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トーチ・リリィの行方  作者: 鈴木 澪人


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7/10

ケーキと少年と真実と

 俺たちは、その少年が指定したケーキ屋に入った。

ショーケースにはキラキラとしたケーキが所狭しと並んでいる。


「好きなものを食べていいの?」


胸辺りしかない身長なので俺を見るには上目遣いになる。その少年の瞳は薄い紅色に輝き綺麗な銀髪が肩のあたりで揺れていた。


 本当に色が違うだけで、昔のターヴィにしか見えないよな。


俺は同じ学園に通っていたのでターヴィ少年を見たことがあるがマナとイサークは見たことがないのでただただ美少年にしか見えないだろう。


「イサーク、あなたあんな綺麗な子をどうやってひっかけてきたのよ」


マナはイサークをからかいながら一緒にケーキを選んでいた。


「ちっ違うし。ちょうど同じタイミングで店に入ってきたんだよ。でも、あまり慣れていない様子だったし、ちょっと声をかけただけだし・・・」


と言いながらもイサークは耳を赤くしていた。マナが言っていたことがまちがっているわけではなさそうだった。


 マナとイサークは俺たちとは別の席でというか俺はそのケーキ屋にある半個室みたいな場所を借りることにした。

軍部に所属している俺は細かい所で融通がきく。


防音処理はどういたしましょうとオーナーに尋ねられたので頼むことにした。これで半個室から完全な防音室にグレードアップだ。


 少年が欲しそうにしていたケーキを2・3個選ぶと店員が部屋まで持ってきてくれるというので甘えることにした。


「貴方は、もしかして高貴な方なのか?」


俺への対応があまりにも優遇されているので、部屋に入った少年が恐る恐る尋ねてきた。


「ハハハ。違いますよ。このエリアは軍の主要施設があるんです。俺はそこで少しだけ責任のある仕事をしているので少しだけ皆が親切にしてくれるだけなんですよ」


と笑いながら答えた。


「そうなのか・・・。なんだか大変なんだな」


少年は店員がサーブしている様子を目で追いながら適当に答えていた。

既にケーキに心を奪われている様子だった。


ターヴィ少年ってこんなに幼い行動をする子だったんだな。


俺がその様子を繁々と見ていると視線に気づいた少年が「コホン」とわざとらしく咳をすると。


「僕は、そのベリーの乗っているやつでいいよ!」


店員に言うと「かしこまりました」と言いながら白いお皿に乗せた。

少年は、俺の方を見ると


「では、早速頂くよ!貴方も食べていいよ?」


「ああ、そうしますね」


二人で静かにケーキを食べ始めた。

静かに食べているが、時々向かいから「ん~」とか「甘いっ!」とか感想が漏れているのが見ていて楽しかった。


そして、ケーキを食べ終えお茶を飲みひと段落ついたので俺は少年に改めて質問をした。


「改めましてだけど、俺の名前はアハト・メーラーと言います。昔はただのアハトでしたが何年か前に法改正で平民でも一部の軍に所属すると便宜上姓を頂くことができるようになりました。」


「そうなのか・・・。かなり軍の意向が通る国になったんだな。僕の名前はターヴィだ。貴方は既に知っていたようだが・・・。そうか、貴方はアハトなのか。てっきりあの少年がアハトだと思ったよ」


「そうでしょ?あの子は俺の()()()()にそっくりだってよく言われます。しかし、貴方は・・・なんというか」


俺は言葉に迷っていると


「昔の友の雰囲気に似ているんでしょ?」


ターヴィ少年は落ち着いた様子で俺が思っていた事を言った。


「はい、髪と瞳の色は違うのですがその他は俺の知っているターヴィ隊長とうり二つです」


「ターヴィ隊長?」


少年は俺の言葉を不思議そうに聞き返した。


「そうです、貴方は元私の上官ターヴィ隊 隊長 ターヴィ・クロデル様ですよ。そこで私はターヴィ隊で副隊長を務めていました。」


ターヴィ少年は動揺しながら俺の話の続きを待っていた。


「貴方は10年前の任務で負傷した俺を庇って敵の対応をした後、行方不明になったんですよ。俺が入院している間に捜索期間が終了してしまってその上貴方の隊まで引き継いでしまった」


俺はその頃の行き場のない感情があふれてしまった。


「でも、でもあなたが無事?に生存してくれていて本当にうれしいです」


目元が熱くなって溢れてくる涙をゴシゴシと拭いた。この年になると感情制御が脆くなって恥ずかしい。


「僕は、本当に貴方の知っているターヴィ・クロデルという方なのでしょうか?残念ながら僕にはその記憶が・・・」


ターヴィ少年がその続きを言おうとしたとき、こめかみを抑えながらテーブルに倒れた。


ガシャーン! 既に飲み終えていた紅茶のカップが床に落ち割れてしまった。


「ターヴィ少年!大丈夫か!」


俺は慌ててターヴィ少年に駆け寄ると


「こっこれは!」


ターヴィ少年のこめかみから()()()()である角が生えていた。

俺は動揺しながらも彼の体調が気になりそっと肩を揺すろうとすると


「心配ご無用でございます。」


突然俺の目の前に青年が現れた。


「どうやってここに・・・」


転移魔導はコントロールセンターとのやり取りでできる技術であり一般の人ができるものではない。


「貴方ももしや・・・。」


俺たちの敵にあたる相手・・・。丸腰では到底勝てるわけない。

しかし、俺の焦りを察した相手が


「突然の転移もうしわけございません。私、ターヴィ様の専属侍従のラウロと申します。ターヴィ様の体調の変化を察知し飛んできてしまいました。あ~これはお館様にお小言案件になってしまいます・・・。」


ラウロと名乗る青年は落ち込みながらターヴィ少年の頭をそっと撫でた。

すると先ほどまで生えていた角がスッと消える。


「お館様との約束でこれは見せてはいけないと言われていたのにかなり動揺したのでしょうね。もう少し鍛錬が必要なのかもしれません」


最後の方はターヴィ少年の課題と言った所だろうか。


「私は、ターヴィ様をこのまま連れていきます。アハト様も詳しい内容が知りたいでしょう。お館様のせいでお怪我もなされたと聞いております。基地に残っている元上官にでも説明するように伝えておきますね。」


ラウロはそう言うと、ターヴィ少年をそっと抱き上げた。

繊細なガラスを扱うように優しく丁寧に。


「それでは、ターヴィ様に代わってケーキをご馳走いただきありがとうございました。」


そう言うと綺麗なお辞儀をした。


「あっあの、またターヴィ隊長に会えますか?」


俺の質問にラウロは


「それは、私から答えることはできません。申し訳ございません」


と苦笑いをしながら俺の方を見た。

俺が落ち込んでいるのを見たラウロは


「はぁ~。お館様は意外と焼きもち焼きなんですよね。アハト様、また刺されちゃうかも」


とだけ言い残してその場から消えた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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