表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/47

7.従者スキル

 お嬢様の従者になって6日。


 お嬢様が気持ち悪い。


 気持ち悪いと指摘しても良いものか悩み中だが、1つだけ分っていることはある。気持ち悪いと率直に言ってはいけないということだ。


昔、孤児院で女子達がお互いに太ったかもと言いあっているところに通りがかった際に問われて同意したら、スゴイ目で睨まれたことがある。女子達には異性が言ってはいけない禁句があることを知った。ちなみに、その日の夕飯は具のないスープだった。食事係に逆らってはいけないことも学んだ。


 何か面倒な指示の前振かと緊張してしまい、朝のお茶を淹れる手が強張っている。前振りとか誰の得にもならないので、サッサと言って欲しい。


「今日のお茶は、、、少し渋いけれど、逆に目が覚めたわ。ありがとう。」


 お説教かと思いきや感謝の言葉を頂きました。


 呆気にとられつつ授業に向かうと、視線を向けられても何の感慨もないと言わんばかりに普通に逸らされた。順応早すぎませんかと突っ込みたい。貴族様の従者になったからと、ど平民が染みついた身には無理ですが。


 周囲の態度は気になるものの、今日はそれ以上に気にしなければならないことがある。今日は魔法理論の授業があるのだ。何が楽しいのか、毎回答えを聞く気もないのにロキに問題を出しては嫌味を言ってくるハゲの授業である。

 レオハルト様曰く、従者のデキも主人の、ひいては家の評価に繋がるという。つまり、ハゲへの対応を間違えるとお説教ということだ。取り敢えず、サイラス様に頂いた魔法理論の問題集なるものは問題なく解けた。その調子で、ハゲが問題を出してきたら、タイミング良く回答を話しの合間に滑り込ませなければならない。滑り込ませるというところが重要だ。周囲にハゲの言葉を遮ったと思わせてはならない。何故なら従者は本来、周囲に溶け込み、目立ってはならないからだ。壁と、空気と一体化できて初めて、従者と呼べるのだとサイラス様は仰っていたからだ。


 談話室でお会いしたサイラス様は全然溶け込んでいなかったなどと考えてはいけない。学年上位で溶け込めるわけがないんじゃ?などと邪推してはいけない。ユリシス様なんか、主人のイーサン様を差し置いて首席とか、目立ちまくりじゃねぇか!とか突っ込んでもいけないのだ。


 何でも屋の親仁が言っていた。


「先達の言葉ってのは、矛盾があっても聞いとくもんだ。そこには必ず、どっかに少しは真実ってのが含まれてるもんだ。」


 だから、ハゲへの回答は素早く、角が立たないようなタイミングで完璧に行い、誰の心象にも残らないくらい目立たないようにしなければならないのだ。






 無理でした。

 当然だよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ