気になる赤い傘
曇り空のことだから、
おまえは傘を持って
来るんだろうか。
お気に入りだった
あの赤い傘。
台風は東へ行ったと
言っていたから、
このへん寒くなるねと、
コートには、まだ
早いかなと笑った。
声を聞くたびに思う。
元気そうでよかった。
さっさと電話を切る。
相変わらずでよかった。
ポツンとさせてくれる。
ん、心配してくれて、
電話をくれるのか。
いやそんなことはない。
だけど、大人になって、
ずいぶん変ってきた。
とにかく行くよ。
夕方までに選んでくれ。
後の時間が無いのは、
おまえも知っているだろ。
風だけ、まだ強い。
雨はもう、降らない。
傘だって、もういらない。
それぞれの土曜の午後。
気になるのは赤い傘。
おまえはどうするんだろ。