データと本能
人には、平等な無意識がある。
苦しい状況の中で、その無意識を抑え込めるかどうかが、成否を分けると言ってもいい。
「今日の相手先発はエースの成沢だ」
野球というスポーツで生きていくのなら、相手の事を知れるデータは必要になる。
スコアラーやコーチ、監督は相手の情報を吸い出し、試合で戦う選手達に情報を伝えていく。
「中5日で登板だが、100球は投げるタフネス投手。成沢の右打者へのアウトコースに来るスライダーはしっかり見極めるように」
ストライクに成りやすい球やボールに成りやすい球。
それらが事前に分かるだけでも打者の対応は違う。それに対応できない者もいるものだが、
「4回、5回までじっくりとストレート1本に絞りつつ、スライダーのキレを打席で確認しろ。試合後半、このペナントレースの疲れで、スライダーやフォークがヌケ易く、ボールが甘くなる傾向がある」
データに基づいて、各投手の攻略法を考える。そして、伝える。
こーいう情報を活かしてくれそうにない、自分の選手達にも分かりやすいようにする。
そーいう仕事なのだが、……。
「野々スコアラーから、どうぞ」
「はい」
この仕事とは、相手の緻密な情報を提供する事だろうと、考えている者もいる。理解してくれない選手達にこそ、問題があると思っていたりもする。
元捕手を務めていた、野々スコアラー。毎試合恒例の情報伝達。
「成沢・捕手の木津のコンビの配球は。まず、真っ直ぐから行く。1巡目の初球の8割以上はストレートから入ってくる。これは木津が試合中の投手の調子、こちらの打線の調子を把握するためにするものであり、打者の事を見ていないという意図のものだ。得意なコースに来たら、1球目から打ってくるといい。1打席目でヒットを打った者には、2打席目以降は特に注意しており、右打者ならアウトコースのボール球から入りやすい。左打者は低めに落ちるフォークから入っていく……。その後は内、内、の投球が8割来るので、内角への意識を持つんだぞ」
ごにょごにょごにょごにょ……。
野々スコアラーによる相手バッテリー・守備の情報伝達。
「クソ長ぇ……」
選手達数名がそう愚痴るほど、細かすぎて覚えられない話。
配球の話もあるのだが、
「ランナーが3塁にいる場合。木津はフォークをあまり要求しない。成沢のコントロールが悪いというのもあるが、自分が捕球する自信がないのだろうな。フォークは捨てろ。低めギリギリだったら、反応しなくてもいい」
後ろ逸らしたら、1点入るんだし、それ普通じゃね?って思う選手もいる。成沢がそんなに制球力ないし、……それでも
「ただ木津は中継ぎ陣のフォークはしっかり要求するからな。相手投手の事も頭に入れるんだぞ」
そーいう情報は、打者が打席に入った瞬間に言えばいいだろうが!!
チャンスの場面で投手交代なんてある事なんだし!!
こんな情報の、そーいう緻密過ぎる情報を試合開始2時間前に10分以上も行ってしまう。
2時間後にはスッカリ忘れてそうな選手達もいるだろう。
◇ ◇
そして試合は4回。1点リードとはいえ、1-0の引き締まったゲーム。
走者を2人置いた状態で、4番で右打者の桐島に打席が回った。
成沢は丁度50球目。
1ボールから投じたのは、スライダー。
カーーーーーーンッ
「打ったーーー!!桐島!!弾丸ライナーでレフトスタンドに突き刺さる、3ランホームラン!!これぞ4番と言える打撃で、4-0!!突き放します!!」
引き締まったこのゲーム。一気に試合を決めるのはホームランだと言わんばかりの結果を残す。
そのホームランにベンチの野々スコアラーはガッツポーズ。
「よーーし!!さっすが、桐島!!私の情報通り、1球目のアウトコースを平然と見送り、2球目に内に入ってくるスライダーをバッチリ捉えてのホームラン!完全に読んでいたな!!お前のそのスイングに、私の情報があれば、鬼に金棒よ!」
確かに野々スコアラーが言っていた通りの情報で、ホームランが出たのだから喜ばずにいられない。
「ナイス桐島ー」
「余裕や余裕。ワイは日本一の打者やで」
自らの打撃に絶対の自信を持つ桐島。それでも相手はプロの投手だ。
甘い球は早々来ないから
「疲れて抜けて入ってくるスライダーは、一球で仕留めな、アカンやん」
「……そーいう事ができる打者が、日本にどんだけいると思う?」
3割の打率があれば、優秀とされる野球の打者の世界。
失投を確実に、それもホームランにできるという打者がいる。そんな打線はホントに強いものだ。失投すれば打たれるとなれば、当然、相手バッテリーは厳しいコースに投げ込む。結果、球数と四球を生み出しやすく、投手の疲弊は早くなる。
それがこの桐島の3ランホームランに繋がる。相手投手に重圧をかけられる4番打者ってのは、こーいうもの。
「よく情報を活かしたな!天性な打撃に私の情報があれば、今年も本塁打王と打点王は確実だぞ」
「へーいへい」
……ぶっちゃけ、桐島はスコアラーの情報なんて聞いてもいないんだよなって、周りのチームメイトは感じている。ミーティング中、半分寝てるし、読み打ちするタイプではない。
強いか弱いか。シンプルに真っ向勝負を好む。
「桐島がノッてる場面を作ってこうぜ」
「おおっ」
一人のため、チームのためとなるが。良い雰囲気も勝敗を左右する。チャンスを作って桐島に全てを託す。それがこのチームの必勝パターン。
「変化球はキューーッて曲がったところ、パカーンっすから!」
桐島の本能的な打撃は、一般人には理解不能。元々、並外れた動体視力とムダのない内角捌き、日本一のスイングスピードが可能にしている打撃に、理論なんてないんだろう。曲がるから、追いかけて打つとか、軟投派投手からしたら天敵中の天敵。
「2番手の愛甲は、カーブを3種類も使う!速いカーブがアウトコースに続くと、制球を乱しやすい傾向がある!外の速いカーブは捨てて、縦カーブと緩いカーブをカットし続けろ!直球を投げる時、70%の確率で普段よりグローブを早く閉じやすくなるんだが、そーいう時はアウトコースから外れることがあるから、安易に手を出すんじゃないぞ!」
細かいし、不確かな情報まで流していくな。必死に調べているんだろうけど!野々スコアラーはしっかり調べてくれるのはいいが、チームの空気を読めるようになってくれ!
プロ野球が開幕しましたね。
各試合、とんでもねぇ試合ばっかり……。
時間潰しに、パワプロ2016で2021年の中日ドラゴンズを作っているんですが。
投手成績を見た時、大野投手と柳投手、小笠原投手などの先発陣。ライデル投手、藤嶋投手、福投手などの中継ぎ陣が凄いと感じました。2021年では、一番チーム防御率が良かった気がします。
バンテリンドームが投手有利というのがありますが。それでもこの成績が凄いと感じた点が、大野投手達は、中日打線を相手にしてないって事なんですよね。
これどうやって点とるねんって、感じの打線でした。
守備が良いのは分かるんですが、優秀な代打陣や打線と呼べるぐらいの巧打者を揃えないと点を獲るのはキツイんですけど。せめて、ロッテの和田選手のような、スピードスターでもいれば。
開幕戦はヤクルト、ソフトバンク、オリックスが、凄い試合をしていましたが。
中日VS巨人では、大野投手が2安打を放っていたという結果を見て。ちょっとショックです。しかも、相手は菅野投手というね。岡林選手や代打で平田選手が打ってくれたのは救いかな。
今年優勝って銘打つよりかは、2021年より100得点+を目標に中日打線が奮起して欲しいですね。有望な若い選手はいますし、再び黄金期が来ても不思議じゃないです。
チーム作ってる時に気づいたんですが、大島選手って36歳だったんですね……。1番打者なんで20代後半かと思っていたんですが、社卒だったとは。ビシエド選手の方が若いとは知らんかった。数年後もこの2人の選手が1番と4番を打つような打線だったらちょっとアレな感じになりますね。
まだ開幕したばかりなので、このシーズンで期待の大砲や選手が各チームから現れると嬉しいです。