第3章:きんきゅうしゅつどう!
しょうぼうしゃが、サイレンをならしながら、とおくへきえていった。
ひびきとおかあさんは、しょうぼうしょのまえに、たっていた。
「おとうさん……だいじょうぶかな」
ひびきが、しんぱいそうにきいた。
おかあさんは、やさしくわらった。
「だいじょうぶ。おとうさんは、プロだからね」
「プロって?」
「プロっていうのは、とってもじょうずで、せきにんをもって、おしごとをするひとのことだよ」
ひびきは、こくんとうなずいた。
でも、まだすこし、ふあんだった。
「かえろうか」
おかあさんが、てをさしだした。
ひびきは、そのてをにぎった。
くるまで、いえにむかった。
うんてんしているのは、おかあさん。
ひびきは、うしろのせきで、まどのそとをみていた。
そらは、あおくて、きれいだった。
でも、とおくに、くろいけむりがみえた。
「あ……」
ひびきが、ゆびをさした。
「おかあさん、あれ……」
「ほんとだ。あれが、きっと、かじのげんばだね」
くるまは、だんだん、けむりにちかづいていった。
ひびきのいえは、そのちかくだったから。
いえのちかくまできたとき、くるまがとまった。
「あれ、どうしたの?」
まえのほうが、こんでいた。
ひとが、たくさんあつまっている。
けいさつのひとも、いた。
「ちかくで、かじがおきてるみたいね。ちょっと、とおりまわりしないと……」
おかあさんが、こまったかおをした。
ひびきは、まどから、そとをのぞいた。
けむりが、すぐそこまできている。
そのとき、
「ウー、ウー、ウー!」
サイレンのおとがきこえた。
あかいしょうぼうしゃが、かけつけてきた。
ひびきは、めをこらした。
「あ……!」
それは、さっきまでいた、しょうぼうしゃだった。
おとうさんが、のっている!
しょうぼうしゃが、とまった。
ドアがひらいて、おとうさんたちが、とびおりた。
ひびきは、くるまからおりた。
「ひびき! あぶないから、ちかづいちゃダメ!」
おかあさんが、とめたけど、ひびきは、もうはしりだしていた。
ひとごみのあいだを、すりぬける。
ちいさいからだだから、するっととおれた。
そして、ロープのまえで、とまった。
けいさつのひとが、
「ここから、さきは、はいれません」
といった。
でも、ひびきには、みえた。
かじのげんば。
ちいさないえから、けむりがもくもくとでている。
ほのおも、すこしみえる。
こわかった。
でも、めをそらせなかった。
おとうさんたちが、うごいていた。
ものすごいはやさで、じゅんびをする。
ホースをのばす。
みずをだす。
ほのおに、むかっていく。
ひびきは、くぎづけになった。
おとうさんのせなかが、みえた。
「しょうぼうし」とかいてある、ふく。
おおきなヘルメット。
あせが、ぽたぽたとおちている。
おとうさんは、さけんでいた。
「みぎがわ、カバーたのむ!」
「りょうかい!」
なかまが、こたえる。
みんな、ひっしだった。
いのちがけで、ひとをまもっている。
ほのおが、おおきくなった。
ひびきは、むねがドキドキした。
「おとうさん……!」
こわかった。
ほのおが、おとうさんをのみこんでしまいそうだった。
でも、おとうさんは、にげなかった。
まえにすすんだ。
ホースをもって、ほのおにむかっていった。
みずが、ほのおにぶつかる。
ジュウウウウ!
おおきなおとがした。
けむりが、もっとふえた。
でも、すこしずつ、ほのおがちいさくなっていく。
おとうさんたちは、ぜったいにあきらめなかった。
なんども、なんども、みずをかけた。
あせだくになりながら、たたかっていた。
どのくらい、じかんがたったのか、わからなかった。
ほのおは、きえた。
けむりも、だんだん、すくなくなっていった。
「よし! しずまった!」
だれかが、さけんだ。
おとうさんたちが、ほっとしたかおをした。
ひびきも、むねをなでおろした。
おとうさんは、ヘルメットをぬいだ。
あたまから、ゆげがでていた。
かおじゅう、あせだらけだった。
でも、そのかおは、つかれているけど、どこかほこらしげだった。
ひびきは、おもった。
「おとうさん……かっこいい」
そのとき、おとうさんが、こっちをみた。
めがあった。
おとうさんは、びっくりしたかおをして、それから、すこしこまったようにわらった。
てをふった。
ひびきも、ちいさく、てをふりかえした。
「ひびき! こんなところまで!」
おかあさんが、かけてきた。
「ごめんなさい……」
ひびきは、あやまった。
でも、おかあさんは、おこらなかった。
「おとうさん、かっこよかったね」
おかあさんが、やさしくいった。
ひびきは、こくんとうなずいた。
むねのおくが、あつかった。
おとうさんのせなか。
あせだらけのせなか。
それが、きらきらとひかって、みえたきがした。




