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34.何もしてません

 お嬢様の従者になって、、、は忘れたので、冬期休暇に入って17日。

 王都に帰ってきて、またもやアレース侯爵邸の馬小屋にいます。

 何故か豪華な部屋に通されてお菓子やらお茶やらを振舞われたが、どうしていいかわからず馬小屋まで散歩に来ました。馬小屋なら侯爵様も執事さんも侍女さんも従僕さんも来ないので、心が休まります。


「おう、坊主。そんなところで働いとらんと、外で遊んで来い。」


「仕事が、、、」


「いや、コレ、お前の仕事じゃねぇだろ。」


 厩番の爺さんは明らかに呆れている。自分が逆の立場だったら、絶対同じような態度だと思う。


「でも、休みではないので、、、何か手伝えることないですか?」


「執事長から指示は?」


「適当にのんびりするように言われました。」


「そりゃ、休みっちゅうことじゃろに。おう、暇なら街にでも出たときに飴買ってきてくれ。禁煙始めたんじゃ。」


 厩から追い出すだめの口実としか思えない。しかしもう少しお遣いらしいお遣いはなかったのか。甘味なんて興味のなさそうな爺さんが飴玉なんて、思い付き以外の何物でもない。


「こんなことなら、プラトンに残っといた方が良かったかな。」


 一応、プラトンに戻ったのは、慣れない王都に疲れているだろうから帰郷させてやろうというお嬢様の配慮によるものだった。挨拶回りを終えてこっそりプラトンに戻るレオハルト様達に便乗しただけだそうだが、それでもお嬢様のご厚意には違いない。結局、これ幸いとレオハルト様と仕事をすることになったが、元々の仕事の範囲でありそこも問題はない。


 プラトンの街の問題が解決した今、お嬢様の従者という役目も即御免になる可能性もあると思っていたため、帰りの道程も確認はして準備万端だった。ただ学院で一緒に過ごすだけで一月分の生活費くらいの日当である。仕事を与えられずに給金だけをもらうことになるとと落ち着けない。


 屋敷の仕事を手伝おうとしてもやんわり断られるし、何故か使用人用の食堂に毎日やって来る侯爵様や執事長に仕事や契約の話を切り出すしても「取り敢えず、のんびりしなさい」と返されてしまう。「取り敢えず」が付いているためまだ契約終了ではないと考えているが、こうまで暇だと勘違いかとも考えてしまう。従者といっても、お茶の用意や荷物持ちくらいしかしていない。元々、お嬢様が半年以上1人で生活していたということを考えれば、まだ契約終了を言い渡されていないことの方がおかしい。


「のんびりしなさいって、もしかして遠回しに解雇を言い渡されたのかな。」


 厩番の爺さんだけは普段手が回らない部分を手伝わせてくれていたが、流石の侯爵家に何日もかかるような仕事が放置されているはずもなく爺さんにさえも追い出されてしまった。


 もうレオはレオハルト様に戻り、お嬢様はアレース侯爵令嬢に戻ってしまった。さらに解雇されてしまえば、自分はただのロキに戻ってもう話すこともなくなるのだ。

 学院に戻れば男子寮に戻らなければならない。戸締まりは魔術も使ってしっかりして、うっかりレオと会っても馴れ馴れしくしないように気を付けなければならない。

 従者になる前は何をしていたかな。

 何でも屋でまた簡単な薬草摘みなんかの仕事を受けて、授業を受けて、たまに孤児院に寄って手伝って。

 部屋はやっぱり前と同じ1人かな。


「あ、でも冒険者のおっさん達とは話せるかな。それともレオがいないとやっぱり話しかけられないのかな。」


 何でも屋に通いだして5年以上、何でも屋の親仁以外とは話しかけた記憶もなければ、話しかけられた記憶もなかった。

 何でも屋でも学院でも必要性のない会話はした覚えがない。思い返してみれば、ここ半年ほどの行動が普段と掛け離れ過ぎている。


「おい、坊主。迷子か?」

 

 呆けっと歩いていたからか衛兵らしき男に声を掛けられた。法に触れるような事はしていないはずなのに、意味もなく緊張してしまうのは何故だろう。迷子になるほど幼くないと怒るべきか、適当に話を合わせて離れるか、どちらが自然か考えてしまっている時点で、不自然極まりないのではと気は焦るが行動につながらず言葉が出てこない。

 そうこうしている内に、何故か同じような格好の男が何人も集まってきた。どうしよう。ただ歩いていただけですと答えるだけで解散してくれるかな。


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