第5話
家に帰りる途中で日が暮れたが、俺という照明があるためセリカちゃんの周りは、真っ昼間並みに明るい。しかし、それはそれで目立つため、セリカちゃんは、「恥ずかしいよ…」と俯いてしまう。
家に入ると、父親が驚き固まる。
父親は、洗礼式から数日が経ち、俺の神託を農業中に聞き、神父に呼び出され、娘が子爵に謁見するという事実があっても、「娘が神に選ばれた勇者というのは間違いじゃないか」と口にしていた。
しかし、娘の頭上で光り輝く俺を見て、何か納得したというか、諦めた様子である。
夕食時も暗いろうそくではなく、光り輝く俺がいるため、昼間のように明るい。
「で、一日に二時間程度、セリカちゃんの修行のために時間が欲しいのだけれど…」
「も、勿論です。煮るなり焼くなり好きにしてください!!」
「お父さん…」
セリカちゃんも呆れている。勿論、こんな美少女に、そんな事するわけがない。しかも内緒だが、セリカちゃんは、残念がら修行しても強くなったりしないのだ。だって元が農婦だし…。
(セリカちゃんを独り占めだぜ!!)
神に選ばれし勇者でも、セリカちゃんは、食事の後片付けをきちんとお手伝いする良い子なのだ。俺はプカプカと浮かび、その後ろ姿を視姦していた。
そして、本物の神である海堂 秀斗なら、次の一手をどうするか…考えてみる。やっぱりアレだよな…。魔素を集め、テーブルの上に、ポコッとピンクのステッキを創り出す。その先端は、大きなハートをくり貫かれ、中に真っ白な翼がパタパタと浮かんでいて、ハートの付け根はリボンで飾られていた。
お手伝いから戻ったセリカちゃんは、その遺物…いや汚物を見て、ギョッとした表情になる。異世界には、ありえないセンスであり、誰もが想像など出来ぬ物である。これを初見で可愛いとは思えないだろう。
「あの…。マナポちゃん、これは?」
「うん? 変身用のステッキだよ? 可愛いでしょ?」
「変身用? どいういうこと?」
翌日は、早朝から地獄の特訓が始まる。
「まずは、ステッキを右手で持ち、天に掲げる!! そしたら、ハートのシャワーが降り注ぎ始めるから、そこでクルッと回転! ダメダメ! 笑顔で回転。回転中にお着替えが発生するからね! 三回回ったら可愛くジャンプ! 着地と同時に前かがみでウィンク!! 最後に、目を閉じながら回って、決めポーズ!!」
半泣きになりながら、必死に耐える忍ぶセリカちゃん。
「やっぱり嫌。こんなの恥ずかしい…」
「セリカちゃん? 昨日言ったよね? 私の所為で傷付く人を見たくないって。あれは嘘だたのかな?」
「ち、違うよ。でも、変身とどういう関係が!?」
「変身できないと、セリカちゃんは弱いままだよ。それでは弱い人を助けられないよ?」
俯きながら、ステッキをプルプルと悔しそうに握る。
(頑張れセリカちゃん。君は美しい…)