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『知らない戦国の弱小領地、現代の「収益構造」を導入したら? ~土木と農政の専門知識で「飢えない国」を設計する~』  作者: れんれん


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第18話 十一歳の初陣「御剣(みつるぎ)の防壁」

天文の末、御剣領の豊かさを聞きつけた隣国・信濃の豪族、「木曾きそ 義在よしてる」が動いた。木曾家は武田信玄の圧迫を受けつつも、独自の勢力を保つ山岳の雄。その一門衆である「木曾きそ 盛定もりさだ」を総大将に据え、精鋭八百の兵が国境を越えて侵攻を開始したのだ。

「若君、敵勢、峠の『偽の分岐点』に差し掛かりました! 盛定自ら騎馬を飛ばし、我が方の新道を駆け下りて参ります!」

伝令の叫びが城内に響く。父・景虎は本陣に構え、俺に前線の指揮を託した。これが、俺の人生における「初陣」である。

「……慌てるな。物理法則は、敵が誰であろうと平等に牙を剥く」

俺は十一歳の小さな体に、特製の軽量鋼板を仕込んだ黒漆塗りの具足を纏い、峠の出口を望む高台に立った。

「レン、お前は城の奥へ。……これは『遊び』ではない。本当の戦いだ」

「いいえ、朔様。私は……あなたが戻る場所を守ります。どうか、ご無事で!」

レンの祈るような声を背に、俺は最前線へと馬を走らせた。

鉄と火薬の洗礼

木曾軍の騎馬隊は、俺がわざと緩やかに、そして走りやすく設計した「罠の道」を猛スピードで駆け下りてくる。重力による加速が、彼らの制動を奪う。

「今だ。……放て!」

俺の合図と共に、道の両脇に潜ませていた「御剣流・集成火縄」が一斉に火を噴いた。

――轟、轟、轟!!

通常の火縄銃を遥かに凌ぐ装薬量。そして、銃身の強度を極限まで高めたことで可能となった「散弾」が、密集した騎馬隊をなぎ倒す。先頭の盛定が驚愕に目を見開いた瞬間、彼の目の前の地面が爆発した。

「なっ……地から火が噴いたと!? 伏兵か、それとも妖術か!」

それは妖術ではない。道の下に埋設しておいた、黒色火薬による「地雷」の試作品だ。

圧倒的な「数理」の勝利

「次だ。長槍隊、前へ。重心を低く、ただ『壁』になれ!」

混乱する木曾勢に対し、俺が鍛え上げた三間半(約6.4メートル)の超長槍隊が、整然と進軍する。

敵の刀が届かぬ距離から、計算された角度で繰り出される「突き」の連動。それは個人の武勇を無効化する、冷徹な「殺戮の演算」だった。

「十一歳のわっぱに、これほど……御剣の若君は、まこと『知恵の怪物』か!」

総大将・木曾盛定は、己の精鋭が手も足も出ずに削り取られていく光景に戦慄し、ついに撤退の法螺ほらを吹かせた。

「深追いはするな。我らの目的は殲滅ではない。『御剣を侵せば、命はない』という恐怖を、その骨の髄まで刻み込むことだ」

俺は返り血を浴びぬまま、静かに銃身を冷ました。

初陣の終わり

夕暮れ時、俺は静まり返った戦場を後にし、城へと戻った。

大手門の前で待っていたのは、涙を浮かべたレンだった。

「朔様……! お怪我は……お怪我はありませんか!?」

駆け寄る彼女を、俺は少し重くなった鎧のまま、片腕でしっかりと受け止めた。

「……ただいま、レン。約束通り、傷一つ負わずに帰ったぞ」

俺の幼い、しかし確かな勝利の報告に、城内からは割れんばかりの勝ちかちどきが上がった。

父・景虎も、佐々木殿も、もはや俺を「子供」として見ることはなかった。

十一歳の初陣。

それは、御剣領が乱世の表舞台へと、鋼の足跡と共に踏み出した瞬間だった。

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