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プロローグ

 2年前に昇進した父親から、高校は私立の進学校へ行けと言われた。俺の友達が一人残らず私立中学へ進学したことを覚えていたらしく、父親からしたら今まで肩の狭い思いをさせたことへの償いなのかも知れない。そんな気を使わなくても、俺は公立中学で十分楽しんでいたのに。


 私立の進学校では、二年から早くも大学受験モードになるため、必然的に修学旅行は一年の秋だ。修学旅行は初めてづくしとなる。人生初めての海外、人生初めての飛行機、そして、人生初めての墜落事故。






 目を覚ますと、裸に白い布を纏った海堂 秀斗が、優しい笑顔でこっちを見ていた。


「あれ? 確か…」


「うん。飛行機は墜落して太平洋にドボンだ」


「しかし、よく俺たち生きてたな」


「うん? 駿は死んでるよ?」


「へ?」


 冷静に辺りを見渡すと、何もない真っ白い空間に秀斗は浮かんでいた。

 

 俺は?

 

 自分の体を確認するが、そこにあるはずの手も、足も、何もなかった。

 

「な、なんで、秀斗は生きてるんだよ」


「よくぞ聞いてくれた! というか見た目通り神なんだよ!? どうだ? 驚いたか? ちょっと長めに有給休暇が取得できたもんでね。人間の学校に通ってみたんだ」


 ふんぞり返る、何の根拠もない秀斗の言葉は、何故か、何の疑いようもなく信じられた…。


 これが神の力?


「で、他の奴らは?」


「全然、話が進まないから、説明を端折って良い? 人間界に行く時にね。本当に偶然!! 気まぐれでチラシの輪廻転生クーポンを1枚だけ千切って持って来てたの。それで駿を異世界転生させようと思うの? どう?」


 他の友達だって心配だろ!? でも、こいつ…。あれだけの人数の中から、俺を選んでくれたのか!?


 くそっ! ちょっと、嬉しいじゃないか!!


「どうって…。つまり、勇者パーティーから追い出されたけどチート能力で下克上とか、スローライフだけど現代技術で俺すげーとか?」


「まぁ、そんな感じだけど…。そんなありきたりじゃつまらないでしょ? だからさ、温めていたプランを駿に試してもらいたいの!!」


「嫌な予感しかしねーけど?」


「ずばり!! 魔素に転生だ!! 世界中の魔素がお前だ!! 大体、ほら、今の駿と同じ感じ…」


「いや、意味がわかんねーよ。体ないじゃないか!? てか、それって不老不死じゃね? 不老不死てさ、最終的には、精神病んでBAD ENDじゃね?」


 だから、体がないと冒険も、ハーレムも、チートもできないだろ!?


「問題ない。ほら、俺も不老不死だし、俺と同じ幼稚な精神年齢の駿なら問題ないだろう? もう…話が長くなるから先に行くぞ!!


 駿のパソコンにあった高校入試必勝フォルダの中にさ。ロリ画像と黒歴史自作小説があったじゃん? つまり中二病でロリ好きの駿が、魔素になって、少女に付きまとうのはどうよ?」


 ほぼ毎日、家に遊びに来ていたからな…。”Da1suKiO2Chan”というログイン時のパスワードも、いつの間にか見られていたのか…。いや、問題はそこじゃない!?


「待て! 待て! 待て! いや、そこまで知ってるなら…もう今更だよな? もういいよ。そうだよ! ぶっちゃけるよ、俺はロリコンの変態だよ。だから具体的に説明プリーズ!!」


「素直でよろしい。例えば、少女の前に現れて、『貴方は神に選ばれました。私は神の使いです』みたいなのはどうかな?」


「逃げられたり、断られたら、どーするんだよ??」


 当たり前だが、事案発生間違いなしの現代日本でも、女の子に話しかけたこと無いんだぞ?


 敷居が高い、高すぎる!!


「馬鹿か駿は? 世界を構成する魔素で、世界中に満ち溢れているんだぞ? 逃げられるわけがない!!」


「つまり? パーフェクト・ストーカか!?」


「Yes! それにほら、駿自体が魔素でチートだから、女の子を好き放題強化できるし、魔法プッパで助けられるし!! 何でもやりたい放題でじゃん? それに駿にとって、ど真ん中ストレートな美少女も見つけているからさ見るだけ見てみてよ。 嫌われても別の少女見つければいいしさ」


 やべぇ。美少女ちゃんと、冒険ウキウキライフを想像したら、オラ、ワクワクしてきたぞ!!


「あぁ…。夢が広がるな。魔法は中二病的な詠唱させるか!?」


「それ、良いな!! 漆黒の翼よ…紅蓮の炎を纏いし…みたいな?」


「うんうん、眼帯と包帯も必須だな!」


 何もない空間にチャイムが鳴り、夕焼小焼が流れる…。


「あっ、定時だ。帰らねば…。最近さ、働き方改革とかで煩いんだよ…」


「おい、待てよ!!」


 白い空間が崩壊してく。秀斗は、何とも寂しそうな顔で、手を振っている。


「駿、お前は、最初で最後の友達だ…。今まで…ありがとう!!」


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