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再度ネイチャー・キャッスルへ

「今回も冷やかしかと思いましたよ」

 太った運転手が笑顔で話しかけてくる。レイは『国語』を勉強中のようだ。十二単を着た女の人たちが、わかりにくい言葉で話している。所々、聞いたことのある単語が出てくるが、ケンにはお経にしか聞こえなかった。リュウは眠り、マナは十二単の美しさに目を奪われているようだった。

「何度も呼ばれては、無視されるのですから、たまったものではないですよ」

 運転手は一人で喋っているので、助手席のケンはふと尋ねた。

「いつも駅前のロータリーにいるの」

「正確に言えばロータリーのカーブミラーの中、ですが」

「どっちでもいいじゃん」

「よくないですよ、正確でないとお客様に迷惑がかかりますから」

「よく駅前には行くけど、見たことないよ」

「それは『見たことがない』ではなく、『見なかった』のです。人は自分に興味のあるものしか見ませんからね」

「なぜミラーの中にいるの?」

「駐車違反になるからですよ。それに人は見たいものを見るから、私に要がある人だけが私を見つけます。そうでない人はいないも同然ですから、見えなくていいのです。あなただって、夢や本を見るときには、ヒーローになるでしょう。いつだってヒーローなのに、なぜか現実ではそうではないものになろうとする。不思議な人たちだ」

 運転手は人ごとのように言った。自分だって人のくせに、ケンは心の中でそう思った。


 タクシーは昨日と同じ道を走り、大きな城の入口で停まった。4人を降ろして、マナの持っていたチケットを受け取ると、どこかへ行ってしまった。

 城の前にある大きな門は開いたままになっており、門番もいない。入口の近くに受付のような、小さな小屋があったので、4人は近寄ってみた。小屋の窓は下が空いており、チケット売り場のようだ。もしかしたら入場料がかかるのでは、そんな心配をしながら、ケンは料金表を探した。

「何名様ですか」

 急に窓の奥から声が聞こえた。機械のような、情のこもっていない声だった。

「すみません、子供は一人いくらですか」

 ケンはとっさに尋ねながら中を覗き込んだが、誰もいないようだった。それでも何度となく「何人ですか」と声が聞こえてくる。仕方がないので「四人です」と答えると、窓の隙間から4枚の地図が落ちてきた。落ちた地図をレイが拾い、再度、窓を覗き込むと、うっすらと人の輪郭が見える。その姿を確認しようとしたが、濃くなったり薄くなったりで、よく見えない。ただ声だけはしっかりと聞こえてくる。

「それがネイチャー・キャッスルの地図です。この出入口をよく確認して、決して自分を見失わないように」

 「自分を見失わないように」とは初めて聞く注意事項だが、それがどう言う意味を指すのか、この時4人にはまだ理解できていなかった。



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