41.何故、背が伸びないのか
あと一週間で、長かった冬季休暇も終わりを迎える。
王都はすっかり春めいているが、北部にあるプラトンはまだまだ残雪が残っているだろう。
「プラトンでは風花は見れるかしら。」
「プラトンで風花が見れるのはあと一月は先かと思います。それより、最後の大雪が一度はあるかと。」
「そうなの?冬用のドレスを新調すべきだったかしら。」
3か月の冬期休暇ですっかり女性らしくなったお嬢様は、見上げるほどに背も伸びていた。晴れた日に舞う雪とお嬢様はきっと1枚の絵画のようだろう。
お嬢様と、プラトンに戻ったら冬用のドレスを買いに行く約束をしながらレオハルト様達を待つ。
今日はみんなで学院に戻る日で、行きと同じく、レオハルト様の馬車で転移装置を使うことになっている。
「一週間あることだし、氷竜を狩りに行ってはダメかしら?」
「ダメです。」
狩りに行くという時点で、箱入りお嬢様の発想ではない。勘弁して欲しい。流石に今回は家庭教師さんとお針子さんと侍女さん達に自分まで説教されてしまう。
そもそも何故最強種と名高い竜なのか。
「氷竜、見てみたい。雪うさぎも見たい。」
落差激しいな。
「咲見草が見たい。氷精、見たい。見たいー!」
「私も見たーい!」
「私も見たいですわー!」
いつの間にか、オフィーリア様やペルシア様達も着いていたらしい。
脳筋お嬢様達め。
「孤児院の子供達と一緒に出掛けるか。奉仕活動の一環であれば、家庭教師達にも言い訳が立つだろう。」
レオハルト様の一言で、イーサン様やオフィーリア様達と遠出をすることになった。日程は授業が再開する一週間後まで。つまり、複数日。もしかして、初めから遠出するために一週間前に帰ろうとしたんじゃないだろうか。
「オルクス家の元は、辿ると狂竜狩りだからか、基本的に思考が脳筋なんだよな。」
「今の竜狩りの対象は低級の亜竜ですが、当時は伝説級の龍とかですからね。年季も程度も違いますよね。」
今回はサイラス様とユリシス様に乗馬を教えてもらいがてら帰ることになっていた。2人は護衛らしく腰に剣を差しているが、実は格好だけなのはここだけの話である。ユリシス様は完全無欠の運動音痴なのだ。
そもそも、馬車内にいる人達に護衛がいるのか問題。
「んー、まだ馬よりポニーじゃないと厳しいか?」
たった3ヶ月でニョキニョキ身長が伸びた皆さんが異常なだけであって、年相応よりちょっと小さいだけなのに。
「取り敢えず、馬の揺れと高さに慣れるためにオレの前に乗っとけ。」
「後ろじゃなくて良いんですか?」
「襲う気概があるなら、こんななよっちいヤツ2人の護衛なんて無意味だろ。後ろの方が危ないから、前に座っとけ。なんか、コイツ、今日落ち着きないし。」
「襲われたら、我先にと倒してくださるので大丈夫ですよ。一応、矢避けの術は掛けときますね。」
完全に護衛が形骸化してるな。
逆に襲ってくれた方が治安も良くなるし、運動にもなるし一石二鳥だとか誰か言い出しそう。




