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第一話・わたくしと聖女

ごきげんよう。わたくしはロベリア・エリヌス。

サイネリア王国屈指の大貴族であるエリヌス公爵家の一人娘…………の、はずなのだけれど。


「…ここ、どこなのかしら……???」


周りを見渡しても、目に入るのはどれも見慣れないものばかりですわ。


……とりあえず、状況を整理しましょう。

昨日、わたくしが自分の部屋で寝ようとして………あ。なんだか黄色い眩しい光に包まれたのよね!それに入って………気がついたらこの謎の小さな部屋?に座り込んでいた、という感じかしら。

足元にあるのはピンクでふわふわの絨毯らしきもの。

そして……


「くー…… くー……」


……ぐっすり寝ている“聖女”。

いや、一人じゃないのは良かったけれど、よりにもよって気に入らない聖女……?しかも寝ているし。このわたくしを放って気持ち良さそうに寝ているだなんて、許せませんわ!


「ちょっと、ちょっと!起きなさいな。」

「ん、ん〜……?」


聖女は少しみじろぐけれど、一向に目は開けませんわ。いや、結構な力で揺さぶっているのだけれど…


「聖女!!」

腹立ちを隠しきれずそう声を荒げると、やっと聖女は目を覚ましましたみたいで、眠たげに目を擦っていましてよ。知らない場所なのに…呑気なものね。


「ふわあ……おかーさん?もうちょっと寝させてよ……」

「だっ、誰がお母さんよ!!」


「…えっ!?!その可愛らしい声はロベリア様!?」

聖女はやっとわたくしに気づいたらしく、驚いて距離を取ってきますわ。


「やっと気づきましたの?」

「は、はい…で、でもなんでここにロベリア様が?」

「わたくしこそ聞きたいですわ!一体どこなのかしら、ここ…」

わたくしがそう呟くと、聖女はきょろきょろと周りを見渡してから、ハッと驚いた様子でこちらを見つめてきましたわ。



「……ここ、私の部屋です!」


「……は、あ…?」

本気で言っているのかしら。え、それともわたくしが無知なだけ?聖女って、こんな見た事ない文化の…こんなに小さな部屋に住まわされているの!?もしや、虐げられて……?


「えーっ、帰って来れるなんて思わなかったあ!本当に私の部屋なんだが!!驚きーっ!あー、私の愛しの菊たんぬい!もう一生抱きしめられないものかと!この庶民感、落ち着くーっ!」


………ちょっと、状況が掴めなさすぎる………


「ちょ、ちょっと聖女?どういうことですの?わたくし、何が何だか……」


わたくしがそう話しかけようとしたところで、ガチャっと何かが開く音がします。

「あれ、咲良帰ってるの?」

誰かの声…

「わ、わわわっ!?」

聖女はなぜか慌てているけど、丁度良い。この際誰でも良いから、この状況を説明してほしいわ…

とん、とん。足音が近づいてくる。

「ちょっ、ちょっとまっ!お母さ…っ」


「咲良?」

「わーっ!!?!」


部屋の扉が開いて、声の主の顔が見えましたわ。…黒髪に黒目。サイネリア王国ではかなり珍しいけど、東の国では一般的と聞いた事があるわ。ああ、あと聖女も黒髪ね。


「あら、お友達が来てるの?ずいぶん可愛らしい子ね!日本顔じゃないし……海外の子?」

「あ、そ、そうそう!おかえりお母さん!この子はロベリアちゃん!外国からの留学生!!」

「あー、なるほどねえ!ゆっくりしてってね!」


……ロベリア“ちゃん”?急にずいぶん馴れ馴れしいわね……?しかもよく分からない単語を使っているし。リュウガクセイってなんのことかしら?


「ろ、ロベリア…ちゃん…も、挨拶して…!」

ちゃん付け。タメ口。いろいろ聞きたい事はあったけれど、なんだかすごい圧を感じて、思わず挨拶してしまうわ。


「…ごきげんよう、サクラのお母様。ロベリア・エリヌスですわ。」


……よく分からないけど、馴れ馴れしい態度の方がいいのよね。わたくしはそういうのも読み取れるのよ。なんたって一流の淑女なんだから!

わたくしがそう立ち上がってスカートの裾を持ち上げる仕草で挨拶すると、聖女のお母様らしき人は息を呑んだ。


「…すごい…!なんかお上品だね…!」

「でっ、でっしょー?!」

ふふんっ!当たり前でしょう。わたくしはサイネリア王国の誇る淑女なんだからっ!


「あ、そういや咲良、あんたの好きなカフェで出た新作スイーツ、食べに行ったの?」

「えっ!?blossomの!?……い、今何年の何月何日……?」

「あんた夏休みボケしすぎ!2024年の8月3日だよ!」


そうお母様が言うと、聖女の顔がぱっと花やいだ。ずっとなんの話をしているのか分からないわ…置いてけぼり……こんな経験、生まれて初めて……


「あっちに行ってる時間は影響されてないんだ!!」

聖女は何かを小声で喋っている。よく聞こえないけれど、お母様もそうみたいで、顔を歪ませる。


「…んー、よく分かんないけど。ロベリアちゃんと一緒に食べに行ったらどう?スイーツならロベリアちゃんも食べやすいだろうし!」

「うん!そうするっ!」

「じゃあロベリアちゃん、ゆっくりしてってね!」

そう言って、お母様は扉を閉めて出て行った。


「ふ、ふう……」

聖女は深くため息を吐く。そうしてから、わたくしの方へと正座で向き直って来ましたわ。




「………ご説明させていただきます、ロベリア様…」

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