第4話
家宰の小男は、部屋に入るなり、テーブルの上に置かれた魔石を見て驚く。
「これは!?」
「うむ。代行者様から街への資金として頂いたものだ。鑑定後、価値が下落しないように、1個単位で、市場に流し、財政の足しにするように財務局へ連絡してくれ」
「おい、娘。その汚い革の袋をよこせ!」
セリカちゃんの手から強引に、革の袋を引っ張りとる。セリカちゃんは、その反動でソファーから落ちてしまった。
(巫山戯るなよ!! セリカちゃんに何してくれてんだ!?)
またも俺の精神状態が、魔素にリンクする。昼間だった外が、一瞬にしてどす黒い雷雲が空を埋め尽くし、真っ暗闇に包まれる。ガタガタガタと大地は揺れ始め、そこかしこと稲妻が地面に突き刺さる。地震の体験などない街の人々は恐怖に泣き叫び、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことだ。
俺は魔素をかき集め、野球ボール程度の大きさの光源となり、再びセリカちゃんの頭上に現れた。
『度重なる創造神シンフォシア様の代弁者への冒涜。これすなわち、神への背信である。下賤な人間どもを、この地より全て排除し清めることで、我が主の怒りは静まるであろう…』
(聖書でも読んでおくべきだったな。神のセリフってわからん…)
「お、お待ちください!!」
それから30分あまり、ヘイツ子爵が平謝りを続けたので、可哀想になり許すことにした。だが、家宰の小男は、許すことが出来ない。こちらは、セリカちゃんのいないところで、罪と罰を決めてくれと言っておいた。
セリカちゃんは、げっそりとして表情で着て来た服に着替えると、子爵の城塞を後にした。
その後、セリカちゃんは、家に帰らず街を流れる川の土手に座り、ぼーっとしていた。
(やべぇな…やりすぎちゃったかな!?)
「こ、こんにちは!! 神の代行者のマナポです!!」
明るく元気に登場してみた。セリカちゃんの前に姿を現すと、驚き戸惑いながらも神の代行者ということで姿勢を正してくれた。俺はセリカちゃんの心を察し、嘘を付くことにする。
「ははっ。先程はごめんね。今、シンフォシア様に怒られて来たところ。それでね、僕は僕の意志で、この世界で力を行使できなくなちゃったんだ」
「どういうこと?」
「先程の大地震も稲妻も僕がやったんだけど。今度からは、セリカちゃんが、魔法の呪文を唱えたときだけ、僕が力を使えるようにって、神様に契約されられちゃった…」
「よかった…。私の所為で、いろんな人が傷付くのを見たくなかったから…」
「うん。凄く反省しています…。だから嫌いにならないで! お願い!!」
プカプカと謝罪のお辞儀をするようにセリカちゃんの目の前で上下した。
「わかってくれるなら良いよ。これからもよろしくね」
プカプカと浮かびならが、すっかり笑顔が戻ったセリカちゃんの後を付いて行くのだった。