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オトメマジカル  作者: 沼米 さくら
3rd Season 武闘大会編

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44/56

#41‐1 文化祭のストレイキャッツ


 時は瞬く間に過ぎていった。

 ——というわけで、気がつけば武闘大会一日目。


「いよいよ文化祭ですね、ソーヤくんっ!」

 アリアが僕に微笑みかけた。

 小さな教室。机を並べた喫茶室。簡易的な厨房で、僕らは最終確認をしていた。

「出たゴミはこの箱に入れておけばいいんだよね」

「うん。アイン、料理の作り置きは?」

「できてるよ。準備は万全さ」

 各々が最終的な物事を確認する中、僕は軽く伸びをして、教室の入口を一瞥した。

 引き戸のそばに、紙の看板。手書きで書かれた文字は「喫茶 ストレイキャット」。

「……これ、野良猫って意味なんですよ」

「へぇ……はぐれものの僕らにはぴったりだ」

「でしょう! 我ながらセンスがいい!」

 ふふんと胸を張ったアリアに、しかし僕は少し俯いた。


「なら、衣装のセンスはどうにかならなかったの……?」

 はっきり言おう。衣装のセンスは、少なくとも僕にとっては微妙だった。

 一言で言うならば、短いフリフリのワンピースだ。

 黒地のワンピースは全員同じ。肩口が膨らんでいて、膝上大体三センチの短いスカート。中はパニエでふわっと膨らんでいる。

 そしてその上に、一人ずつ違う色のフリルエプロン。パステルな色合いで、単調なワンピースが華やかに彩られる。胸元には鈴のような小さなアクセサリーまでついていた。

 フリルのソックスに、甲にストラップのついた靴。ご丁寧にハートのモチーフまでついている。

「ふふんっ。最高にカワイイじゃないですか!」

「恥ずかしいことこの上ないんだけど!」

「すっごく似合ってますよ? やっぱり銀髪にエメラルドグリーンは映えますねぇ!」

「話を聞いてえっ!」

 エプロンの配色は、僕が緑、アリアはピンク、マーキュリーが黄色、クリスは赤。アインが紫で、レーネは水色だ。同じ色のリボンで髪をくくっているので、イメージカラーとしてもわかりやすい。

「はぁはぁ……んふふ、ソーヤちゃんは期待通りすごい逸材ですねぇ……」

「なんかアリア、いつもよりオヤジ臭くない?」

「髪型も似合ってますよぉっ!」

「やっ、顔近づけないでっ!」

 僕は少し引いた。ちなみに僕の髪型はいつもより高めの位置で結んだハーフツインだ。たしかにいつもよりかわいくしたけど! というかさせられたけど!

 唇を尖らす僕に頬ずりするアリア。そんな微笑ましい……微笑ましい? 光景をよそに、入口のベルが鳴った。

 ——喫茶 ストレイキャッツ、開店の時間だ。

「いらっしゃいませっ!」


    *


「またのお越しをお待ちしてますっ!」


 時間は瞬く間に過ぎていった。

「ようやく客足が途切れた……」

 額に汗が滲んでいた。昼前のひととき。

「昼休憩にしようか」


 休憩中、と書いた紙を入口に貼り付け、僕らは席に座った。

「すごい客入りでしたね……。休むヒマもないくらい」

 レーネが口にする。

 実際、この喫茶ストレイキャッツは想定を超えて人気を得ていた。

 行列ができるほどではなかったが、客の波は途切れることなく続いていた。

「本当は誰か休めるはずだったんだけどねぇ……」

 ため息をつくクリスに、僕は軽く伸びをする。

「いま、アリアとマーキュリーが宣伝に出かけてるけど……」

「そういえば戻ってこないわね。どうしたのかしら」

 話していたとき、ガラッと教室のドアが開いた。


「大変だよみんな!」

「噂をすれば」

 マーキュリーだった。その後ろからアリアも入室してくる。

「大変ですよみなさん」

「どーした? なにが大変なのさ」

 アインの問いかけに、アリアは真面目な顔で人差し指を立てた。

「向こう——カロンさんたちのクラス、大盛況ですよ」


 僕らはカロンたちと喫茶店の売上で勝負している。ちょっと忘れそうになってたけど。

「そのカロンさんたちのところ、喫茶ウルヴェンハント。ちらっと覗いたんですが……」

「すごい行列できてた。なんかいっぱいお客さんが並んでてね、あの子たちもいっぱい動き回ってたよー」

「その上、あれで全員じゃないみたいでした。……ほら、あそこ」

 アリアがドアの方を指さした。

 ドアに付いている窓。そこからこちらを伺う一人の影。僕らが見ていることに気づくと、ビクリと震えて逃げていく。

「……偵察、されちゃってるねぇ」

「しかもローテーションで回してるみたいで、文化祭で遊び回ってる子もチラホラいました」

「人数に余裕あるの羨ましいよね……」

 そう言って笑うマーキュリーに。

「でも、高望みしたって私達にはここにあるものしかないんだもの。それでどうにかするしかないわ」

 正論をぶつけるクリス。場は沈黙に包まれる。


 それから十数秒ほど、コーヒーを啜る音だけが響いて。

「……どうしよっか」

 レーネが口にしたとき。

 すっと手が上がった。アリアだ。

「いい案があるんですよ」

 言い放ったアリアに、自然と注目が集まる。

「……アリア、話して」

 急かすと、彼女は息を吸って、話しだした。


「わたしたちは、もっと可愛くなるべきなんです」


「……は?」


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