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40.春はまだ遠く

 冬季休暇21日目。

 お嬢様がおかしい。というか、侯爵様も執事長もおかしい。

 なんなら、侍女さん達も侍従さん達もおかしい。


「なんかあったんですか?皆さん、すごく変な顔してますけど。」


 唯一変わらない厩番の爺さんのところに来たのは、久しぶりに手伝うためであって、逃げてきたわけではない。

 なんならさっさとイーサン様のところに行っても良かったけれど、流石にお世話になっているお屋敷の状況は把握しておきたい。


「春が来たってことじゃないか?」


 「いや、まだ真冬ですけど。」


 まだまだ雪のため、どこの街もほぼ街道は閉鎖されている。首都はプラトンより南にある上に山脈からも遠いため、比較的春の訪れは早いと聞くが、流石にまだ街道が開通したという話は聞かない。冬季休暇はまだまだたっぷり残っている。


「首都は他より暖かくなるのが早いって言いますし、雪も少ないなと思いますけどなと流石に気が早過ぎじゃないですか?」


「ワシもそう思うが、まぁ、侯爵家の方々は春がお好きじゃからなぁ。」


 これから雪が深まる季節なのに、気が早過ぎるにもほどがあると思います。


 厩番の爺さんと別れて冒険者組合へ赴くと、レオハルト様がいらっしゃった。


「首都だと、もう春な頃合いなんですか?」


「プラトンに比べると寒さくないとは思うが、暦的にもまだ2ヶ月は先だぞ。」


 ですよね。知ってます。


「侯爵家の方々が春が来たとソワソワされてたので、首都の慣習的なものかと思いまして。」


 なるほど、爺さんの勘違いということか。まだかくしゃくとしていると感じていたけれど、少し呆けが入り始めているのかもしれない。


「ほう。現状一番春から遠いと思っていたが、意外だったな。」


「となると、春が遠いのは、ウチのだけか。」


「女性陣だと、そうか。」


「いや。男女関係なくだな。」


 レオハルト様とイーサン様の会話で流石に察しました。お嬢様が恋愛と言われてもなんら実感は湧きませんが、他の皆様も全くイメージができません。

 お会いして間もないですが、皆さんは恋愛以外の何かに夢中でいらっしゃる印象を受けます。


「は?いやいや、ティグリスとトレアはないだろ。考古学以外に目を向けるとは思えんが。そもそも、俺も別に。。。」


「アイツラの初恋は5歳くらいだぞ。お前は、、、思い染めて、かれこれ3年か?誰かはなんとなく予想できるが、今は黙っておいてやろう。」


 レオハルト様が唖然としていらっしゃる。イーサン様は「脳みそも筋肉」と仰られていたが、観察眼が鋭いようだ。まぁ、学院に通われている時点で学力もお持ちのハズだし、言葉通りであることはないハズだもんな。

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