第7話
街の騎士団の第三部隊隊長エレフェンス・エレリックスが、洗濯物を干しているセリカちゃんを訪ねてきた。
「わ、私が、ゴブリン退治ですか!?」
「はい。セリカ様を支援するのが、代行者様から我々に任された使命でございます」
エレリックスは、プカプカとセリカちゃんの頭上に浮く俺を一瞥し、俺のご機嫌を損ねて、天変地異が起こらないことを確認しているようだ。まぁ、街を治める子爵や、守る騎士団にとっては、トラウマなのだろう。
「そこで、セリカ様のレベル上げを、我ら騎士団が微力ながらご支援させていただく所存です」
「良いんじゃないの? 例え魔物でも生き物を殺すことに、恐怖や嫌悪感など、いろいろな感情を抱くと思うし、いつか通らなければならない道だ。騎士団が支援してくれるのなら、安心して実戦を経験できるからね」
困った様子のセリカちゃんは、一緒に座る両親に目を向けるが、騎士団の登場で舞い上がっているため、全く役に立たない。
セリカちゃんを守るための注意事項をエレリックスに伝えると、熱心にメモを取りながら考えを巡らせていた。
「わかりました。では、代行者様。いつ頃がよろしいでしょうか?」
「うん? 明後日で良いんじゃね?」
「は、はい。至急、戻り…準備を始めますので、本日は、これにて失礼させて頂きます」
慌ただしく、エレリックスは、馬を操り子爵の城塞へと帰っていく。
「マ、マナポ…。大丈夫かな? ほら、私、まだ光の精霊の使い方知らないでしょ?」
「あっ。それ僕」
「……」
翌日、エレリックスに注文しておいた子供用の皮の鎧が、速攻で届く。皮の兜、皮の鎧、革の小手、革のブーツ。ちゃんと、変身用のステッキが、腰にぶら下げられるように出来ている。素材は何か魔物の皮らしいが、どうせ変身前の衣装である気にする必用もない。
(完璧だぜ! エレリックス!!)
「ほら、セリカちゃん。皮の装備でも、変身できるように練習、練習!!」
セリカちゃんの両親は、あの姿で人前に出させられる我が娘を気の毒に思うが、これも勇者が進む茨の道と、涙をこらえていた。
「ゆーしゃ、フォーム!!」と教えてもいないのに叫ぶセリカちゃん。
元気よく、右手で持ったステッキを天に掲げる! 眩いばかりのピンクのハートのシャワーが降り注ぐ。笑顔で三回転するうちに、皮の鎧からピンクのモノキニ水着に衣装が変わり、足には白の夏用ロングブーツ、手には白のフィンガーレスのウェディンググローブが装備され、背中には大きな天使の羽が浮かぶ。変身が終わると、可愛くジャンプし、着地と同時に前かがみでウィンク!! 最後は、目を閉じながら回って、決めポーズ!!
本人曰く。恥ずかしがったら負けとのこと…。
そして最後に、変身用ステッキの先端にあるハート部分から、光の剣身が伸び武器になることを教える。