42. 脳筋しかいない件
流石にA級2人とB級3人、駆け出しのD級とE級、計7人の大所帯でプラトン郊外に出ると、ちょっと魔物がかわいそうなくらいに過剰戦力だった。
「ホントに氷竜の住処辺りまで行くか?」
暇過ぎて変なコトを言い出す人まで出てきたぞ。竜種って、魔物の中でも最強と呼ばれる種族なんですけど。
「でも、氷竜って亜竜でしょう?それより、せっかくレオハルト様も一緒なのですし戦術級の魔術を試し撃ちしたいんですけど。半年以上大人しくしてたから、少し発散したいですし。」
脳筋No.2がさらに変なコトを言い出した。ちなみに、その身長より大きな戦斧はドコから出てきたんでしょうか。町娘的な服装との違和感が半端ないんですが。
「オフィーリア様は派手にぶちかますのが好きですものね。私もできるならやってみたいですわ。」
「ペルシア様だってお兄様かレオハルト様に手伝ってもらえば、撃てるんじゃなしら。」
脳筋No.3が嬉々として頷いている。
戦術級魔術って、小さい規模でも10人くらい上級魔術士が必要な一騎当千ならぬ一発当千の地形さえ変えられる魔術ですよね。
「ヴェスタ家は論外だけど、なんだかんだパレス家もヤバいよなぁ。」
サイラス様と2人、脳筋な皆様を傍観しています。ユリシス様は随行拒否だそうです。
相変わらず自由な従者だな。
「常に笑顔な方も怖いって知りました。」
確実にサイラス様が一番の常識人だと思います。侍女さん達の世界もなんだかんだ怖いし。
「聞いた。マジで外見詐欺だよな、あの2人。」
外見で判断してはいけないと重々理解しました。
サイラス様と話している間に、視線の先では手応えのない魔物に飽きてこられた女性陣が、レオハルト様とイーサン様になんか上級魔術の本に書いてあった魔術を詠唱しだしてるんですが。
「まぁ、授業が始まる前にしっかり鬱憤晴らしてもらっておいた方が平和かもなぁ。」
「いや、三人がかりで詠唱してますけど、あれ、戦術級魔術ですよね?」
「お、よく知ってるなぁ。まぁ、戦術級魔術だけど、初歩の初歩だし、大丈夫、大丈夫。ほぼS級ってぶっちゃけ化け物だから。」
冒険者の等級はS、A、B、C、D、E、Fの7段階に分けられており、等級目安はそのまま単独討伐が可能な魔物の等級を表している。
魔物の等級は弱い順にD、C、B、A、S、SSであり、D級以上の冒険者が単独で魔物を狩ることができるという感じだ。
つまり、先ほどから話題に出てくる氷竜がA級なので、レオハルト様やイーサン様は氷竜も単独討伐できてしまう実力をお持ちだということになる。
ちなみに、魔物の強さの基準は都市を防衛する王国軍の強さを基準にされている。
D級は小さな村の狩人や警備兵でも狩れる強さだが、C級以上は場合によっては村が壊滅するレベル。A級は地方都市壊滅レベルである。
「さすが1人で師団規模の軍隊を相手取れるだけありますね。」
「上級貴族は魔力量が多いから、ほとんどA級くらいの力はあるんだよなぁ。実戦で使えるかは別として。」
その割に魔術学院の実技内容はしょぼい。だって、マッチサイズの火が灯せれば試験合格だもの。
「城でふんぞり返ってるのが仕事って貴族、多いからなぁ。まぁ、のんびりで良いから戦術級魔術を使えれば、領主としては合格だもんなぁ。」
遠くの脳筋達を憧れの眼で見つめている脳筋候補であるお嬢様には是非城でふんぞり返る方向で育ってほしいが、はたしてお嬢様の嫁入り先はどちらを求めるのだろうか。一般的には確実に前者だが、最近出会う貴族は基本脳筋しかいない。本当に城でふんぞり返る貴族が主流なんですよね。
「ロキはD級だと言ってましたが、魔物狩りにはいかなかったのですか?」
「俺は基本、薬草採取が主でしたね。死にたくはなかったですし。」
薬草の種類によっては大型の魔物と同等の買取価格になるのに、なぜあえて危険を冒す必要があるのか。
何故かお嬢様が衝撃を受けている。
お嬢様の中では脳筋が普通なのだろう。こっちとしては、そっちの方が衝撃ですが。




