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Sweet voice  作者: 雛苺
2/25

2話

ちゃんと甘くなっていればいいのですが…

一部改稿しました

神崎さんの“食べさせて”っていうお願い。


どうしよう、すごく恥ずかしい。


「あ、あの…それは……ちょっと恥ずかしいと言うか…その、会ったばかりで…」


「ダメ?」


あぅ…。そんな可愛く首をかしげられても、恥ずかしいものは恥ずかしい。


彼氏がいたことあったけど、食べさせてあげたこともないし“食べさせて”って言われたこともない。


だから、神崎さんが“食べさせて”って言ったのにはびっくり。


「だめ、と言うより…神崎さんとは…その……お付き合い…してないですし……」


「付き合えば、食べさせてくれるの?」


あ、すごく期待した目であたしを見てる。


「神崎さんがいいなら…お付き合い…したいですけど……あ、でも食べさせてあげるかどうかは…」


神崎さんは好きなタイプだから、お付き合いできたらいいなって思うし、そうなれたら嬉しい。


けど、食べさせてあげるかどうかは…ちょっと考えちゃう。


「もちろん、穂乃花ちゃんと付き合いたいに決まってるでしょ。だって、一目惚れだし♪あと、できれば食べさせて欲しいけど、これ以上困らせたら、穂乃花ちゃんがかわいそうだから、今日のところはいいよ」


はぁ。よかった。


……ん?でも今、気になる言葉が二つくらいあったような。


「あの、一目惚れって言いました?それって…さっき、一目惚れしたってことですか?でも…どうして…」


こんなキレイな人に一目惚れされるのは、もちろん嬉しいけど、あたしの見た目は、自分で言うのもなんだけど、普通よりちょっと上くらい。


美人っていうわけでもないし、おまけに童顔だから、いつも年齢より下に見られる。


そんなあたしが、神崎さんに一目惚れされたなんて。


「うん。言ったよ。一目惚れしたのは、さっきじゃなくて一ヶ月くらい前かな。ここのパンケーキを食べに来た帰り。そのときは、ただすれ違っただけだから、声掛けられなかったけどね」


一ヶ月前…全然気付かなかった。


「穂乃花ちゃんはオレの理想の女のコだし、何度も言うけど可愛いから。あ、もしかして自分に自信ないの?可愛いんだから自信持っていいのに…。それに、信じてない?一目惚れしたこと」


「自信ないわけじゃないんですけど…彼氏は…いたことあったし……。でも、一目惚れされたとかじゃなくて……。だから…ちょっと信じられなくて………」


「ふぅん、彼氏、いたことあるんだ…。ちょっと気になるけど…まあ、それは置いといて。自信ないわけじゃないなら、一目惚れしたこと、信じてオレの彼女になって」


「………あたしでよければ…お願いします…」


「穂乃花ちゃんがいいの。好きだよ、穂乃花ちゃん」


「───っ…」


恥ずかしいけど、すごく嬉しい。


ちょっと涙が出そうになるけど、今は堪えてもう一つ気になったこと訊かないと。


「あ、あと、さっき今日のところはいいよって言ったのは…」


「穂乃花ちゃんの困った顔が可愛くて、もうちょっと見たかったんだけど、嫌われたくなかったから、今日のところはいいよって言ったんだ。それに、今日がダメでも、たった今、穂乃花ちゃんはオレの彼女になったんだから、いつかは食べさせてくれるでしょ?」


あぁ、神崎さんの例の笑顔と声。これには弱いなぁ…。


「う……考えておきます…」


「前向きに考えておいてね♪楽しみにしてるから」


神崎さんの、“食べさせて”っていうお願い、考えておきますとは言ったけと、やっぱり恥ずかしい…。


でも、神崎さん楽しみにしてるって言ってるし、食べさせてあげられるようになれたらいいな。



◆◇◆◇◆◇



パンケーキを食べてると、神崎さんが、あたしの隣に置いてあるショップバッグを見ながら言った。


「それ、Honey sweetだよね。好きなの?」


「はい、大好ききです。あたしの理想が詰まった服ですから」


Honey sweetは、リボンやレース、ビジューを使った服が多い。今日買ったのにも、もちろん使ってある。


女の子らしい服で、大好き。


「今着てるのもそうでしょ?穂乃花ちゃんによく似合ってて、可愛いよ」


「有り難う…ございます」


照れながら答える。


因みに、今日着てるのは、白でパフスリーブのボウタイブラウスに、ウェストをリボンで絞る紺色のジャンパースカート。スカートの裾には、同色のフリルと薔薇モチーフレース。


お気に入りだったから、誉められると嬉しい。


「神崎さん、Honey sweet知ってるんですか?」


「服飾系の仕事してるからね」


服飾系のお仕事かぁ。いろいろあるとは思うけど。


「服飾系でも、何をしてるんですか?」


「ふふ。今はナイショ。そのうち教えてあげる」


今教えて欲しいのに、はぐらかされた。そのうち教えてくれるみたいだけど、本当かな。


そう思いながら、ジト目でみてると、


「ちゃんと教えてあげるから。オレってそんなに信用ない?穂乃花ちゃんにそう思われるのは、ちょっと寂しいな」


しゅんってなって、耳を伏せたわんこみたいになった。ちょっと可愛いかも。


「………わかりました。ちゃんと教えて下さいね?」


「ん。約束するよ」



◆◇◆◇◆◇



食べ終えたあと、脇に置いてあった鞄から、スマートフォンを出して、


「穂乃花ちゃんの携帯番号と、アドレス教えて♪」


って神崎さんが言った。


その…か、彼女…になったわけだし、別に拒否する理由もないから、あたしもスマートフォンを出し、自分の携帯番号とアドレスが表示されてる画面を出す。


「赤外線送信するので、受信してもらえますか?」


「わかった。受信するね…………ん、受信できたよ。今度はオレが送信するから、受信して」


神崎さんの携帯番号とアドレスを受信する。


ちょっとドキドキした。


「受信できました」


「これで、仕事で会えないときも電話で話したり、メールできるね♪」





お互いの連絡先を交換した後、神崎さんは会計を済ませ、あたし達は外に向かう。


「神崎さん、ご馳走さまでした。パンケーキ、すごく美味しかったです」


「どういたしまして。あのお店、気に入ってもらえた?」


「はいっ♪」


「ふふ。それなら誘ったかいがあったよ。また行こうね」


次行くときは、何食べよう?楽しみ♪


「そうだ。せっかく彼女になったんだから、いつまでも“神崎さん”じゃなくて、名前で呼んでみて」


神崎さんを名前で?恥ずかしい…けど、彼女…だし…いいのかな。


「………ノエル…さん」


「うーん。“さん”は付けて欲しくないんだけど…。ちょっとは前進したから、いっか」


うぅ…。


「穂乃花ちゃん、また赤くなってる。可愛い」






─────“ちゅっ”─────





頬に、柔らかい感触。




────キス…されました。

楽しんで頂けましたでしょうか?


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