36.お嬢様のお仕事
冬期休暇に入って18日。
昨日、イーサン様に教えて頂いた通りに執事長とお嬢様にお会いして、昼は外出したい旨を伝えました。
お嬢様はお茶会や晩餐会とその準備の予定がびっしりと詰め込まれているそうです。一応、自分にやることがあればソチラを優先するとは伝えましたが、周りの侍女さん達に「自分達の仕事ですから」と断られてしまいました。
予定がびっしりな理由の大半は、たった2週間で筋肉がついたりお肉が減ったりしたお嬢様のせいなので、怨めしそうな目で見られてもどうしようもありません。侍女さん、お針子さん、ご苦労様です。
ついでに侯爵様はご愁傷様です。侯爵様は侍女さんかお針子さんから報告を受けていたようで、お嬢様からプラトンでの顚末をお聞きした際に口を滑らせてしまいお叱りを受けていらっしゃいました。
「時間が空いたら、い、一緒に行っても」
「空きません。宿題が出せるくらいには刺繍ができるようになって頂かなければ、困るのはお嬢様ですよ。」
貴族の家では家紋や夫君の飾り文字を刺繍するのは奥様のお仕事で、御令嬢にとっては必須技術なのだそうです。
お嬢様はそろそろ結婚の話が浮上してもおかしくないお年頃になりつつありますが、先生が横に付いていなければ布が赤く染まるだけで終わる腕前とこのと。先生が付いていてようやくところどころ赤くなるが、なんとなく何かが刺しているのと判る出来映えになるらしいです。「何かが」であり、「何が」ではないのは気付かないフリをするのが得策だということは解ります。
長い黒髪の合間に見える耳が真っ赤に染まっているお嬢様に追い打ちはかけれません。
「イーサン様にいろいろ教わって参ります。」
本当は従者を続けるのであれば、伴をしなければならないことは解っているが、必要ないと言われてしまえばどうしようもない。近々解雇を言い渡されるのであろうが、取り敢えずはイーサン様の仰っていた通り何も考えずに身体を動かしに行こう。




