5.面倒見がいいお貴族様
お嬢様の従者になって4日目。
早速、レオハルト様がお嬢様に手紙を認めて下さり、今日からお嬢様が寮に戻れば自由時間、、、とはならず、レオハルト様の部屋に行くことになってしまった。
「そういやお前、何年なの?」
「1年生です。」
「1個下かぁ。まぁ、歳は3つ違うけど、お前、ちっさいなぁ。」
「この街の平民は、お前くらいの体格のものが多いのか?」
昨日の自分に教えてやりたい。その感動はちょっと保留にしとけ、と。まともに見えて、やっぱり変な気がしなくもない。お嬢様のおかげで、基準が変になってる気がする。
「いえ、私は小柄な部類なので。普通は、サイラス様を少し細身か、逆に逞しいかというくらいでしょうか。」
孤児だと結構小柄な人間が多いが、孤児自体が街全体で見れば少数派だ。
「貴族の方やその従者の方は、意外としっかりした体格の方が多いですよね。」
「そりゃ、一応、剣術とか一通り教養として叩き込まれるからな。だからこの学園の人間で護衛が付いてるヤツは少ないだろう?」
「ちなみに、女性陣も本人が基本的に自衛ができる程度の魔法技術を持っているか、侍女が護衛としての能力を有しているか、だな。アストレア嬢などは「自分の身くらい、自分で守れますわ。学園の理念は、自助努力ですのよ。」とか言いそうだな。」
似たよつな台詞を聞いたことがあります。自信満々に仁王立ちしている姿が容易に想像できる。
レオハルト様の裏声に噴き出すのを我慢していると、サイラス様まで真似をし始めた。
「「これぐらい、アレース家の者であれば、当然です!」」
「仁王立ちしている姿が容易に想像できるな。」
「ですよねぇ。というわけで、ロキ。従者教育もだけど、勉強の方はどんななの?」
「どんななの?って、どういう意味ですか??」なんて聞き返ししても良いものか。
「我々貴族は家の名を背負ってココにいる。もちろん使用人の監督責任も負っている。何が言いたいか解るか?」
「私にもそれなりの成績を求められる、ということでしょうか。」
計らずも、当初の質問の答えをもらえる気がする。やっぱり、貴族にも良い人っているのかもしれない。いや、別にご主人様方が悪い人ってわけではないのだが、如何せん、権力による圧力というのは良い感情を抱きにくくする。
「今年の1年にウチの派閥の男児はいないからな。首席とは言わないが、10位には入るように求められるだろうな。まぁ、アストレア嬢よりも順位が低ければ、何位だろうとアストレア嬢からは説教があるだろうがな。」
「ちなみに、サイラス様は?」
「総合だと2位か3位だな。ちなみに、レオハルト様が首席だ。」
「まぁ、私にとってはほぼほぼ復習だからな。ちなみに、イーサンのところは、ユリシスの方が総合成績が良い。まぁ、武術や戦術等はイーサンの独壇場だが。」
先日、お嬢様が魔術を教えようとしてくださった理由が見えてきた。ど平民と貴族寄りの平民との常識差があり過ぎる。ど平民に戻りたい。
「ちなみに、ウチの派閥以外の従者でユリシスみたいなことをするヤツはいない。やったら周りから袋叩きだな。」
知ってる常識が出てきた。つまり、レオハルト様達もまた、貴族階級では変人ということか。類は友を呼ぶってヤツなのか、朱に交わればというヤツなのか、、、やっぱりど平民に戻りたい。
「まぁ、試験の頃には、お前がウチの派閥だってことは周知されているだろうから、ソレはないだろうけどな。」
「従者教育の件はそれとなく噂を流し始めたところだから、お前にオルクス家の庇護まであると知る者は、半数に達するかといったところだろうが、アストレア様の従者であることは既にかなり噂になってるようだからな。」
「で、勉強も見る必要はあるか?」
「試験というのを受けたことがないので、、、まぁ、教科書の内容であれば覚えてはいますが。。。」
「ふむ。サイラス、いくつか問題集でも見繕ってやれ。成績があまり良くなくても問題ではないが、流石に何もしないのはかわいそうな気もする。アストレア嬢の説教は長いからな。」
レオハルト様もお嬢様に説教されたことがあるのか、説教している姿を見たことがあるのか。あの長さを知っているということは前者な気がする。ご愁傷様です。