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トーチ・リリィの行方  作者: 鈴木 澪人


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10/10

おまけ

2話連続です。未読の方は前話から読んでいただけると幸いです。 

6話と7話の間のアルの用事の内容です。

 「室長~。すっごい美人なお客様が来ましたよ~」


一カ月前に配属されてた新人が、相手に聞こえてないと思いふざけた説明をしてきた。


「オイ!お前・・・。死ぬなよ・・・。」


俺は、そいつのこれからの人生の安寧を祈りながらその言葉を贈った。


「室長~。こんな平時になに怖い事言ってるんっスカ!もうお客様通しちゃいますからね!」


アイツって文官採用だったかな?いや、あんな脳筋文官枠なんかじゃ絶対ない!一度現場に戻すことを考えるか・・・。

俺が頭を抱えていると


「今どきの司令部は随分はねっかえりがいるんだな」


俺が頭を抱えている間にその方は部屋に入ってきていたようだった。

そうだよな~。俺みたいなやつにノックをして入室許可なんてとらないか・・・。


「ようこそいらっしゃいました。何かお飲みになりますか?」


俺はその客人を丁寧にもてなす。

扱いを間違えると物理で首が飛ぶからだ。平時だと抜かしていたアイツに首のない俺のその後の処理なんてできないからな。


「ああ、あの子がよく飲んでいたものがあれば嬉しいのだが」


「ターヴィ隊長ですか?」


「ああ、元人間だったターヴィ元隊長だ」


そんな何回も元付けなくても知ってるよ。優秀な部下を連れていきやがって。泣いちゃうぞ、俺。


「彼が好きだった紅茶の銘柄がありまして。少々お待ちください」


俺は、お茶を入れるのが上手な部下にあらかじめ待機してもらい早速準備をさせてた。


「貴方様の事は閣下とお呼びしてもよろしいか?」


俺はお茶と茶菓子を差し出しながら尋ねた。


「そうだな・・・。モンドンヴィル閣下でもいいぞ」


なげーな!間違えて呼んじゃいそうだよ。


「・・・では、閣下と呼ばせていただきます」


せっかく姓を教えてもらったが閣下と呼ぶことにしよう。

閣下が要求されていた資料を提出した。

もちろん内容はターヴィの過去だ。


「彼の記憶は一応みたのだが、どうして15歳で止まっているのか理解ができんのだよ」


あ~これ、情報統制がいるやつだよ。俺も後で上司に書類提出しなきゃ。

閣下が続きを話し出す前に防音機能と録音機能が付いている魔道具を動かした。


「すみません、これ軍の規則なので起動させていただきますね」


「ふむ、防音と記録か・・・。よかろう」


 閣下は装置を眺めるだけで機能を把握した。スゲーよな。といっても元々の技術はあちら側のものだからな。

そして、こちらが使えるまでレベルを落として魔道具として使えるようにしてくれたのもあちら側だ。


もう、これって魔族に支配されているんじゃね?って思った時期もあったのだが決してあちら側から攻撃はしてこない。なぜなら惚れた弱みってやつらしい。

もちろん、魔獣は本能でしか生きていないから襲い掛かってくる。しかし、高位魔族と呼ばれる階級の魔族は話を聞いている限りほぼ人と同じだ。かなり強いだけ。


そして、今回のターヴィの様に一目惚れをされると攫って行くという鬼畜システムだ。

これはさすがに一部の上官や国を支えている者しか知らない。いわゆる密約というものらしい。

俺もこの地位に立って初めて説明を受けた。それと同時に俺はその魔族たちの恋愛対象から外れるという意味でもあるらしい。っていうか俺、結構おっさんなんだけどな!


そういうと、あちらの寿命はほぼ無いに等しいらしい。魔族の心臓の部分にあたるコアが破壊される以外死なないらしい。羨ましいとは思わないけどな。

魔族が惚れやすいタイプというのは皆そろって悲劇の渦中にある人物らしい。

そう、このターヴィのように・・・。


「ターヴィ様は、15歳の時から婚約者の為に身を犠牲にして学びそして、軍に入隊してからも率先して危険な任務をこなしてきました。」


俺は、資料をかいつまんで説明する。多分、相手も既に調べているとは思うのだが。


「彼を突き動かす理由はただ一つでした。それは婚約者のリエル・ダレーマの病気の完治です。彼女の病気は難病と呼ばれる部類の病気でした。しかし、軍の管轄であった病院はそれを完治する能力があった。」


「だとすれば、ただ軍部に所属しているだけでも良かったのではないか?」


「閣下、軍は限りなく上下関係が厳しいところです。場合によっては自分の地位で優先される事もあります。ターヴィ様のご実家も有力ではありましたが、軍に名を響かせる家名ではありませんでした。そして、彼は嫡男でもありません。だったら、己で力を知らしめるしかないんですよ」


「ターヴィは頑張り屋さんだったんだな」


そんな一言で表現するほど甘くなかったけどなぁ~。

パラリと俺は資料のページをめくった。


「しかし、残念ながら彼の努力は私生活で実ることはありませんでした。」


「ああ、確か婚約者と別れたのだな?ターヴィも薄情なところがあるのか?」


閣下は頭を傾げながら呟いた。


「いいえ、実際にはダレーマ嬢が使用人と恋仲になっていたらしいです。まあ、想い合う程度でしたのでターヴィ様も強引に結婚をすることはできたと思うのですが。彼の事です。その想い合っている姿をみて裏切られたと判断したんでしょうね。確かに、病気と闘っているダレーマ嬢も大変だったと思いますが」


「そうか・・・。その女を殺せばダーヴィの杞憂が取れるという事なのか?」


閣下が眉を顰めなあら再び呟いた。やめて!もう10年前の話だから!!


「それが、ダーヴィ様は二人の関係を許したんですよね。これは、私の主観になってしまうのですが自分が邪魔者だと考えたのでしょう。それからの彼は一層危険な任務に身を置くようになりました。そんな彼を支えたのは、アハト副隊長でした」


閣下はアハトの名前を出すと一気に不機嫌になった。


「あの・・・。なにか勘違いされていると思うのですが、アハトはダーヴィ様の事を相棒として支えていたんですよ。実際彼にはその当時から恋人もいますし、その恋人は今は妻となっています。」


だから、あの時刺さないで欲しかったよ。アハトむっちゃ痛そうだったし。


「はて?そんな事もあったかな?」


あっ、綺麗な顔ですっとぼけようとしているよ!この閣下!

俺は、一つ咳ばらいをすると


「ですのでターヴィ様が15歳で止まっているのはこの婚約者の裏切り?が原因なのだと思います。彼自身が納得するのを待つしかないのかもしれませんね」


俺も人の恋愛に物申すほど知ってるわけではないけどな!


「人を想うということはそこまで重いものなのだろうか・・・。」


「閣下も」


「閣下も、ターヴィ様を連れていったではありませんか?基本的に魔族は人にそこまで興味ないですよね?」


「閣下はどうしてターヴィ様を連れていこうと思ったんですか?そして、成長が止まっているターヴィ様を気に病んでいるからこうして私に会ってまでその状況を理解しようと思われたのですよね?」


「魔族はほぼ永遠の時を持っているといわれています。でも、閣下は早く本来のターヴィ様にお会いしたいのですよね?それはどういう気持ちが溢れているのでしょうか?」


俺は、なぜか閣下に説教じみた話をしていた。大丈夫、まだ頭と体はくっついている。


「そうだな・・・。私はターヴィを見た時なぜか心が揺さぶられた。欲しいと思ったのだ。気が付けば彼を自分の邸まで連れていっていたな。」


その時に、邪魔な奴がいたから排除しようと思った。と付け加えていた。アハト・・・お前何をやったんだ。


閣下は優雅にお茶を飲んでいたが、突然固まってしまった。紅茶が冷えてしまったのか?

そして、しばらく眼球だけを動かした後


「すまない、少し用事ができた。貴殿の説明、なんとなく理解した。助かった」


「お役に立てて光栄です。」


「この件は私の上司にも伝えておくことにする。」


閣下はそう言うとその場から姿を消した。


俺は、緊張していたのか体の力が一気に抜けそのままソファーに身を預けた。

長かった~。しんどかった~。緊張した~。もう嫌だ。

そして、装置を解除しぐったりとしていると、ノック音が聞こえた。


「入れ」 俺の声と同時にさっきの新人が部屋に入ってきた。


「室長、大丈夫ですか?」


「俺が大丈夫に見えるんだったら、お前の目は死んでるな」


「ですよね~。別件で用事があったのでノックをしたのですが反応がなくて、焦って魔道具で中を確認しようとしたら拒否されるしちょっと上役に相談しようと思ったのですが、魔法を検知したので一応待機することにしたんですよ。」


「お~い。駄目だぞ。血の気の多い方はそれだけでキレるからな。不用意な魔道具の使用は命にかかわるぞ」


「は~い。以後気を付けま~す。」


以後ってもう来なくていいよ・・・。


「じゃあ、俺はこれから報告書書くから。お前も仕事に戻れよ~。」


「了解しました!」


新人はピシッと敬礼をしてから部屋を出ていった。


「あいつ本当に一度現場に戻そ・・・。」


本当に蛇足ですみません。

これにてこの物語は終了です!



最後までお読みいただきありがとうございました。

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