44. 将来の悩み
今日から学院の講義が再開します。
3ヶ月間、侯爵家で先輩侍従に付いて勉強したお陰で出だしは良い感じです。お茶もしっかり淹れ方を教わってきたので、お嬢様にも満足いただけたようです。
「前期の試験では特に問題もなかったから、後期は基本、必須科目だけよね。ロキはどうなの?」
「侍従は常に一緒に行動を、とのことなので、同じ科目だけにしようかと。」
「別にそんなことは気にしなくて良いわ。好きな科目を選びなさい。お茶会だって、侍従は必須じゃないし、ペルシア様達がいらっしゃるし。」
相変わらずお嬢様は難しい。
執事長の指示とは違うことを言ってくる。
「そもそも貴方、将来はどうなりたいの?」
「んー、どうなりたいんでしょうか。」
そもそも学院への入学自体が想定外だったのに、さらに侯爵家の侍従になるなんて想像の埒外だ。
「お嬢様はどうされるのですか?」
希望すれば侍従を続けても良いし、はたまた別の家や職にもに紹介してくださると執事長に言質はとってあるが、肝心のお嬢様がいつまで学院にいるつもりなのかがさっぱりだったので、王都ではそこで考えることをやめた。
「、、、まだ決めてないわ。」
貴族の子女は早ければ16歳から結婚しだすが、適齢期は18歳から22歳らしい。お嬢様も来年ぐらいから本格的に話が来だすだろうと言われている。
特にお嬢様は侯爵家の継嗣でもいらっしゃるので、引く手あまただと聞いている。まぁ、お嬢様が誰かの隣で楚々と過ごす姿など全く想像できないが。
「私の進退関係なく、なにかやりたいことなどないの?最初は冒険者かと思っていたけど」
ロキの冒険者等級はD級と、素人に毛が生えた程度だ。冒険者として独り立ちするならC級にはならないとその日暮らしの稼ぎにしかならない。
冬期休暇の冒険者生活で、お嬢様も庶民の相場を知ったのだろう。
「まぁ、庶民は今の等級でもなんとかやりくりできるんですけど、学院を出ると職の幅も広がるらしいので、いろいろ調べてはみようかとは思っています。」
お嬢様と四六時中一緒にいた幼馴染みなど、婿になる人にとってはあまり面白くない存在だろう。卒業後はできるだけ関わりのない職に就くのが良い気がしている。
お嬢様が水を向けたのに、心なし表情が暗い気がする。半年も経っていないのに、かなり気を許してくださっているし、離れると寂しいとでも思ってくれているのかもしれない。
「そうなのね。じゃあ、調べものも増えるわよね。図書館に行くときは一緒に行っても良いかしら。私もどんな職があるのか知りたいし。」
「もちろんです。一緒に探してみましょう。」
リシアに揶揄われて気付いたけれど、自分もすっかりお嬢様に気を許していたらしい。「勝手にして良い」と言われてどことなく苦しかった胸が、「一緒に」という言葉で軽くなる。
お嬢様と距離をおくとなればはもちろん、 レオハルト様やイーサン様とも会うことはなくなるのだろう。
王都でも思ったが、誰かと一緒に過ごすというのはこんなにも感情が忙しいものなんだな。




