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トーチ・リリィの行方  作者: 鈴木 澪人


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9/10

真実の裏側

補足回です。

「室長、もうすぐ会議が始まりそうです。」


地に足がついていない新人を三カ月みっちり現場で勉強させてきたおかげで意識改革ができたのだろうかオンオフの切り替えがちゃんとできるようになった。


「ああ、ええっと今日のレジュメはどこだ?」


俺は机の上の書類をガサゴソと探していると、その部下が黒色の大判の封筒をそっと差し出した。


「ああ、今日はこの日か」


普段の会議は端末にあらかじめ資料が送り届けられている。

しかし、今回は使用者本人しか開封できないようになっていた。


「全体会議だったな、これは特級の情報制限がかかっている。君はすみやかにこの部屋から退出しなさい。」


「はっ、了解しました。終了時刻は?」


俺は引き出しの中に入っていた魔道具を机の上に置くと


「俺が、この部屋から出てきたら終了だな」


俺の言葉を聞いた部下はそのまま一礼すると部屋を退出した。


「あ~イヤダ。この会議イヤダぁ~」


魔道具の防音機能ボタンを押し誰もいないので少しだけごねてみた。

その後、黒い封筒に自分の左手を乗せるとその手を認証する為に軍のロゴが浮かび上がった。

すると、後ろ手小さく「ピピッ」と音が鳴った。無事に解錠されたようだ。


封筒を開くと中に黒いタブレットと薄型のゴーグルのような形をしたスマートグラスが出てきた。

タブレットをいつも使っているシンプルなスタンドに立てかけた。


俺は一度席を立ちあがり、部屋を出入りできる唯一のドアの鍵を内側からかけた。

そして、日当たりのよい窓に向かって手をかざし下におろすと窓にスモークが張られたように黒いフィルム状のものが出現した。


「これすると一気に部屋が暗くなって見づらいんだよな」


俺はうっすらと光る誘導灯を頼りに自分の席に戻った。

手探りで先ほどのスマートグラスをかけるとこめかみ辺りのボタンでタブレットとスマートグラスを起動させる。


「こちら、D25地区の室長 ヨニ・レッチェ ログインします。」


『D25地区 ヨニ・レッチェ 声紋及び虹彩認証中・・・。認証完了。 ようこそレッチェ室長』


画面の向こうには広い会議室のような画像が流れていた。しばらく待機していると、個別チャットの回線許可がきたので許可をする。


「よぉ~。ヨニ、元気か?」


同期が違う地域の室長になっていた。色々相談や段取りを教えてもらい大変助かったのを思い出す。


「はいはい、もうすぐ本営に行くんだろ?」


俺が冗談で言うと


「アハハ、秘匿回線でもないのにいい根性してるな?お前も一緒に引き上げるぞ!」


「やめてくれ、俺はこの地区に骨をうずめるんだよ」


同僚は何かを思い出したのか、声のトーンが下がった。


「・・・。すまない。」


「いや、お前のせいじゃないだろ」


『ただいまより、室長級全体会議を開始します。個別回線を開いている方は速やかに終了してください。』


「また、飲み行こうや」


「ああ、お前がこっちに来いよ。」 「そうだな」


同僚との回線を切ると会議が速やかに始まった。


『本部長のバローズだ。今日は各地区の報告を聞きたい。呼ばれた地区から報告を』


我が国は陸地続きの比較的大きな国だ。何カ国かは境界線がある。しかし、そこで諍いが起こることはほぼない。

問題なのは俺たちがいる「D地区」と呼ばれる地域だった。隣り合っているのは国ではなく、森だ。

広大な広さの森しかない。しかし、その奥に住んでいるのは人間ではない。


あちら(魔族)側からの連絡で今回も殉職はないようだ』


バローズ大佐の言葉に俺は少し息をのんだ。

殉職・・・。それは、任務中に亡くなる事をさすのだがD地区においては違う意味も含まれる。


※※※


 「えっ人攫いですか?」


室長になった俺は2カ月の研修期間中に墓場まで持っていかないといけない内容をこれでもかというほど詰め込まれた。

その一つが魔族による人攫いだ。


「まあ、こちら側からの表現だとそうなるわな。でも、あちら側からすると違う」


「どう違うんですか?」


研修中ずっと俺に指導してくれている本部の人が溜息をつきながら


「一目惚れをするそうだ・・・。」


「一目惚れですか?」


「ああ、あちら側のシステムは分からないがこちら側に連絡が来るそうだよ。『人を攫いに行く』と、すると任務と称して一斉に魔道具の点検をするように命令が下る。そしてその時に・・・。」


俺は本部の人間が何を言っているのか理解できなかった。

確かに、俺も何度も森の近くにある魔道具の点検に駆り出されたことがある。


「まあ、君はもうその対象にはならないから安心するように」


「安心って・・・。でも結局誰かが犠牲になるんじゃないですか!」


「そうだな。だが、我々では魔族には勝てないんだよ。こうして人を差し出すしか今の所解決策がないんだよ。」


「そんな・・・。」


「まだ隣国(対人戦)とやりあう方が見込みがあるってわけさ」


本部の人が一瞬天井を見た後


「私は、部下を二人連れていかれたよ。」


「えっ?」


「そしてこれ以上は精神的負荷がかかりすぎるということでめでたく栄転さ」


「こんな世界、クソくらえだ!」


絞りだすように言った後


「説明は以上です。何か質問はありますか?」


俺は、その人にかける言葉が見つからなかった。


「大丈夫です。」


「室長研修はこれで終了かな?後は色々登録してもらったら持ち場に戻るように」



※※※


 今回は人攫いがないと言われ安心するが、次の全体会議ではどうなるか分からない。

皆自分の部下は可愛い。ターヴィの後はアハトが継いでくれているが他の隊の可能性もある。


「早くこんなシステムが無くなればいいのにな」


俺のつぶやきは何処にも届かず、虚無空間での報告会が続いていった。

 後一話続けて投稿予定です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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