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第1話 ここはどこだ

 俺は死んだのか?


 先ほど、トラックに轢かれた自分だが、何故か意識がはっきりしている。

 体にもしっかりと感覚が残っているし、体もちゃんと動かせる。

 着ている服だって確かに赤色に染まっていたはずなのに、今は血などついてなく、俺が二年間愛用している、グレーのスウェットそのものだ。

 あれは夢だったのか、そう思えるくらい自分の状態に関しては一切変わってない。


 本当はそうだこれは夢なんだと開き直って二度寝でもしたいが、わかっている。今はそれができる状況ではない。

 先ほどと明らかに違うことが一つあるから。


「ここはどこ」


 まるで、記憶喪失の人間が二言目にいうようなセリフを気づけば無意識に呟いていた。

 そう、今自分のいる場所が数分前にいた場所と明らかに違っている。

 ついさっきまでは、確かに通い慣れたあの暗い夜道を歩いていた。

 それなのに、今は太陽が出ていて、めちゃくちゃ明るい。

 街並みに関しても、俺が住んでいた中途半端な田舎と違ってビルなどの高層の建築物があちらこちらに並んでいる。


 変化したのは街だけではなかった。

 先ほどまでは、周りには人っ子一人いず死んだように静かだった場所が、今は多くの人で溢れかえり喧騒とした雰囲気になっている。

 それに、彼らは自分が知っているような日本人とは少しだけ違った特徴があった。

 なんという多くの人が奇抜な格好をしている。

 蛍光色のような明るい色をしているワンピースだったり、下は短パンで、上は異常に厚着などという気温のわからない謎の格好、終いには、派手なマントをつけていたりといった、これまでの世界ではあまり見たことのないような服装をしている人が散見される。

 服だけでなく髪の色に関しても、黒、茶、金、赤など、虹が簡単にできてしまうくらい個性豊かな色が並んでいる。

 例え、今はパリコレのショーの真っ最中なんだと言われても信じてしまうような、自分にとっては非日常な光景である。


 そんな少し独特のファッションに身を包んでいる人たちを目の当たりにしても、一つだけ 僥倖があった。

 彼らの容姿は、自分がこれまで住んでいた世界の人たちと同じだったということだ。


 (大都会にワープしたのか)

 そう思っていた矢先、ふと空を見上げるとそれを否定するような明らかに非科学的なことが起きていた。


「___人が空を飛んでる...」

 どうやら人は信じられないものを見ると、口を無意識にポカーンと開けてしまうらしい。


 多くの人が車ほどのスピードで空を飛んでいる。

 しかも、魔法世界でありがちな箒などの道具を使ってなどではなく、ドラゴン○ールの世界のように人がまるで歩くかのように簡単に飛んでいやがる。


 本当にここは何なんだ...

 一体、今自分がいる場所はどこなんだ...


 明らかに自分が生きてきたところと世界の理が違う。

 困惑、恐怖、焦燥といった多くの感情が次々と自分の中から溢れ出していることしか今理解できていない。


(今後どうすればいいのか。)

 俺はニート時代には考えることを避けていた、将来のことに対しての一抹の不安を感じている。


 そんなことを思っていた矢先、ドンと音を立てながら、何かにぶつかって俺は地面に尻餅をついていた。


「イテテ...」


 今度はなんなんだと思い、直ぐさまぶつかったものに視線を向けると、16歳くらいの少女が自分と同じように倒れていた。

 しかも、ただの少女ではなく黒髪のショートに、大きな瞳、更に白雪姫のような真っ白な肌。

 誰がどう見ても美少女と呼べるような女の子であった。


「大丈夫、お兄さん。」


 俺はあまりの可愛さにその美少女に見惚れいている最中、その子が少し息を切らしながら、話かけてきた。

 どうやら、言葉に関しては聞き取れるらしい。そう安心していた束の間、彼女が続けて話し出した。

「これから、アヤのライブがあってさ、すっかり寝坊をしちゃったから、急いでたんだ。ぶつかっちゃてごめんね。痛くなかった?」


 女の子は、軽くお辞儀をしながら自分に謝罪をしてきた。


「__大丈夫です。」


 正直まあまあ痛かったが、ここは社会人経験もある大人の対応をと思いスマートな返事を心がけた。

 だが、少し簡素すぎたかな...

 こんな返答をしたのにはもちろん大人な対応を心がけた以外にも理由がある。

 そもそも女の子と話すのが久々すぎた。さらにこんな可愛い女の子と話すとなると一体いつぶりだと思うほど、遠い過去になる。というか初めてなのかもしれない。

 そう、一言で言えば自分は緊張していた。

 こんなことになるなら、死ぬ前にもっと女の子と話していおけばよかった...


「ふーん、よかった。ところでさ、お兄さんなんでそんなダサい格好してんの?」


 突然自分の格好に触れられ、ドキッとしてしまった。

 自分のこのスウェット姿はどこからどうみても、ダサい。

 こんな格好でここにいるのは顔から火が出るくらい恥ずかしい。


「__まあ、別にいいじゃん」


 少しの間をおきながら誤魔化すように返答をした。

 核心をつかれたものだから、声が震えたりしてないか、不安だ。


「ふーん、そっか。ところでさ、お兄さん今暇?」


 そんな器の小さいことを考えている中、女の子は自分に新たなことを聞いてきた。


(???)


 突然の問いに、この男田村佑人の脳内はパニックになっていた。


 なんなんだこの子は。

 会って間もない自分に対して今時間があるかと突然尋ねてきたぞ。

 モテない俺はついにこんな幻覚を見始めたのか。

 それとも、これは新手の詐欺なのか。

 そもそも、なんでこんなに俺に話しかけてくるんだ。

 

 いつの間にか彼の中では様々な考えが飛び交い、先ほどと違った、焦りを感じている。


(一つ言えるのはこれは逆ナンといったものではない)


 パニックになる中、彼はこれだけは確信していた。


 そもそも、容姿も中の中、今の服装だってスウェット姿で明らかにダサい。

 そんな自分が逆ナンてされるはずがない。

 ここで今仮にイエスと答えたら、後々怖いお兄さんとかが出てきた痛い目を見るやつだ。

 それに、自分が今どこにいるかわからないそんな究極の状況の中でこの子に付き合ってられる余裕なんてあるか。

 賢明な自分は彼女の問いに答えようとした時


「ねえ、お兄さん結局暇なの?」


「はい、暇です!」


 彼女の同じ投げかけに対して、自分は即座に返答をしていた。

 そういえば、自分は欲に忠実で愚かな人間だということを忘れていた。

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