第13話
「そ、それで…セリカ。お願いがあるの。洗礼式が済むまではと、断り続けていたのだけれど…。相手方の親族から強い要望があって、一度…ご挨拶に行かなければならないの。そのとき…護衛として一緒に来て欲しいの」
(勇者として公表できない以上、万一のための権力と言うよりも、護衛? いや…護衛としても心許ない…。となると、純粋に心の拠り所として付いてきて欲しいのかな?)
プカプカと浮かぶ俺を、両手で優しく掴み、胸元まで引き寄せるセリカちゃん。
「マナポどうしたら良い? わ、私…一緒に行きたいの」
「護衛ということはだな。また…人を殺める可能性があるんだぞ?」
セリカちゃんの心音が跳ね上がるのがわかる。ここで自分の気力で、一歩踏み出せなければ、強制的な手段を選ぶしか無いのだが。
セリカちゃんの目に決意の炎が宿る。椅子から立ち上がり、「もう…泣き言は言いません。と、友達のレイナ様が、諦めと覚悟の道を示してくださいました。私も…友達として…共に歩めるように頑張りたいです…」と、涙ながらに決意表明をした。
生まれて初めての友達を手に入れたレイナも椅子から飛び上がると、セリカの両手を握りしめ、「ありがとう…」と涙を隠さず喜んでいた。
さて…。美少女ストーカー計画だが。魔素である俺には、前回セリカちゃんを襲った騎士の背後にいる黒幕などわかっている。とある名探偵のように暴くのも面白いが、放っておいてセリカちゃんが追い詰められるのも楽しい。つまりだ。あまりにもチートすぎる俺が近くにいると、ついつい手を貸してしまい物語として、面白みがないのだ。
エレリックス隊長とレイナという心の支えが二人もいるのだ。きっと大丈夫だろう。セリカちゃんがベッドに入ったタイミングで、俺は語り始める。
「セリカちゃん? あのね。俺…セリカちゃんを危険に晒してしまったでしょ。だから神様から…代行者、失格の烙印を押されてね。あと2日で消えなくちゃならなくなったの」
「な、な、何言ってるのマナポ!? いなくなったら…余計に危険じゃない!?」
「大丈夫だよ。代わりの奴は来るし…。それに、あと2つ変身フォームを覚えてもらうから」
俺の構想では、聖女フォームと盗賊フォームの2つを用意している。詠唱のセリフも、中二病系とファンシー系を用意しているし…。あとは、使い魔かな? どんなのにするべきか…。
「それにね。レイナの護衛が終わっるまでに、勇者パーティーの人選も行うから。楽しみにしててね」
「うぅ…。怖い人は嫌だよ」
「う〜ん。それは…一応、希望は言っておくけど、重要なのはセリカちゃんが、一人前の勇者になれるためのメンバーだからね。どんな人が来ても、頑張るんだよ」
「う、うん…」
「それじゃ、明日は、新フォームの練習があるから、早く寝ようか」
「うん。ねぇ。ナマポこっち来て、一緒に寝よう…」
(やべぇ…。セリカちゃんの匂いが!! 少女の温もりが!! 心音が!! 寝られん…)