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43. リシア

 リシアがロキと会ったのは孤児院が火事で焼け落ちた直後だった。

 併設されていた神殿も火災に巻き込まれ、孤児も見習い神官や巫女と一緒に着の身着のまま近くの空き地から日に巻かれる建物を眺めていた。

 年長者は皆逃げ遅れ、当時まだ15歳だったリシアでさえ年長の部類だった。年長の神官見習いが領主の慈悲を請いに行っている間、リシアは見習い巫女と一緒に逃げ延びた孤児の世話をした。ロキはまだ幼かったが、薬草や小さなうさぎや鳥を捕まえてきてくれた。


「もうあれから3年かぁ。早いねぇ。」


 隣に立つロキの身長は出会った頃とそこまで変わった気はしない。リシアの身長が伸びた分、小さくなったようにさえ感じる。しかし、そのさらに向こうに立つレオやイーサンといった冒険者と並んで話す姿に幼さは感じない。

 数ヶ月前から仕えることになったというアストレアと並べば、ちゃんと良家の従者に見えてくるから不思議だ。


「いきなりどうしたの?」


 しみじみしたリシアの言葉に訝しむロキは、学院に入る前と変わらない。昔の誰に対しても警戒心いっぱいのロキはどこにもいない。


「昔はトゲトゲして誰とも話そうとしなかったのに、学院に行って半年も経たないのにこんなに普通に話せる人ができたんだなぁって。丸くなったなぁって。」


「トゲトゲ、、、そんなに不機嫌な子どもだったの?」


「そうなんですよー。この子ったら、怪我をしても誰にも言ってくれないし、触るな!って威嚇しまくって、野生の小動物みたいだったんですよー。」


 リシアとロキの会話が気になったのか、アストレアがリシアに話しかけてきた。ロキを横目にソワソワしてモジモジしているアストレアの反応に、リシアは内心楽しくてしかたなかった。恋の話はいつでも大歓迎だ。過去を暴露されて渋面になるロキもかわいい。


「そうだよな。何でも屋で見るロキもそんな感じだった。」


 レオの言葉に、リシアは当時を思い返す。

 再開した孤児院は今ほど余裕はなく、ロキは毎日のように外に出て食材を持って帰ってきてくれた。

 実はその内の草花を花束にして売っていた時に、リシアはレオを見かけたことがある。年配の冒険者が主なプラトンで、時折見かけるレオやイーサンは町娘の憧れの的だったのだ。冬のはじめにロキと一緒に雪かきをしにレオが来たときは、ドキドキしているのがバレないかヒヤヒヤしたものだ。


「なのに、1人で町の外に出ては薬草やうさぎなんかを捕まえてきて、食糧庫にコッソリ入れておいてくれるんです。」


 ロキが森の方へ向かったのを良いことに、リシアはロキと交友を深めているらしいレオやアストレアに昔ばなしを続ける。


 孤児院では誰とも深い仲になろうとはしなかったロキ。リシアも他の孤児院のみんなも、ずっと心配していた。


「昔は今よりもっと機微に疎くて、自分が心配されていることさえ不思議がっていました。そんなロキがお友達を連れて帰ってくるなんて、お友達ができたことはもちろん、孤児院を帰る場所として認識してくれていたことがすごく嬉しくて。。。」


「休暇の際、ロキは真っ先に孤児院に向かおうとしていました。きっと、貴女方の真心がロキの心に響いていたのでしょう。」


「すみません、なんだかしんみりさせてしまいましたね。ところで、学院でのロキはどんな様子ですか?」


 リシアには学院の内情はよくわからないが、教師をやりこめている辺り勉強には問題なくついていけているようで安心した。

 孤児院では文字と簡単な算術くらいしか教えられないので、いきなり高等教育機関に入ることになって、みんなで心配していたのだ。特に神官や巫女は魔術が苦手な者が多く、必然的に子ども達には魔術のマの字も教わる機会はなかった。


 少し早い巣立ちを温かく見守ろうとアストレアが教えてくれる学院でのロキを想った。

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