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Sweet voice  作者: 雛苺
3/25

3話

ノエルさんに、キス…された。


突然だったから、一瞬何があったのか分からなかった。


「あ、あの……今…キ、キス……」


「穂乃花ちゃんがあまりにも可愛かったから、しちゃった♪」


し、しちゃったって。


元彼とは、一緒にいてもせいぜい手をつなぐくらいで、頬にキスなんてされたことなかった


「もしかして、初めてだった?キスされたの」


「初めて…です……。今まで…されたことなかったので………」


恥ずかしくて、俯いた。


「………ノエルさんは、こういうの…慣れてるんですか……?」


ノエルさんはキレイだし、彼女…いたんだろうな。キスだって、なんか慣れてる感じがする。


ちょっとだけ、ヤキモチ。


「あれ?ヤキモチ焼いた?」


「────っ…!そんなこと…ないですよ?」


気持ちを見透かされたけど、気にしないふり。


「ホントに~?」


「ホントです。だって、会ったばかりだし……その、まだヤキモチ焼くほどノエルさんのことっ…」


「穂乃花」


突然の、呼び捨て。


「本気でそう思ってるの?」


ノエルさん、ちょっと……怒ってる?


ここは、素直になった方がいいかも。


「………思って……ないです…。本当は、ヤキモチ…焼きました………」


最初は、好きなタイプだから誘われてラッキー♪っていうだけだった。


けど、ノエルさんの甘い言葉にドキドキさせられて、話をしているうちに、好きなタイプだからお付き合いできたらいいなって思うようになって。


すごく、惹かれてた。


でも、本当は、最初から好きだったのかもしれない。


「素直でよろしい。………もう、最初からそう言えばいいのに…。穂乃花ちゃんは素直じゃないなぁ」



“ちゅっ”



「これは、素直になれなかったお仕置き」


呼び方が戻ってる………ってそうじゃなくて。


また、頬にキス。


「ノエルさん…、お仕置きがキスって…」


「キスじゃ、お仕置きにならない?」


「……恥ずかしいのでお仕置きになります……」


平日とはいえ、人がいないわけじゃないし、恥ずかしい。


そうじゃなくても、キスされるの慣れてないから尚更。


「じゃあ、穂乃花ちゃんが素直になれないときは…キスすることにしよっか」



素直になれるよう、努力しよう。




◆◇◆◇◆◇




外に出ると、雨は止んでだ。


「雨、止んだみたいだね」


「止んでよかったです。買った服、濡らしたくなかったから」


新しく買った服が濡れずに済んで、本当によかった。


「オレは、穂乃花ちゃんを雨の中帰らせなくてよかったと思ってるよ。服もそうだけど、穂乃花ちゃんに濡れて欲しくなかったからね」


「ノエルさんも、雨の中帰ることにならなくてよかったです。濡れたら、風邪引くかもしれないし、そうなったら心配します…」


そう言うと、突然視界が遮られ、抱きしめられてることに気付いた。


あ、いい匂い…。


香水を付けてるのは、何となく分かってたけど、今は抱きしめられているから、よく分かる。


爽やかだけど、どこか甘い香り。ドキドキする。


「穂乃花ちゃんは優しいコだね。オレのこと心配してくれるなんて。ますます好きになる」


「好きな人を心配するのはあたりまえですっ」


ぷぅっとふくれて、ノエルさんを見上げる。


「そのあたりまえが嬉しいの。ははっ、ふくれた顔も可愛い♪」


抱きしめてる腕に、ちょっと力が入った。


「ノエルさん、ちょっと苦しいです…」


「あっ、ごめんごめん。嬉しくてつい力が入っちゃった。大丈夫?」


「あたしも服も大丈夫です」


「それならよかった」


ノエルさんは腕を緩めてくれたけど、まだあたしを抱きしめたまま。


ドキドキしてるの、気付かれないといいけど…。


それにしても、ノエルさん、背高いなぁ。何センチあるんだろ?


「どうしたの?オレの顔そんなに見つめて。そんなに見つめられたら、キスしたくなるでしょ?」


「キッ、キスはもうだめです…。そうじゃなくて、身長どのくらいあるのかなぁって」


これ以上キスされたら、心臓が持たないよ。


「キスはお預けかぁ。ま、いいや。いつでもできるし。身長は一八六センチくらいだったと思うよ?穂乃花ちゃんは、小さくて可愛いよね。何センチくらい?」


「いつでもって、ノエルさん…。あたしは一五八センチなので、普通くらいだと思いますけど…」


「それでも、オレの腕の中にすっぽり収まっちゃうね。それに、抱きごこちいいから、もうちょっと──」


抱きごこちって…なんか恥ずかしい。それに、もうちょっと、なんだろう?


「───このままでいさせて?」


耳元で囁かれる。


ノエルさんの甘い声が、直接耳に響く。


「……んっ」


ちょっと、変な声が出そうになったけど、なんとか耐えた。


ふぅ。


「もう、急に耳元で囁かないで下さい…。びっくりするじゃないですか…」


恨めしげにノエルさんを睨む。


「穂乃花ちゃん…その潤んだ目、反則…」


はぁ、とノエルさんはため息をついた。


「可愛すぎて、帰したくなくなる」


顎を掬い上げられ、あたしの唇に、ノエルさんのそれが重なりそうになって、ぎゅっと目を瞑る。





「そこの男ぉ、穂乃花ねーちゃ…穂乃花ちゃんを離せえぇぇ!!!!!!」





────この声、春樹?!






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