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Sweet voice  作者: 雛苺
6/25

6話

悩んでも、答えは出なかった。


考えごとしながら仕事をしていたから、いつもはしないミスもする。


おまけに寝不足。


最近、きちんと睡眠とっていない。


ノエルさんから電話やメールが来て、嬉しい反面、もしHoney sweetの社長がノエルさんだったらと思うと、気後れして何もできなかった。




◆◇◆◇◆◇




「……ん、……さん、……桜庭さんっ」


「………はいぃっ!」


いけない。今は仕事中だった。


「どうしました?仕事中にぼーっとして」


「すみません、坂上さん」


声を掛けてきたのは、派遣先のSV、坂上圭介さんだった。


「最近、ミスが多いみたいですけど、何か悩みごとでも?」


「あ、えーと、その…」


まさか、悩んでる理由が最近付き合い始めた彼氏のことなんて言えない。


「仕事のことで悩んでいるのであれば、いつでも言って下さいね。僕はあなたの上司ですし、相談にのります。仕事のことじゃなくても、いいですよ」


坂上さん、優しいな。


女性派遣社員や、派遣先の女性社員に人気があるの、分かる気がする。


「でも、ちょっと個人的なことなので…大丈夫です」


「余計、気になりますね…。今は仕事中ですし、後で訊きます。桜庭さんも、気持ちを切り替えて仕事して下さい」


後でって…。訊かれるの決定みたい。


取り敢えず、ミスしないように仕事しなきゃ。


ノエルさんのこと、今は考えないようにしよう。考えだしたら止まらないし、余計なことまで考えてしまう。




なんとかミスせずに、午前中の仕事中を終えた。


お昼休みは、また里絵と一緒。さっき、坂上さんがあたしの所に来たのを見てたし、絶対何か訊かれるんだろうな。


「ね、坂上さん、なんだったの?」


やっぱり。


「んー、最近ミスが多いから、何か悩みごとでも?って」


今日はカフェではなく、社員食堂に行く。


食堂へ向かいながら、里絵にさっきあったことを話す。


「そういえば、坂上さんも穂乃花のこと気になってるみたいって聞いたよ?」


「……そんなこと、あるわけないでしょ」


本当だったら、坂上さん狙いの人たちになんて言われるか。考えただけでも怖い。


食堂に着き、メニューを見る。


今日の日替わりパスタはカルボナーラ。これにしよう。


「里絵、何にするか決めた?」


「オムライスにしたよ~」


オムライスか~。ここのオムライスは、ケチャップソースではなく、デミグラスソースで、しかも結構ボリュームがある。


里絵ってば、細いのによく食べる。


コップに水をもらい、空いている席に着く。


「「いただきまーす」」


二人同時に食べ始める。


「ところで、彼氏とはどうなってんの?」


「どうって……まだ訊けてない…」


そのことを考えていて、ミスが多かった訳だけど。


「まだって……。連絡、とってないの?」


「うん…。なんだか気後れしちゃって」


ノエルさんへ、メールの返信しないまま何日も過ぎてる。


「そろそろ連絡とらないと…。明後日でしょ、デート」


「そうだね…。うん、今日帰るときメールしてみる」


いつまでも、返信しないままはノエルさんに悪いし。ちゃんと連絡しよう。


「坂上さんはどうする?」


「坂上さんには申し訳ないけど、早く帰りたいから捕まらないように帰る」


「分かった。なんか言って引き止めとく」


頼りにしてます。




◆◇◆◇◆◇




仕事が終わり、私服に着替えて一階のロビーに向かうエレベーターの中で、ノエルさんにメールを送るべく、スマートフォンを取り出す。


あ……。


やっぱりノエルさんからの着信とメールがたくさんあった。


内容は、ほとんどがあたしを心配してのことだった。


メールを確認している間に一階に着いたので、ロビーに幾つかある長椅子に座って、メールを返信することにした。


メールを打っている途中、着信音が鳴り慌てて出ると、ノエルさんだった。


『もしもしっ、穂乃花ちゃん?』


切羽詰ったような声。


あたしは、相当心配かけていたみたい。


「ノエルさん………」


『よかった~…。穂乃花ちゃんやっと電話に出てくれた…』


「ごめんなさい…。なかなか出られなくて……」


『心配したんだよ…?』


うぅ…。本当に申し訳ない。


『仕事、忙しかった?それとも、体調崩してた?』


まさか、ノエルさんがHoney sweetの社長かもしれなくて、気後れして電話に出られなかったなんて言えない。


「ちょっと、仕事が忙しくて」


嘘…ついちゃった。


『そう……。体調崩してないならよかったぁ。もう、穂乃花ちゃんが病気だったらどうしようかと思って、気が気じゃなかったよ…』


「ノエルさん、優しいです…」


『好きな人を心配するのはあたりまえ。……こう言ったのは、穂乃花ちゃんだよ』


こんなに優しい人で、社長さんかもしれない人。


本当にあたしが彼女でいいのかな……。




「桜庭さん、こんなところにいたんですか?探しましたよ…。あ、電話中ですね」



ノエルさんと電話で話していたら、坂上さんがロビーに来た。


『穂乃花ちゃん、今どこにいるの?』


ん?


心なしか、ノエルさんの声が硬くなったような。


「今はまだ会社ですけど…」


『近くに、誰かいる?』


もしかして、坂上さんの声が聞こえたのかな…。声通るし。


「あの、上司が近くに……」


『上司って男だよね?』


「そうですけど……」


ちょっと怒ってる感じがするのは、気のせい…じゃないよね。


『今から迎えに行くから、場所、教えて』


え…迎えにって。


「あ、あの、場所は────」





ノエルさんは、私が会社の場所を伝えると、


『分かった。すぐ向かうから待っててね。着いたら電話するから』


と言って、電話を切った。




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