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4.会話が通じる貴族様

 お嬢様の従者を始めて3日目。


 学院にはお嬢様と共に向かいます。女子寮では引き気味に驚かれ、教室では視線が刺さる感じで注目されています。ただ、嫌味なハゲが難癖つけてこなかったのは、良い意味で驚きました。権力、バンザイ。


 夜、女子寮をこっそり抜け出して、勝手知ったる男子寮に潜入する。男なのに。


 授業の後、お嬢様のお茶会について行った先の侍女様に同じ立場の従者を教えてもらえたのだ。侍女の中には学院生はいないらしい。


「オルクス家のサイラス様はいらっしゃいますか?」


 寮の貴族の付き人が集まる談話室に行き、青髪の温和そうな青年に声を掛けた。サイラス某氏が平民にも寛大な方であることを祈りながら案内された集団には、神経質そうな雰囲気の青年から闊達そうな青年、温和そうな少年など10代半ばから20代前半と思しき青年が5人いた。


「アストレア=デラ=アレース様の従者に任じられましたロキと申します。」


「2年のレオハルト=デ=オルクスだ。初めて見る顔だな。歳からして、最近雇われたのか?」


「はい。4日前に街で、、、」


 付き人が集まる談話室のはずなのに、何故お坊ちゃんがいるんだ。


「それはまた急だな。4日前と言えば、アレース侯爵が学院にいらっしゃっていたな。、、、侯爵が言っていた地元民の手とはお前のことか。」


 こんな誰が聞いているともしれないところで、と思ってさり気なく周囲に気を配ると、いつの間にか防音の結界と幻覚の魔法が張られていた。


「えっと、恐らくは。」


「確か彼はこの街の孤児院で育ち、学院長の後見で入学したと聞いています。しかも今でも街で仕事をしているとか。確かにこれ以上の適任はないでしょうね。従者としてどうかは置いておいて。、、、あぁ、私はイーサン=デル=ヴェスタ様の従者をしていますユリシスです。共に6年生ですよ。」


 親切に自己紹介を追加してくれた神経質そうな赤髪の眼鏡の横で、茶髪眼鏡が軽く手を挙げてくれたので、恐らくは彼がイーサンという主なのだろう。


「相変わらずユリシスは何でも知ってるなぁ。あ、オレはサイラスな。レオハルト様の従者だ。」


 侍女様方が薦めて下さったのは、気さくな雰囲気の青年だった。侍女様方、そういったところも含めて教えてくれたのかな。眼前の6人の雰囲気もあってか、今まであった貴族や貴族の付き人に対する印象が崩壊寸前だ。


「私はトレア。こちらは私の主人に当たる、ティグリス=デル=パラス様だ。今、5年生。」


 案内してくれた青年は、偶然にもサイラス様の知り合いだったらしい。主人だという青髪の青年も同じような雰囲気、、、というか顔立ちも似ている。親戚なのかな。


「して、アレース侯爵の性格からしても、アストレア嬢の性格からしても、我々にわざわざ挨拶をするように指示するとは考えられんのだが、、、他の使用人にでも指示されたのか?」


「いえ、他家の侍女様に学院での従者の振る舞いは、サイラス様に聞いたら良いと薦められまして。」


「もしかして、使用人としての教育は受けてない?」


「受けてないですね。」


「雇用契約は?」


「それは今朝、執事長という方が。」


 執事長は、契約書と契約条件の説明、ついでにお館様とお嬢様のお茶の好みとお菓子のレシピを渡してとっとと帰ってしまった。


 ちなみに、ご推奨の茶葉でお嬢様にお茶を出したら、好きな茶葉だからこそ拘りがあるとのことで、1時間ほどお説教を頂きました。くそ執事長め、ふざけんな。


「あーっと、雇用の理由とか同室の理由っていうのも?」


「雇用の理由は一応。ただ、何をすれば良いのかは何も、、、」


 話せば話すほど、視線に憐憫が混じっていくのがわかる。


 これ、どこまで話して良いのかね。なんか「やっぱりか」という雰囲気なので、聞かれるままに話してるけど。


「解った。私からアレース侯爵に一筆認めよう。というか、私には一応、この件について先に連絡があったから、君にも伝えたつもりになってるのだろうな。」


「良かった。ありがとうございます。重ね重ね申し訳ないのですが、お嬢様には、、、」


「アストレア嬢も承知しているはずだが、、、まぁ、あの親子は、なんというか、天才肌な面があるからな。」


 モノは言いようだな。


「まぁ、従者教育もある程度はサイラスに学べ。女子寮への移動は、まぁ、気の毒だが致し方あるまい。アレース侯爵のところは女児しかおらんからな。こちらと連絡を取るにも、アストレア嬢と直接やり取りするのは、不都合しかないからな。、、、世間体的にという意味だぞ。」


 レオハルト様、語るに落ちてます。


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