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41話 借り物リレー開始直前

 グラウンドの方へ戻る際、俺は真中たち御一行に絡まれた。


 絡まれたと言っても、何か嫌がらせを受けたとか、そういうわけじゃない。


 要するに、探りだ。


 俺がこの体育祭で何かを目論んでる。


 その目論見がいったい何なのか正直に答えろ、といったものだった。


 情報源は進藤や大平からだろう。


 大方、「里佳子に痴漢した暗田が、また何かやろうとしてるのかもしれない。気を付けろよ」みたいに言われたんじゃないかと推測してる。


 まったくだ。被害者はむしろ俺の方だってのに。


 ため息モノだが、下ばかり向いちゃいられない。


 公開ショーはもう目前だ。


 これが上手くいくかいかないかで、今後の俺の見られ方は大きく変わってくるし、亜月さんの悩みも解決できるか否かが決まってくる。


 とにかく、あとはもう腹をくくるだけだ。


 佐藤も佐藤で、最後になって味方のような立ち位置になってくれてるけど、俺はまだ奴のことを完全に信用しちゃいない。


 確かにいい奴だが、結局そこまでなのだ。


 やっぱり俺は自分の友人を売ったりなんてできない!


 とか言い出して、俺の元から離れてくことなんて、往々にして考えられる。


 だから、あくまでも佐藤はおまけと考えておいて、とにかく自分が動いていかないといけない。


 今からある応援合戦が終わって、一つ競技を挟んだところで、借り物リレーはある。


 一応、俺も応援合戦には参加するが、それが終わったら速攻で準備に取り掛からないと。


 まあ、準備といっても、最終チェックくらいのものなんだけどな。


「よし! じゃあ、赤分団、行くぞ!」


 オォォォォ!


 隣のテントに入ってた赤分団の連中が声を上げ、そそくさとスタートゲートに移動していく。


 マイク放送で、応援合戦の正式な開始合図があり、競技は始まった。


 平和なもんだ。


 脳死で青春を送れてるような奴らは、きっとこういった行事の一つ一つを本当に真摯に楽しむことができてるんだろうな。


 それはある種かなり幸せなことであり、俺にはまず真似できない芸当だった。


 現状、「いやいや、そんなの俺は冤罪のせいで~」とか言い訳ができるけど、もしそう言う被害に遭ってなかったら、シンプルにこういった青春イベントに参加できない悲しい陰キャラに落ち着いてしまう。


 結局のところ、どう転んでも俺は冴えないのだ。


 だからこそ、そんな俺が亜月さんと一緒に居られてるのが奇跡でしかないと思う。


 その点だけ、きっかけをくれた真中には感謝してる。本当にそれだけだが。


 ――とまあ、そんなこんなで時間は流れ、俺たちの分団の出し物も終わり、借り物リレー直前。


 俺はイベント執行委員の集まるテントとは別の、放送委員席へと足を運んだ。


 そして、マイクを手に持つ放送委員らしき女子に声を掛ける。


「ちょっとすみません。イベント執行委員の役割でここに来たんですけど」


「は……?」


 いやいや……、そんな敵意丸出しの目で「は?」とか言わなくても……。


「後で始まる借り物リレー、イベント執行委員がマイクで盛り上げ役やらないといけないんですよ。話は聞いて……ないですかね?」


「聞いたよ。聞いたけど、なんでよりにもよって一番ヤバいあなたがここに来るの? 変態にもまだ人権ってあったんだ。仕事させてもらえるのね」


「……ま、まあ……」


 ひでえ言い方だな……。


 鍛え上げられてないと、ほぼ初対面の人にこんなこと言われてマトモで居られるはずがない。


 俺は結構鍛えられてるから大丈夫なんだけど。とにかく排斥されてる感がエグイ。泣きそう。


「そういうことなら仕方ないよね。いい? 絶対ここにいる女子には手を出さないで。昼間だし、周りの目もあるから、変なことしようとしたらすぐにみんなが摘発するからね」


 マイク持ちの女子がそう言うと、周囲の男子女子が一斉に俺へ敵意の視線を浮かべて見つめてきた。


 しかし……。


 これで本当にやれるんだろうか……? 不安になってきたぞ。


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