表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

第11話

 エレリックス隊長が戻ってくるまでの短時間の攻防戦を制したのは、勿論セリカちゃん!!


 返り血を浴びて勇者フォームを真っ赤に染めるセリカちゃんの驚くエレリックス隊長。そんなエレリックス隊長に、野次馬達はセリカちゃんが、騎士に襲われた顛末を語りだす。


「ば、馬鹿な…。騎士団に裏切り者がいただと!?」


「あぁ。勇者フォームになってなかったら、セリカちゃん殺されていたぞ?

 それに…勇者フォームであるが故に精神攻撃耐性を持ち、自分のために殺された護衛の騎士たちの惨状や、人を殺してしまった罪悪感から精神を守られているが、あと5分もすれば変身が解け…強いショックを受けるだろう。

 そのときのフォローを頼むぞ。

 まずは、死体のない涼しい木陰に移動してくれるとありがたい」


 セリカちゃんは、真っ二つにした死体を呆然と見つめ、「悪人殺す、悪人殺す、悪人殺す…」と呟いていた。



 街道を挟んで商人たちが襲われた反対側に移動する。残念ながら木陰はなかったが、セリカちゃんをエレリックス隊長にしっかりと護衛させた状態で、勇者フォームを解除させた。


(勿論、敵意のあるものがいないのは、既に確認済みだが…)


「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!」と叫び出すセリカちゃん。頭を抱え、胃の中のものをリバースする。


(うん。当然の反応だよね。自分が殺されかけ、自分のために護衛が三人も死んで、敵であるが人を真っ二つにして殺したんだもん。7歳の女の子に耐えられるわけがない)


 エレリックス隊長は、セリカちゃんの背中に手を添え、「聞けば、彼は…バーサーカになっていた。君のおかげで、商人や旅人たちの多くの命が守られたんだ」と、優しく諭す。


「もう…嫌…。勇者なんて…私には…無理です…」


 エレリックス隊長に抱きつくセリカちゃんは、わんわんと泣き続けた。


「僕はね。8歳で野うさぎを、15歳で盗賊を殺めた。ココだけの話。僕は戦いどころか、血を見るのも大嫌いなんだよ。

 今でも、何でパン屋の息子にしてくれなかったのかと、騎士に生まれるならもっと強い心を持たせてくれなかったのかと…神様を恨むことが多いね。

 あぁ…。ごめん。ほら、君のような小さな女の子を慰めることも出来ない…こんな俺が騎士団長になるのも運命。君が勇者であるのも運命。

 だから、少しつづ慣れていこうよ。君が勇者という重圧に耐えるそのときまで、僕が側にいるからさ」


(フォローしろと言ったけど、告白しろとは言ってないぞ?)



 ゴブリン討伐は中止になり、アルデンへ帰還するが、問題は何一つ解決していないのだ。


 暗殺者と化した騎士団員の動機や、背後にいるであろう個人または組織の洗い出し。信頼のおけない騎士団に代わる護衛の選定、強襲や毒殺を考慮に入れた勇者の安全の確保。つまりこれは、勇者のみならず、カール・ヘイツ子爵も同様に危険な立場にいると考えられる。


 素性を魔導具や専門の調査部隊により、遠い血縁や交流関係まで徹底的に調査され、呪いなどの洗脳すら見落とさない騎士団で起きた大事件に、現状では打つ手が一つもなかったのだ。


「では、セリカを親族とみなし、城塞で保護するしかあるまい」


 城塞ないの執務室に集められた街の有力な貴族、騎士団長、神殿関係の前で、ヘイツ子爵は結論を述べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ