30.捕り物
プラトンの街に戻ってきて、11日。
昨夜とうとうペルシア様はモニークさんの娘を見つけたらしい。
「見つけました。アストレア様。あと、宜しくお願いします。おやすみなさい。」
ペルシア様は寝間着のままお嬢様と力強く握手して、また寝室に戻られた。レオ曰く、術を使っている最中は寝ているように見えて、寝ている訳ではないらしく、不眠不休で探していたようなものらしい。ちなみに、眠る以外はカエデさんの助けを借りて済ませていたらしい。
「では、参りましょうか。お二人がサイラスの失恋話をしていたのは、どの辺りですか?」
「街から少し離れた森だな。どの話だ?」
「オフィーリア様に一目惚れした話です。ちなみに、いつ失恋したんですか?」
オフィーリア様の外見からは全く想像できない竹を割ったような爽快で豪快な性格を知って、幻想を打ち砕かれたそうですよ。かわいそうなので、身分の差という便利な単語に置き換えてあげました。
この3日間、街中、郊外、森の中と、満遍なく雑談しながら歩き回っていたのは、モニークさんの娘さんの耳からペルシア様の夢に伝わるようにとのことだったが、功を奏したらしい。どうでもいいことを3時間くらいの睡眠以外ずっと大き目な声で喋っていたので、少し喉が痛い。ついでに、レオの家族、サイラス様やイーサン様達の事も、初恋やおねしょをしていた歳まで知ることになった。もちろん、自分のも知られた。今なら、レオハルト様的な雰囲気になっても、5歳までおねしょしてたのかとなんの緊張もしなさそうだ。
女性陣については流石に憚られたのか、武勇伝とかが多かった。レオの周りには女傑ばかりだということがよく解りました。お嬢様の傍若無人っぷりなんて、かわいいものでした。
特に最近はお嬢様に振り回されることがないので、余計にそう思う。いや、このクソ寒い中わざわざ山に登って、静かに暮らしてくれてる氷竜を狩りに行こうだの、困っていらっしゃるならとか言って、お嬢様が勝手に受けてきた雪かきの依頼を代わりにやらされたな。
「よほど熟れた者でなければ、誘拐は大体3日が限界なんだ。ソレを過ぎると、些細なことが原因で事態が急変する。」
「急変って?」
「被害者の身柄を無事に確保するのが困難になる。生存は確認されたが、一刻を争う状況ということだ。アストレア嬢、、犯人は?」
「6人。毎日同じ部屋で、お酒を飲みながらカードをやってるみたい。」
「多いな。しかし、危険は大きいが、今回ばかりは同室で運が良かった。」
雪が深々と降り積もる中では、屋内だろうと火を絶やせば即日死んでしまうのは確実だ。
ちなみに、お嬢様はペルシア様から夢見という魔法で得た情報を念話の要領で受け取り、脳内で情景を確認しながらレオに手を引かれている。
「あ、被害者は3人いる。小さな女の子と男の子、それと私と同じか少し上くらいの女の子。犯人の中に1人だけ、庇ってくれている人がいるみたい。」
「そうか。10歩先に階段が3段ある。なな、はち、きゅう、じゅう。いち、に、さん。」
手慣れていらっしゃる。レオはもちろんだが、お嬢様も歩くのに躊躇いがない。見えてないというのが嘘のようだ。信頼というか、阿吽の呼吸というか。
「できるだけ、生かして捕らえろ。ただし、逃げられそうなら、躊躇わずに処分しろ。」
お嬢様に案内された先にあったのは小さな炭焼小屋だった。
小屋が目に入ると同時に、分厚い氷の壁を展開した。
「なんですの!?」
「この魔力は、、、ロキ。できれば、次からは予告してくれ。」
「1人1人区切ってみた。寒いだろうから、早く連れ出してやらなきゃだけど。」
熱源を探ると、全員多少離れて座っているようだったので、1人1人を氷壁で区切ってみた。一応、足元は熱源を避けて凍らせたので、被害者達も凍りついてはいないはずだ。
冬はそこら中に材料がある上に元々氷点下なので、氷を作るのはもちろん維持するのも簡単だ。
「熱源的に、コッチか。」
レオが、暖炉と思しき熱源から比較的遠い熱源の方へ足を向けた。
「一応、覗けるように、今、透明な氷で小窓を作ってみた。」
「透明な氷って、どうやって作るんだ?」
「できるだけ水だけにして、ゆっくり固めたら透明になるよ。」
「3人は多少魔術が使えるみたい。氷壁を融かせるほどの火は起こせないみたいだね。」
「それでも、一応、警戒は怠るな。小屋の周辺を監視している人間がいる可能性もゼロではない。」
「何故、魔術が使えると判ったのです?レオのように、魔力探査ができるのですか?」
「単に、壊された時用に、魔力を流し続けてるだけですよ。」
結局、誘拐犯達は氷壁を破壊できず、捕り物は簡単に終わってしまった。
なのに、お嬢様の機嫌は急降下していた。解せぬ。




