表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/33

第016話 手 記(アヴェンジャー)

 私の名前はセラ。セラフィーナ・(エリザベート)・ラトゥーリ。

 ラトゥーリ首長家の末娘です。先日から逃避行を続けています。もう二〇日以上になります。

 七ノ月(ななのつき)一六日の夜、何者かによって父と長兄が殺されました。悲しむ時間も、(とむら)う時間も与えられず、私は近侍の者に両脇を抱えられて屋敷を出ました。追手(おって)の目をかいくぐって首都星オーランドを脱した私たちは、現在、ラトゥーリ家が所有していた宇宙船で宇宙(そら)彷徨(さまよ)っています。幸い、次兄とは一緒に逃げることができました。

 父、オリヴェル・(ユリウス)・ラトゥーリの命を奪ったのは、叔父(おじ)さまの手の者だと聞きました。おそらくは長兄(あに)もそうなのでしょう。なぜ親族を(あや)めるようなことができるのでしょうか。それほどまでに代表首長(エデュスター)の地位が欲しかったのでしょうか。涙以上に、怒りと憎しみがこみあげてきます。

 優しい父でした。優しい長兄(あに)でした。早くに母を()くした私が寂しがらないよう、父も長兄(あに)もいつも一緒にいてくれました。その父と長兄を殺めた叔父(おじ)さまを、私はどうしても(ゆる)すことはできません。私が逃げおおせることができたら、いつかきっと(かたき)を討ちたいと思います。森人族(エルフ)にとって、敵討(かたきうち)は神聖な行為です。神もお赦しになられている正当な行為です。だからこそ、私と次兄は叔父(おじ)さまに追われているのでしょう。

 私が一〇〇歳の子供だったころに、父は代表首長(エデュスター)になりました。その地位に就いてから、まだ一二〇年ほどしかたっていません。順調なら、あと四〇〇年くらいは続けることができたはずです。私たち森人族(エルフ)は長命です。なのに、その四〇〇年を叔父(おじ)さまは待つことができなかったのでしょうか。四〇〇年なんてあっという間です。それでも、叔父(おじ)さまにとっては長すぎたのでしょうか。

 宇宙船に用意された一室で、私はいまこの手記を書いています。この胸に燃えさかる怒りと憎しみを忘れないよう、文字として(したた)めています。いつかペンを剣にかえ、いつかペンを銃にかえて、叔父(おじ)さまと対峙(たいじ)したときに(ひる)まぬよう……。


 何かを叩くような音がして、私は目が覚めました。

 どうやら少し眠ってしまったようです。それがノックの音だと気づいた私は、書きかけの手記を閉じて、ドアに近づきます。

 ドアを開けると、次兄のリクハルドお兄さまがあわてたご様子でそこに立っていました。

「セラ、敵に見つかってしまった。お前だけでも逃げてくれないか」

「そ、そんなこと……いったいどうしたと言うのですか?」

 私はお兄さまに()きました。

「私がこの宇宙船で敵を引きつける。その前に宇宙連絡艇(シャトル)でここを脱出してくれ」

亜空間跳躍(ワープ)は使えないのですか」

「ダメだ。エネルギーの充填が間に合わない」

「でしたらお兄さまもご一緒に。私だけ逃げるなんてことはできません」

「父と兄が亡くなったいま、ラトゥーリ家の当主は私だ。当主がここを離れるわけにはいかない」

「なら、私も一緒に戦います。私もラトゥーリ家の人間です」

「お前まで死んでしまったら、ラトゥーリ家の血が失われてしまう」

「ですが、お兄さ――」

「すまないセラ、時間がない。(ゆる)してくれ」

 リクハルドお兄さまのその声と、どちらが先だったのでしょうか。お腹のあたりに何かを押しつけられたかと思うと、パシュッという音がして……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ