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オトメマジカル  作者: 沼米 さくら
3rd Season 武闘大会編

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37/43

#35 カロン・リスターと因縁のはじまり


「ふふっ。よくこんなところに来てくれたわね。淫売の娘(サノバビッチ)


 カロン・リスター。僕らの教室の雰囲気を決める中心人物。そして——どうやら、人の好き嫌いが激しいようだ。

「はじめに言っておきますわ。——私は、貴女が大嫌いですわ」

 彼女の周りには数人のガラの悪そうな取り巻きが笑う。というかせせら笑っている。

 そんな中で、アリアは一人、いつもどおりの飄々とした態度を崩さずに。

「はい。知ってましたよ」

 真顔で答えた。

「じゃあ、何をすればいいのか……わかるわよね?」

「いいえ? ——物事は、言わなければ伝わらないものですよ」

「ばかにするのも大概にしなさいよ、クズ女!」

 そう言って、カロンはアリアを叩いた。

 しかし、叩かれたアリアは一瞬だけ体制を崩しつつも、再び何も言わずに立つ。

「……ほんっと食わないやつね」

「なんとでも言ってください。——貴女たちに流す涙なんてないことなど、もうご存知でしょう?」

「——ッ、ンのクソアマッ!」

 手を挙げるカロン。笑っていた仲間たちは一斉に武器を構え——。


「そこまでだ」

 アリアと彼女たちの間に、僕は立ちふさがった。


「ちょ、ソーヤ!」

 遅れて出てくるクリスたち。カロンは舌打ちをして。

「優等生様がこんなところになんの御用で?」

 警戒態勢を緩めないままで聞いてくる。

「そっちこそ、こんなところに友達(アリア)を呼び出して、何をしていたんだい?」

「……それは」

 答えに窮するカロンに。

「アリアの頬、腫れてるじゃないか。——なにをした」

 あえて素知らぬふりをして尋問する僕。彼女は小さく笑って。

「立場ってものをわからせようとしたのよ。この犯罪者より、私達のほうが上だってこと!」

「へぇ? 一度でもそういったことをすれば、立場は下になるんだ?」

「そうよ! そうに決まって——」

「じゃあ、君たちが犯罪を犯したら、どうなるんだろうね」

「……!?」

 信じられないことを言われたような顔で困惑するカロンたち。ヒソヒソ話し出す後ろの少女たちにも聞こえるように、僕は言葉を吐き出す。

「同じクラスメイトだろう? ——馬鹿にするのもいい加減にしろよ、なあ」

 怒りで半ば我を忘れていたのだと思う。片手で魔法の発動準備をしていた僕の肩を引く感覚に、一瞬目を丸くした。

「ソーヤ。そこまでになさいよ。——あの子が可哀想でしょ?」

 ……クリスに言われて、僕ははっとした。しかし。

「誰が、可哀想だって?」

 向こうは、むしろ逆上していた。

「あんたたちに決まっているでしょ。——こいつの魔法の成績は知ってるでしょ?」

「……チッ。覚えてなさいよ」

 舌打ちして振り返るカロン。だが——次の言葉で、態度を急変させた。


「あの、こんど、武闘大会っていうのがあるんだけど……」


 マーキュリーが小さく手を上げて言った。カロンの耳がぴくんと動くのが見えた。

「……そうか。その手があったわね」

 そんな事を言って、彼女は口端を上げた。


「——ソーヤ・イノセンス。並びにアリア・スクブス。貴女たちに、決闘を申し込むわ」


「……本来、僕らが申し込む側じゃない?」

「うるさい! 私が侮辱されたんだもの。当然の権利よ」

 どうしてこうも、彼女は自己中心的なのか。僕も人のことは言えないけど。

 僕はアリアの横に立ち、肩を抱く。

「方法は……」

「武闘大会。あなた達と直接武器を交えて、どちらが上かってのをわからせてあげるわ」

「……僕らに決定権はないようだね」

 ため息をついた。彼女は僕を睨みつけて、実質一択しかない決断を待つ。

「……アリアはどうしたい?」

「どっちでもいいですよ。……どうせ、結果は見えてるので」

 僕は苦笑し。

「随分な過大評価だね。ありがとう。

 ——その喧嘩、買おうじゃないか」

 カロンを睨み返した。


    *


「はぁー……怖かったですぅ……」

 カロンたちが去ったあと、アリアは膝をついて大きく息を吐いた。

「……大丈夫?」

 クリスが手を差し伸べ、僕が肩を支える。

 どうにか立ち上がりながら、彼女は涙目で溢した。

「大丈夫じゃないに決まってるじゃないですか……」

「全く屈してないように見えたのに?」

「あれで内心ビクビクだったんですから……。ソーヤくんたちがいなきゃ怖くて泣き出してましたよぉ……」

 ……尾行、バレてたんだ。

「たしかにすっごく怖かったよねぇ……。一言も言えなくなっちゃうくらい……」

 マーキュリーも泣き出しそうになっていた。


「というか、ソーヤ。あんたって意外と怒りっぽいのね」

 クリスの言葉に、僕は少し目を丸くした。

「……友達のことになると、無我夢中になっちゃうみたいだ」

「猪突猛進になりすぎるのも考えものよ。勢いにまかせて、あんなこと決めちゃうなんて」

 あんなこと、と言われて一瞬戸惑いそうになるが、すぐに思い出した。

 ……武闘大会。出るつもりはなかったんだけどなぁ。


 肩を回して、軽い口調で尋ねる。

「僕は一人でも出るけど——みんなはどうする?」

 その問いに、三人は互いを見合って。

「……わたしは出ますよ。もとは、わたしのことですもん」

「私も出るわ! ……私も私で、親友のことを簡単に見捨てられるほど薄情者じゃないわ」

「わ、わたしもっ! なんの役にも立てないかもだけど……アリアちゃんのためだもん。なにもしないなんて、いやだから」

 立て続けの言葉に、僕は再び目を丸くして。

「……わかった。ありがと。よろしく」

 目を細め、口端を上げた。


 こうして、僕らは武闘大会への出場が決まった。

 ——それが、後に世間を揺るがす「第一歩」になることを知ることなく。


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