもって思って気後れして不安になったし、あたしが彼女でいいのかなって思ったりしたけど…」


この先を言うのはちょっと、恥ずかしい。


でも、言わなきゃ。自分の正直な気持ち。


深呼吸。


「ノエルさんのことが、好きです」


「初めて、オレのこと好きって言ってくれたね」


そうかもしれない。


「嬉しいよ、穂乃花。だから、泣かないで?」


知らないうちに涙が流れてたみたいで、ノエルさんが指で拭ってくれた。


「ノエルさん、今、呼び捨て…」


「うん。穂乃花が、オレのこと好きって言ってくれたら、ちゃん付けで呼ぶのは止めようと思ってたんだ」


「……恥ずかしいです…」


前にも呼び捨てされたことあったけど、改めて呼ばれると、恥ずかしい。


「早く慣れてね♪」


「………はい」





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