第14話
ぶっちゃけ、とんでもねぇぞ。聖女フォームと盗賊フォームは…。
「あの…代行者様? 正気でしょうか? その格好で…セリカ様に戦えと?」
目も当てられぬと、エレリックス隊長は、セリカちゃんから視線を背け俺を見る。
「や、やっぱり…破廉恥なんだ!! 嫌よ!! 恥ずかしいのは、絶対に嫌!!」
セリカちゃんも聖女フォームを脱ぎ捨てようとするが、脱いだら全裸だと気が付き、床に体育座りになる。そして、ハッと我に返り…変身を解いた。
「何を言っている!?
勇者フォームは戦闘特化。聖女フォームは回復特化。盗賊フォームは索敵特化。この三種類のフォームを使い熟せなければ、これから先の戦いで命を落とすことになるんだ。
そもそも変身は10分しか持たないし、再度変身可能になるまで約1分間は、生身のままで戦わなければならないんだぞ!!」
「うっ…。ナマポの意地悪…」
「それに、もしもレイナが傷つき倒れたらどうする? 回復ポーションで治らない傷でも、聖女フォームの回復魔法ならば、治療可能なのだぞ? 苦しむレイナを恥ずかしいからと、放っておくのか!?」
「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿! ナマポの馬鹿! そんなこと出来るわけないじゃない!!」
「ならば、練習あるのみ。さぁ、セリカちゃん。立って。僕にも…もう時間がないんだ…」
「ナマポ…」
一応、シナリオ的には、後数時間で俺は消える予定だ。
「えっと、勇者フォームの天使の羽は、聖女フォームに移植したからね」
「そんなのどうでも良いよ!! 馬鹿!!」
(馬鹿、馬鹿と酷いなセリカちゃんは…。でも、セリカちゃんの脳内にいる魔素から、俺への感謝の気持と、別れたくない悲しい気持ちと、最後まで笑顔でいるという健気な意思が、読み取れたのは嬉しいよ!!)
「ほら、あと何回も出来ないよ。最後に僕を安心させてくれ!!」
セリカちゃんは両手を頭頂部に乗せ、うさぎの耳を真似るすると、前かがみになり腰をくねらせ歌い出す。勿論、変身用ステッキは右手で持ってるぜ!!
「ピョンピョン♪ ルンルン♪ うさぎさん!! モフ☆モフ、フワ☆フワ癒やしの魔素よ!! 尻尾がピコピコ♪ 奇跡をピョコピョコ♪ 弾け飛べ!! 聖女フォーム(バニーガール)!!」
ボフンッという煙のエフェクと共に…変身するセリカちゃん!!
うん…まんまバニーガルに変身したセリカちゃん。ただ…威厳が無いので、背中に天使の羽を浮かせ、頭上のうさ耳の上にも、天使の輪を浮かせておいた。
「セリカ!! 遊びに来たわよ!!」
ドンっと扉が勢い良く開けられる。 エレリックス隊長…お前は、護衛失格だ。
「あわわわわっ…」と口をパクパクさせるセリカちゃん。
「ど、どうしたのその格好は!?」と目玉が飛び出しそうなレイナ。
かなり気まずい雰囲気であり、修羅場が始まりそうだが、そろそろ俺の消える時間が近付いて来た。